刺さってる少年
その少年には
ずっとナイフが刺さっている。
それはもうズップリ刺さっている。
彼の胸のド真ん中に
ずっとずっと
包丁よりも大きなナイフが
長年刺さっている。
彼の胸からは ずっとずっと
長年 血が 止まらずに溢れていた。
ある朝 純粋な少女が
彼のナイフを目撃した。
他の人には見えないらしい。
彼女にしか ナイフは見えない。
それはもう純粋な少女は
見知らぬ彼に 声をかける。
どうしたの?
彼自身にも ナイフは見えないから
いきなり見知らぬ少女に 話しかけられてビックリする。
なんでもないよ。
とりあえず答えるけど
本当はずっとずっと胸が痛かった少年は
内心動揺していた。
血まみれの彼に気づいたのは少女だけだ。
彼の 生まれる前からずっと一緒にいる両親も
兄弟も 親友も 犬も 猫も
誰だってナイフには気づかないのに。
今にも倒れそうなくらい
彼はいっぱいいっぱいだった。
自分で刺したナイフが
痛くて痛くてたまらなかった。
どうしても抜けないナイフを
そのままにして日常生活を送っていた。
川をボーッと見ていた少年は
今はもう少女に釘付けだ。
それはもう純粋な彼女は、
初対面の彼の胸に触れる。
そっと撫でて、痛かったねって言う。
少年は何故か 長いこと出てなかった涙
溢れ 泣いてしまう。
少女はよしよしする。
何もかも見透かされた気分だ。
少年にとっては突然現れた神様に見えた。
長年一人で抱えていた想い、
やっと神様が見つけてくれたように感じた。
でも、少女にはナイフは抜けない。
せいぜい よしよしして 痛みを緩和するだけだ。
ナイフは少年が抜くしかないのだ。
それでも 痛いね と
言ってくれる 初めての人の
おかげで 痛みが和らぐ。
何度もチャレンジして 抜けなかった大きなナイフ
血まみれの手で 握ること 幾年月
桜が川の上に 降ってきて 流れていく。
ほんの少し 兆しが見えた。
ナイフの痛み 溢れ出る血
長年一人で抱えた重み
春が来て ほんの少し 軽くなった。
ナイフの重み 軽くなった。




