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スペック・ハードネス  作者: らどn
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【第二話】出会い

ふと、目が覚める。

あの夜と変わらない雨の夜だ。

どうやら、路地で寝てしまっていたらしい。

あれは夢だったのか?いや、そんなはずはない。もしあれが夢であれば、今俺のいるこの世界だって夢でもおかしくない。

それにここはどこなんだ?あの少女の言うようにここが別の世界線であれば、俺はこれからここで暮らしていかなくてはならないんだ。

とりあえず大通りでも探してここがどこなのかを調べなくては。

そもそもここは日本なのか?日本でなければどうやって帰ろう?

そう今後のことを考えながら路地を歩いていると、進行方向から声が聞こえてきた。

叫び声のように聞こえる。近くでライブでもやっているのだろうか?とりあえず進んでみよう。

俺はその声目掛けて路地を進んでいき、1分ほど進むと道が開け、目に光が差し込んできた。

そして、その光の先にあったのは異様な光景であった。

大きな広場で何百人もの人々が中央のステージに向かって狂喜乱舞する。

しかし、そのステージにいるのはミュージシャンではなく、ただの男性であった。

何かの集会なのか?にしては盛り上がりすぎている気もするが。

すると中央ステージの男がこう叫ぶ。

「我々は奴ら魔女によって何百年もの間苦しめられ続けてきたのだ!」

「それは、奴らの魔術に対抗する術を我々が持っていなかったからである!つまり、我々が弱者であったからだ!」

「だが、今はどうだ?現代にはあの忌々しい魔術に対抗するための術もある!それに、我々の考えに同参する人々もいる!」

「奴らを打ち滅ぼすには十分ではないか!そして今こそ、奴らに反旗を翻し人の強さを証明するときではないだろうか!」

男の熱弁の終わりとともに、聴衆が歓声を挙げる。

俺はその光景を見てただ唖然とするしかなかった。

そんな時、さっきの路地から俺の方へ近づいてくる足音が聞こえた。

「お兄さんそこで何してるの?」

その声とともに、路地の暗闇から一人の男が現れた。

身長は高く、黒いスーツを着た男だ。

「ねえねえ、何してるのかって聞いてるんだよ?」

「あっ…えっと、あそこにいる人たちが気になって見ていただけです」

「何?お兄さんあれに興味あるの?」

「いやぁ、特に興味があるとかそういったわけではないんですけれど」

「じゃあ何でここにいるの?怪しいねェ~お兄さん」

「なぜここにいるのかといわれましても…気づいたらここにいたというか…」

「ふ~んそうかぁ…ならちょっと確認させてもらうよ」

そう言って男は俺の方へ一気に近づき、俺を壁へ押し当てた。

俺にはこの時、その男が何かに警戒しているようにも感じた。

「何するんですか!」

「だから確認するといっただろ?なんでもなければすぐ離すさ」

そういって男は俺の右袖を勢いよくまくった。

俺は初め、この男が何をしたいのか全く理解できなかったが、まくった後の腕を見て大体のことを察した。

俺右腕には不気味な赤い紋章のようなものが刻まれていた。

それを見た男の顔はとてもひきつっているようだった。

「やっぱりかぁ…こういう変なこと言う奴は大抵死人か契約者って相場が決まってやがる」

「それに、時空の魔女ときたか、こいつは面倒なことになってきたな」

男はどうやらあの少女のことを知っているようだ。こちらの世界では有名なのだろうか?

「時空の魔女…あの少女のこと知ってるんですか?」

「ああ知ってるとも。それにあいつと契約したってことは、お兄さんあっちの世界から来たんだろ?」

「あっちの世界のことも知ってるんですか?」

「その世界を知っているというわけじゃないが、時空の魔女と契約したやつ大抵そこからここへ迷い込んでくる」

「大抵ってことは、他にもあの少女と契約した人がいるんですか?」

「まぁ、あいつは特殊だからな」

「それと、お兄さんが契約者だと分かったからには逃がすわけにもいかなし、これからこちらで保護させてもらう」

「保護って、もしかして監禁されて実験に使われたりでもするんですか…?」

すると、男は突然笑い出した。

何かおかしなことでも言っただろうか?

「実験だなんて、ただこちらが用意した家に住んでもらうだけだよ、それに行く当てもないだろ?」

「なんだそれだけか…」

「あ、それと場合によっては働いてもらうかもしれないなぁ」

「働く?」

「そんな難しい仕事じゃないよ、ただのお化け退治」

「お化けって…煽ってます?」

「いやいや、これがほんとのお化けなの、そもそもお兄さんだって魔女とあったことあるんだし、お化けだっていてもおかしくないよねェ?」

「確かに…」

「まあいいや、とりあえずこれから君の同居人たちに会いに行くからついてきて」

シェアハウスなのか、何故か少し残念だった

「そういえばお兄さん、名前は?」

「酒本総です」

「酒本君ねェ、これからよろしく」

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