3章「謎が始まる」
青力疾啓が転校してきてから4日ほどたった。
青力君は3組だけでなく、学校全体の噂となっている。
「ねえねえ青力君、これ、受け取ってくれるかな♡」
女子が青力君に渡したのは、手編みのマフラーだ。
「ありがとう。受け取っておくよ。」
青力君は澄んだ声で答えた。
・・・まあ、そんなことに興味は一切抱かず、机に突っ伏して寝ていた。
ああ、この時間が唯一の至福・・・
女子力がないとか言われるけど、そんなのどうでもいい・・・
私は、この仮眠をとる時間が大好きだ・・・
「おーい、神木さん、起きてくれよ。」
声に気付き、私は目を覚ました。
上を見上げると、青力君がいた。
女子たちがざわめいているが、青力君は特に気にしていない様子だった。
「今日の放課後、屋上に来てくれないかな?」
「え・・・うん・・・」
私は寝起きのテンションで適当に答えた。
・・・・・・・・・
屋上。既に青力君が待っていた。
「やあ神木さん。」
「ねえ、青力君は・・・」
「ヤマケでいいよ。」
「分かった。じゃあヤマケ君は、どうしてここに私を呼び出したの?」
「・・・実は、」
ヤマケ君がそう言いかけた時だった。
空から、黒色のドロドロしたものが降ってきた。
それは、不気味に人の声の悲鳴をあげた。
「やっぱり来たか。神木さん、下がって。」
すると、ヤマケ君は腕につけていたブレスレットのようなものに触れ、制服が消え、白い頑丈そうなコートと、腰には剣の鞘と剣、もう片方には、何やらよく分からない機械が入っている、服装に変わった。
ヤマケ君は鞘から剣を取り出し、それに向かって一振りした。
それは攻撃に触れるとうめき声を出し消えた。
気がつくとヤマケ君は元の姿に戻っていた。
「・・・教えて。さっきのあれについて。」
「分かった。元から口で説明しようと思ったけど、皮肉にも奴らのおかげで説明するのが楽になった。」
ヤマケ君は先程のブレスレットに触れ、囁いた。
「アイ、転送ゲートを開いてくれ。ここから本部に彼女を乗せて送る。」
「はい、了解しました。」
アイと呼ばれた女性は、ブレスレットの画面の中にいた。
美しいブロンドヘアの髪を、ポニーテールで結んでいた。
外見はヤマケ君と同じか、それ以上。
下になにかが開く音がした。
「よし、じゃあ降りるよ。」
「へ?」
ヤマケ君は、私を背中に背負うと、屋上から飛び降りた。