2章「夢の青年」
ここは・・・通天閣?
私は「社会イノベーションの日立」と
自慢げにでかでかと書かれた塔の前にいた。
いや、どちらかというと新世界の辺りかな?
周りの人達は今のこの時代、令和の人たちとは
思えない。
だって皆、一昔前の、なんだか古くさい、
所謂「昭和の顔」をしている。
とりあえず、周りの人達に話しかけてみよう。
「あの・・・今は西暦何年ですか?」
私は、気楽そうに歩いている、40代位の
おじさんに話しかけてみた。
おじさんは古臭い喋り方で話し始めた。
「何言ってんだ。今は1990年に決まってるやろ。」
1990年!?
一体どういうこと・・・
考えようと思って、ふと上を見上げた。
・・・ビルの上に、ライフルを構えてる人がいる。
・・・ヤバい。ヤバい。
皆に知らせないと!
私は声を荒あげ皆に叫んだ。
「皆!!逃げて!!」
人達がどよめき始める。
さっきのおじさんが独り言を話した。
「なんやこの嬢ちゃん。さっきは年を聞いてきて、今度は皆に叫んで。」
「おい嬢ちゃん。あまり人様に迷惑をかけると、ろくな死に方・・・・・・」
途中までおじさんが話していたが、
私が思う最悪の事態が起きた。
おじさんが、銃で撃たれて、死んだ。
「キャー!!」
どよめきが一気に悲鳴へと変わる。
おじさんは、頭から真っ紅な噴水のように、
血を噴出させて死んでいる。
皆逃げた。私も逃げないと。
そう、私が思った時。
頭に衝撃が走った。
私も、撃たれてしまった。
段々意識が遠のいていき、生きてる心地がしなくなる。
段々、上へ登って行くような感触がする。
頭に手を当ててみると、手も真っ紅に染まっている。
薄れる意識の中で、誰かの声がした。
美しい、綺麗で、儚い、青年の声。
「君の力が必要だ。」
・・・・・・
私はふと目を開けた。
私の部屋の天井だ。
柔らかい感触。
今までのは、夢だったのか。
困惑しつつも、支度を始めた。
・・・・・・
教室は、なんだか騒がしかった。
私は、唯一の友達の紬に、声をかけた。
「ねえ、紬。皆騒がしいけど、どうしたの?」
紬は答えた。
「ああ、このクラスに転校生が来るから、皆で噂してたのよ。イケメンらしいよ。楽しみ!」
へえ。と相槌しつつ、席に座った。
はっきりいってイケメンには興味が無い。
チャイムがなり、先生が来た。
「今日は、我が3組に、転校生が来た。皆に紹介しよう。・・・よし、来てくれ。」
教室のドアが開いた。
美しい黒い髪。
白い瞳。
身長はかなり高い。
そして彼は、皆の前に立ち、話した。
「青力疾啓です。どうぞよろしく。」
彼の声は、間違いなく、夢の声と同じだった。