第9話 「占い師事業、没落!!!」
前回までのあらすじ! 占い師としてどんどん大金持ちになっていくポーラであったが、そんな彼女の前に怪しい風貌の男が現れる! 彼はポーラがインチキであることを看破すると、壺でぼったくった金を皆に返すように言うのであった! それを聞いて、自分達はポーラに騙されていたのではないかとざわつきだす民衆! 果たして、ポーラの運命やいかに!
「壺を買った客に、金を返すんだ」
飄々とした態度でサラリと言い放つ謎の男!
「い、イカサマってどういうことだ?」
「マジェスティック・ポーラ様が……偽物ってこと?」
「あの壺はぼったくりだったのか!?」
男の言葉を聞いた民衆達がざわつきだした!
「ま、まずいですわ……!!!!! このままでは……占い師事業まで没落してしまいますわ……!!!!!」
ポーラの顔が青ざめる!
しかし……しかし!!!
こんなところで諦めるほど彼女はヤワではない!
拳をグッと握りしめ、
「壺はぼったくりじゃありませんわーーーーー!!!!!」
と叫んだ!!!
「ほう、どういう意味だい?」
「確かに私が売っている1万ゴールドの壺は、元々は100ゴールドで購入したものですわ!」
悪徳商法ここに極まれり!
「でも! 天才的頭脳を持った高貴なる私が触れた壺ですのよ! 当然それには1万ゴールドの価値がありますわーーーーー!!!!!」
何の迷いもなく、堂々と言い放つポーラ! この場を収めるためのハッタリなどではなく、本気でそう考えているのだから彼女は恐ろしい!
「……はい?」
謎の男は、ポカンと口を開けて呆けた! いたって当然の反応である!
「……つまり、お嬢さんの商売は悪徳じゃないと?」
「そうですわ!」
「壺の元々の値段は?」
「100ゴールドですわ!」
「それをいくらで売ってるの?」
「1万ゴールドですわ!」
「100倍の値段だぜ?」
「なんなら10万ゴールドで売ってもいいぐらいですわ!!!!!」
「マジで言ってる?」
「マジで言ってますわ!!!!!」
「嘘だろ……」
男は思わず頭を抱える!
「あー……そこの兄ちゃんは、どう思ってるわけ? このお嬢ちゃんのこと」
突然話を振られたアルノは、気まずそうにそっぽを向いて
「ノーコメントだ」
と答えた!
「まったく、兄ちゃんも兄ちゃんだよ。お嬢ちゃんのこと甘やかしすぎ」
するとポーラはニコリと笑い口を開いた!
「あなたも壺をお買いなさい! そうすれば価値が分かりますわよ!」
「どんだけ図太い神経してんだよ……」
そして男はおもむろに立ち上がり、周りの民衆に向かって叫びだす!
「おい皆! そういうわけで、このお嬢ちゃんはインチキだ! こいつから壺を買っちまった奴、ちゃーんと返金してもらった方がいいぜ! その壺には何の効果もない!」
それを聞いて、民衆がまたざわついた!
「なんだよ、結局ぼったくりかよ!」
「前から怪しいと思ってたんだよな!」
「おら! 金返せ!」
民衆達は声を荒げ、じりじりとポーラに詰め寄る!
「ま、まずいですわ……!!!!!」
「はぁ、やれやれ……」
アルノはため息をつきながら、ポーラを軽々と持ち上げた!
「きゃっ! 何をしますの!」
「何って、逃げるんですよ。もちろん悪徳商法でぼったくった金は後から返さないといけませんが……とりあえず、今はここを離れた方がいい」
お姫様抱っこの要領で彼女を抱きかかえると、アルノは颯爽と走り出す!
「あっ、おい待てー!」
「逃げたぞあの野郎!」
「追えーー!!」
ポーラを抱っこしたまま走るアルノを、人々は血眼で追い掛け回した!
「待ちやがれ!」
「おい!」
「くそっ、あの野郎はやい……!」
説明しよう! アルノは50メートルを3秒で走ることができる!
割と人間離れしたスコアだが、執事ならこれぐらいできて当然なのだ!
それから1時間後!
民衆を見事にまいたアルノは、そのままポーラと共に宿屋へ戻ってきた!
「とほほ……もう占い師はこりごりですわ……」
「これに懲りたら、次からは堅実にお金を稼ぐことですね」
「嫌ですわ! まじめに働くなんてありえませんわ!」
「わがまま言わないでください」
そんなやり取りをしながら部屋に入る2人!
すると!
「ん!? あ、あなたは!!!」
驚くべきことに、部屋の中には1人の人間がいた!
そう、先程の怪しい男だ!
彼は天然パーマの茶髪を揺らしながら「よっ!」と挨拶をすると、口角を上げてニヤリと笑う!
「な、何故ここにいますの……!?」
「ちょっと話がしたかったんでな」
「不法侵入ですわよ!」
「まあまあ、悪いことしてるのはお互い様じゃない」
するとアルノは、ポーラを守るように一歩前へ出た!
「貴様、何者だ? どうやってこの場所を探り当てた」
警戒心むき出しで聞くアルノ!
「よし、じゃあ自己紹介してやろう」
男は部屋にあった椅子に腰かけ、腕を組みながら続けた!
「俺の名はギュスターヴ。占い師をやってる。もちろん、そこのお嬢ちゃんと違って俺は“本物の”占い師だ。この場所を探り当てたのも、占いの力さ。どうだ、信じてくれるかい?」
「なるほどな……!」
どうやら、このギュスターヴの占い師としての実力は確かなようだ!
「占い師と生計を立てている以上、お嬢ちゃんのようなイカサマを使って占い師を語る輩は営業妨害なんだ。“占い”そのものへの信頼が下がっちまうからな。だから今日、アンタ達のビジネスを潰させてもらった。悪く思うなよ」
「ムキーーー!!! 土下座して謝りなさい!!!」
「おやめくださいお嬢様。どうあがいてもこちらが悪いです」
「アルノ!!! あなたまで私の敵をしますの!?!?」
「はっはっは! 愉快な人達だねぇ!」
手を叩きながら笑うギュスターヴ!
「それでギュスターヴ。どうしてここに来たんだ?」
「さっき水晶を通して、お嬢ちゃんの人生を少しだけ覗き見た。没落したんだってな? 結構ハードな人生じゃねぇか」
「余計なお世話ですわ!!!!!」
ポーラはブチギレた!
しかしギュスターヴはクールにほほ笑んだまま、懐から名刺を取り出す!
達筆で上の行に“占い師ギュスターヴ”、下の行に“貧民街でいつでも営業中”と書かれたそれを、ポーラに手渡した!
「俺の仕事は人の悩みを解決すること。お嬢ちゃんはインチキで金稼ぎをする奴だけど、でも悪人じゃないってことは分かる。もしも本当に俺の助けが必要な時は、いつでも来てくれよ。それじゃ!」
そしてギュスターヴは、ヒラヒラと手を振りながら部屋を去っていく!
果たして、彼がまた2人の前に現れる時は来るのであろうか!?
それは──作者が彼のことを覚えているかどうかにかかっている!
次回、「庶民のグルメで荒稼ぎ!!!」に続く!!!