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第27話 問い合わせが殺到しています!

「お嬢様、追加で手紙がたくさん来ましたよ! ルセル家にもお嬢様宛の手紙がたくさん来て、ギルバートが転送してくださいました!」

「ありがとうサラ。全部そっちにある、未読(みどく)の山に置いてもらえる?」


 ――グランベロー城の舞踏会が明けてから一夜。

 ジネットの元には、オーロンド絹布(けんぷ)に関する問い合わせの手紙が殺到(さっとう)していた。

 送り主は、自分用に買いたいという令嬢から、贈り物にしたいという紳士まで老若男女(ろうにゃくなんにょ)問わず。

 そんな山盛りの手紙を、ジネットは部屋でクラウスとともに一通ずつ開けていた。


 どうやらグランベロー城の夜会では、ジネットたちとの挨拶を終えた後も、パブロ公爵や夫人がずっとオーロンド絹布を話題にしてくれていたらしい。

 そのおかげで、一夜にしてジネットとオーロンド絹布のことが広まったようだった。


「さすがパブロ公爵夫妻です……! 最近は舞踏会にもほとんど呼ばれていなかったので、お手紙をもらうのはいつぶりでしょう? しかも、こんなにたくさんいただけるなんて」


 クラウスとの婚約後、アリエルに悪口を言いふらされたのもあって、すっかり令嬢たちから仲間外れにされていた。そのため差出人(さしだしにん)の中には、久しぶりに名前を見る人も多い。


「この調子だと、今ある分はすぐに品切れになってしまいそうです。仕入れ量をどこまで増やせるか、交渉しにいかなくては……!」


 ジネットがうんうんと頭を悩ませている横で、差出人を検分(けんぶん)していたクラウスが言った。


「ドロテア嬢にカロリーヌ嬢にコレット嬢……他のご令嬢も皆、以前君の悪口を言っていた人ばかりだね。パブロ公爵に気に入られた途端にこの手のひらの返しようと言ったら。……見習いたいものだ」


 その顔は笑顔だが、目は冷たく全然笑っていない。ヒュウ、とどこからともなくただよう冷気を感じて、ジネットは目を丸くした。


「クラウス様……よく覚えていらっしゃいますね!? 私の悪口はもはや社交界の定番と化していたので、もはや誰が誰だか状態でした……!」

「覚えているよ。こう見えて僕は、ものすごく根に持つタイプなんだ。君の悪口を言った人たちは、一生忘れない」


 にっこりと微笑んだ顔は、怖いくらいに美しい。そう、怖いくらいに。


(ひょわっ! 最近、この微笑みをよく見ている気がします……! クラウス様、お怒りに……!?)


 ジネットが恐れおののいていると、何事もなかったかのようにクラウスが穏やかな顔で言う。


「ジネット、彼女たちにもオーロンド絹布を売るのかい?」

「はい、もちろん! お客様ですから!」


 ジネットにとって大事なのは、商品を買ってくれるお客であるかどうかだけ。

 悪口など元々慣れ切っているため、気にするほどの事でもなかった。


 だがクラウスは違ったらしい。にっこりと、また不穏な笑みを浮かべる。


「なら先ほどの令嬢を含めた、今から僕が言う名前には、二倍の値段で売ってくれるかい?」

「二倍……ですか? その方たちだけ、そんなに値上げしてもよいのでしょうか……?」 

「大丈夫だ。在庫が足りなくて希少性(きしょうせい)が上がったと言えば納得せざるを得ない。……それに、彼女たちも自分が何をしてきたか、ちゃんと自覚しているはずだよ」

「わかりました、クラウス様がそうおっしゃるならそういたします! どのみち、今のままだと在庫が足りなくなるのは目に見えていますし……」


 ジネットは急いで、クラウスの挙げた名前――すなわち自分の悪口を言っていた人たちのリストを作った。

 普通ならそれだけで気落ちしてもおかしくないことだが、ジネットは全然平気だった。

 むしろ、生き生きとしていた。


「はっ! 今思えば……もしかして皆様、この日のために、わざと口実を作ってくださっていたのでしょうか!?」

「いやそれはないと思う」

 ジネットの斜め上の発想に、クラウスが冷静に突っ込む。そばではサラがくすくすと笑っていた。

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― 新着の感想 ―
[一言] どこまでも前向き? と言うか、捻られすぎて前がどっちか分からない感じだな
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