第2話 「執事、アイドルデビュー!!!」
第1話が好評だったので、急ピッチで第2話も書きました!
ブクマや感想、本当にありがとうございます!
物凄く励みになります!
前回までのあらすじ! ボナパルト王国で栄華を極める超大金持ち一族・エスメラルダ家の令嬢ポーラは、何者かの陰謀によって没落令嬢になってしまった! あらぬ濡れ衣を着せられた父・クロードから「真犯人を探してくれ」と頼まれたポーラ! しかしそれはそれとして、まずはお金の調達の方が重要である! というわけで彼女は、イケメン執事のアルノをアイドルデビューさせ、お金をがっぽり儲けようとするのであった!
没落騒動があった翌日。
早速ポーラはドレスを売り、300万ゴールドを手にした。これはこの国で働く者達の平均年収に値する額なので、1年ぐらいなら余裕で生きていける。
──が、しかし。
これまで贅沢三昧の暮らしをしてきたポーラにとって、300万ゴールドなど一日のお小遣い程度の額に過ぎない!
もっと! もっと金が要る!!
そんなわけでポーラとアルノはまず、街でそこそこ良い宿屋を見つけ、部屋を1つ借りた。
「これからは、私と一緒にここで暮らしますわよ!」
緑のワンピースに着替え、晴れやかな笑顔で言うポーラ。
「はい、かしこまりました!」
元気よく返事をする執事のアルノ。
ベッドが2つ並んで置かれた部屋は十分広く、庶民向けの宿屋にしては細かいところまで掃除も行き届いている。
「なかなかきれいな部屋ですね、お嬢様!」
「そうね! うちの屋敷の犬小屋ぐらいの広さはあるかしら!」
ちなみにアルノ以外の従者達はというと、全員次の働き口を探すためギルドへ向かった。
このギルドという場所へ行けば、魔物を狩る仕事や薬草を集める仕事なんかを斡旋してもらえるのだ。
そして結果的にエスメラルダ家の従者はアルノ1人のみになったわけだが、この際それは仕方のないことだ。
「さあ、早速作戦会議よ!」
「お、お嬢様……本当にやるんですか? アイドル事業」
アルノは、持ち運んできた大量の旅行鞄(ほとんどポーラの服)を床に置くと、困り果てたような顔でそう言った。
「当然よアルノ! アイドル事業は、顔がいい人間が適当に歌ったり踊ったり脱いだりしてればお金をもらえる、楽なビジネスなんですから!」
「どんな偏見なんですか」
「というわけで私は今から、あなたのデビューシングルを作ろうと思うわ!」
「て、展開がはやい……!」
「アイドル事業はスピードが命ですわ! 今、このボナパルト王国では空前のアイドルブームが巻き起こっておりますからね! これに便乗して、あなたには一刻も早くデビューしてもらわないと!」
そう! 王国では現在、“男性アイドル”が一大ブームとなっている!
これまで男の職業といえば力仕事の農家や傭兵が一般的だったが、それはもう過去のお話!
歌や踊りで女性を虜にする男性アイドルこそが、これからのトレンド職業なのだ!!!
「さあ、バリバリ書きますわよーーーーー!!!!!」
そしてポーラは、羊皮紙と羽ペンを手に猛烈な勢いで歌詞を書き始めた!
1時間後!
「出来ましたわーーーーー!!!!!」
「おお、はやいですね!」
「当然ですわ! さあ、はやくこの歌詞を覚えなさい!」
そう言って羊皮紙を突き出してくるポーラ! アルノはそれを受け取り、紙に書き込まれた歌詞に目を通す!
「どれどれ……ん?」
しかし、どんどん顔色が悪くなっていくアルノ!
「どうですの? 私が書いたエレガントでゴージャスな歌詞は! 私、自分の才能がこわいですわ~!」
「な、なんですかこの歌詞……“私は甘いふわふわパンケーキ”……“クリームみたいにとろける乙女”……“あなたのハートをずっきゅんばっきゅん”……」
そして彼はポーラの顔をまじまじと見つめると、憤怒の形相で
「む、無理ですお嬢様! 私はこんな恥ずかしい歌、歌えません!」
と言った!
その瞬間──ポーラ、キレる!!!!!
「おだまりーーーーー!!!!! 私の書いた歌詞が気に入らないんですのーーーーー?????」
「そうですお嬢様! いくらなんでもこのセンスは……」
「ええいやかましいですわーーーーー!!!!! あなたのデビューシングルは、その“ふわふわ♡とろとろ♡パンケーキ♡♡♡”で決定ですのーーーーー!!!!!」
「そ、そんな~~~!!!」
読者の皆様はもうお気付きだと思うが、基本的にこのイカレた没落令嬢は誰にも止められないのだ!
「あ、衣装も用意してありますわよ!」
「え? 衣装?」
するとポーラは、自分の旅行鞄の中から一着のワンピースを取り出す!
それはなんと! スカートの部分にひらひらのフリルがたくさんついた、“甘ロリータ”と言われる類の服であった!
色はいかにもな感じの濃いピンクで、もはや説明する必要もないと思うが女物である!
「……どれが衣装ですか?」
「これですわ」
「どれですか?」
「これですわ」
「それですか?」
「これですわ」
「……」
アルノはもはや、何も喋ることができなくなっていた! 目の前に突き付けられた現実を直視することを、脳が全力で拒んでいるのだ!
「あなたには今日から、男の娘系アイドル“あるのちゃん”になっていただきますわ」
「あるのちゃん……」
「ええ。基本的に男性アイドルといえばワイルド系や王子様系が主流。でもあなたは童顔ですから、女装が似合うはず! というわけで、この衣装でステージに立ってもらいます」
流石は敏腕アイドルプロデューサー・ポーラ! アルノのビジュアルを最大限に活かした、個性的なプロデュースである!
「……その服を着て、“ふわふわ♡とろとろ♡パンケーキ♡♡♡”を歌うんですか?」
「ええ」
「嫌です」
「嫌ですの?」
「嫌です」
「どうしてですの?」
「嫌だからです」
その瞬間──ポーラ、キレる!!!!!
「おだまりーーーーー!!!!! 私の用意した衣装が気に入らないんですのーーーーー?????」
「衣装どころの騒ぎじゃないですお嬢様! もう、何もかもです!」
「しゃらくさいですわーーーーー!!!!! お父様の濡れ衣を晴らすため、あなたにはアイドルになってもらう必要がありますのーーーーー!!!!!」
「脳みその思考回路がバグってるんですかお嬢様!」
そして3日後。
ボナパルト王国の繁華街にある、きらびやかなライブハウスにて。
そこには、甘ロリの服を着こなして堂々とステージの上に立つ、新人男の娘系アイドル“あるのちゃん”の姿があった──!
次回、「アイドル事業で荒稼ぎ!!!」に続く!!!