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第二話 アカウント・メイキング

『 アカウント接続 ―― アバター作成完了 ―― チュートリアル:ロード 』


 目をひらくと眼前に、なにやら通知めいた文字が浮かんでいた。

 空間に固定されたがごとく微動だにしない文字列。

 より正確に表現するなら、それは半透明な緑色の板に映されたメッセージだった。


「これは……ラグナドラシル・オンラインのゲーム画面? 完全に浮いてるけど、サイズ感はパソコン画面と同じ、ってそうじゃない。そもそもの話――」


 この場所、この状況――あの世界樹は。

 何の説明もなく放り出されたわけだが、しかし存外に必要な情報は揃っていて。

 神サマの招待、異世界、死んで生き返る――どんなに鈍い人間だろうと思い付く可能性は。


「――異世界転生、しちゃった的な?」


 問いかけて誰が答えるわけでもないが、状況証拠としては完璧に近く。

 名探偵ではないにしろ導き出される結論は確定的、真実はいつも一つだった。

 と、自分でも驚くほどすんなりと〝転生〟という現象を受け入れた、その瞬間。


 ―『 アバター:カント・イルマ を表示します 』―


「うおっ……!?」


 突如響いたピロン、というポップな効果音。

 液晶画面に似て非なる板が映し出していたのは、こちら側の世界における〝俺〟のようだ。

 ……もしや、イケメンに生まれ変わってる的なイベントがあったりして――

 俺はそんな淡い期待をしながら板を覗き込んだ。


「……おう、お前は俺だな。うん俺だ。身長は170センチに1センチ足りずに、どちらかというとブサイク寄りで、特に眼つきが悪くて彼女もいない。うんいつもの俺――って何言わせとんねんコラァ!!」


 気付いたら板の中の自分にブチ切れていた。これほど悲しい自己紹介もそうないだろう。

 そして同時に、マキナには感情がないという事が証明されたようだ。あの野郎。

 しかし特筆すべきと言うのか、まさかの部分にだけは変化が表れていた。


「なんか脳天の毛が、能天気というか……アホ毛というか」


 そう、頭のてっぺんからいわゆる『アホ毛』が元気に伸びていやがったのだ。

 黒髪黒目、基本的な日本男児にあるまじき、攻撃力すら備えていそうな一束の髪。

 ここまで正確に俺をイケメンから遠ざけておいて最後に手抜きとはいい度胸だ。むしろアホ毛にこじつけてアホだと言われているまである。……感情ある説が急浮上した。


 文句を言いながら脳天を抑えてみるが、すでに登録は完了しているらしく。

 諦めてアバターを消し、見飽きた俺の姿から目を背けるように周囲を見渡すと、そこは。

 木の枝が壁面を覆い尽くした洞窟のような一本道――〝ツリーダンジョン〟の中だった。


「ここはたぶん、百本ある枝の一つ。チュートリアル用ダンジョン、(だい)(ぜろ)()――」


 と、不安と期待がせめぎ合う困惑の中、ふいに一歩目を踏み出したその時。


 ―『 スキル を獲得しました 』―


【 ファーストステップ:前方の踏み込みモーション速度が上昇する:深度〝1〟】


 新たな通知と同時に――〝スキル〟が飛び出してきた。

 それはゲームの最初、マップで移動操作を行うと手に入る基本的なスキル。


「おっ、こいつは……!! ちゃんと実装されててお父さん嬉しい!」


 子供どころか彼女がいたこともない事実を忘れ、自分が開発した要素に感激していると。

 ――ピロン、と再びの通知音。


「ッ、今度はなんだ?」


 いろいろな現象が次から次へと、まるで俺を歓迎するかのように降り注ぐ。

 届いた通知に目を通すと、そこには各種武器の名称と選択肢が提示されていた。


「初期装備の選択ってことね。全部で十種類だったよな」


【 近距離武器:グローブ ナイフ ソード ランス シールド ハンマー

  遠距離武器:ライフル ボウ / 魔法武器:ロッド グリモア    】


 それぞれの武器で特徴が異なり、スキルやステータスとの相性を考慮していくわけだが。


「最初に選ぶならやっぱり〝ソード〟だろ。銃刀法さん見てますかー?」


 向こう側の法律をここぞとばかりに(あお)りながら武器を選択する。

 タッチした通知がシュンと消えて、代わりに現れたのは装備獲得の通知と。


 ―『 アイアンソード / アイアンプレート を獲得しました 』―


 ずっしり重い鉄製のアイテムたちだった。

 装飾は少なくデザインはシンプル、無機質なモノトーン色の安装備。異世界感を(かも)し出すにはいささか力不足とも言えるそれらは。

 だが、俺の心を躍らせるにはあまりにも十分で。


 異世界に転生しチュートリアルが始まった――分かっていることはそれだけだが、しかし。

 右手に武器、胸に防具、スキルまで獲得した者が〝ゲーマー〟だったのならば。

 もはや、迷う余地などありはしなかった。


「さーて、チュートリアル攻略、張り切っていこうか……ッ!!」

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では、次話でまたお会いしましょう。 ―梅宮むに―

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