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第12話 「カレーマスター・ポーラ爆誕!!!」

 前回までのあらすじ! カレー作りの裏には、壮絶な道のりがあった……!











 ポーラが最強のカレー職人であるインド人・クリシュナさんの弟子になって、早くも1週間が過ぎた。


 この期間、ポーラは必死にクリシュナさんが営むカレーレストラン“ナマステ庵”のアルバイトをしたり、カレー作りの基本である“口から火を吹く方法”を練習したりしていた。


 これまでさんざんあくどい商売をしてきた彼女だが、遂に真面目に労働をするようになったのである。


「さあポーラさん、スパイスの調達に行きますよ!」


「はいですわ!」


 時刻は午後10時。店を閉めたクリシュナさんは、今日もまたスパイス調達のために、ポーラを引き連れてドラゴンの巣穴の前までやって来た。


「どうですポーラさん。今日はあなたがドラゴンと闘ってみませんか?」


「まあ! いいんですの!?」


 ポーラが喜びつつ尋ねると、クリシュナさんはコクリと頷く。


「何事も経験がすべて! ポーラさんはかなり火を吹くのが上達してきましたし、後ろで私もサポートしますから、チャレンジしてみましょう!」


「はいですわ!」


 そしてポーラが前へ進むと、目の前の巣穴から、今日もまたのっしのっしと巨大なドラゴンが這いずり出てきた。“コリアンダー・サラマンダー”である。


「さあポーラさん! 頑張って!」


「了解ですわ!」


 力強く返し、目の前にそびえる巨大なドラゴンを見据えるポーラ。


 爬虫類独特のぎょろりとした目に生理的嫌悪感を抱きつつも、勇気を振り絞ってまた一歩前へと進む。


「行きますわよ……」


 腰を低く落とし、全身に力を籠める。


 そして、深く息を吸った。


 ──次の瞬間!!






「ホワァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!」






 ポーラ、叫ぶ! ばちぼこに叫ぶ!!


 その文字数は圧巻の112文字! 前回クリシュナさんが見せた602文字には当然遠く及ばないが、それでも素晴らしいシャウトである!


 そんな彼女の叫びに呼応し、口から猛烈な勢いで火が噴出した!


 ポーラは今、ただの没落令嬢ではない……!


 人間火炎放射器である!!


「ウギャーー!!」


 火炎の熱にもだえ苦しむサラマンダー! その全身からきらきらと茶色く光る鱗が剥がれ落ちて行った! そう、カレーのスパイスの一種、コリアンダーだ!


「やりますね、ポーラさん! 私はあなたのような優秀な弟子を持てて、幸せです!」


 クリシュナさんはご満悦であった!


 するとサラマンダーはUターンし、脱兎の如きスピードで巣穴へと戻っていく!


「はぁ……はぁ……やりましたわ……! ついに私、サラマンダーを撃退できるほどの火炎放射ができるようになりましたわ!!!」


 ポーラはそう言って右拳を天に掲げ、堂々とガッツポーズをするのであった!!


 カレーマスターポーラ、誕生の瞬間である!!











 それからさらに1週間後。時刻は午前10時。


 カレーレストラン“ナマステ庵”はまだ開店時間ではないが、クリシュナさんとポーラは厨房に入り、カレーの仕込みにいそしんでいた。


「ポーラさん、あなたもずいぶんとこの仕事に慣れてきましたね」


「おーっほっほっほ! 当然ですわ! 私は天才でしてよ!」


 カレーの入った寸胴鍋をかき回しながら高笑いをするポーラ。


 これまでまともに働いたことのない彼女であったが、カレー作りというものに関しては間違いなく真剣に取り組んでいた。


 と、その時。レストランの扉が開き、外から白いローブに身を包んだ怪しい男達が3人入ってきた。


「あ、すいません。まだ開店時間じゃないんですよ」


 厨房から出たクリシュナさんがそう言うと、3人の中でリーダー格と思しき背の高い男が、おもむろに口を開く。


「あなたがここの主人であるクリシュナさん、ですか?」


「ええ、そうですが……」


 彼がそう答えると、他の2人のローブ男が突然走り出した!


 そして信じられないパワーでクリシュナさんを取り押さえる!!


「えっ!? な、何事ですか!?」


 慌てふためくクリシュナさん!


「確保しました!」


「うむ、ご苦労!!」


 背の高い男は満足げに頷き、さらに続けた!


「説明が遅れたな! 私達は“密漁規制協会”の者だ! このボナパルト王国の秩序を守るため、危険な密漁を取り締まっている!!」


 しかし──クリシュナさんには、全く身に覚えがなかった!


「ちょ、ちょっと待ってください! 私は、密漁なんかやってません!!」


「しらばっくれるな! 貴様がこの店で提供しているカレーは、自分で取りに行ったサラマンダーの鱗をスパイスにしているそうだな!?」


「そうですが……でも、取るのは鱗だけです! 問題ないでしょう?」


 困惑顔で答えるクリシュナさん! すると男が激昂しながらこう言った!


「いいかクリシュナ! サラマンダーはこの国では最も神聖な生物として扱われている! だから許可のない者が鱗を取るのは、密漁なんだよ!」


「えぇ!? そうだったんですか!?」


 今明かされる衝撃の真実!


 許可のない人間が勝手にサラマンダーから鱗を取るのは、密漁にあたるようだ! ちなみに、市場で売られているサラマンダーの鱗は正式な許可を得た業者が取って来たものなので、問題はない!!


「そ、そんな! インドでは何も問題なかったのに!!」


「インドではよくてもこの国じゃダメなんだ! というわけで、貴様にはこれから裁判を受けてもらう! さあ、ついてこい!」


 男がそう言うと、クリシュナさんを取り押さえていた2人は彼を無理やり立たせ、連行しようとした!


「ちょ、ちょっとお待ちなさい!!」


 どうしたらいいか分からなかったが、とりあえず登場したポーラ!


 そして必死に


「く、クリシュナさんは悪い人じゃありませんわ!」


と叫んだ!


「ん!? なんだ貴様は!」


「私はここのバイトですわ!」


「うーむ、バイトということなら罪には問わないが……これ以上我々にたてつくなら、貴様も裁判所に連行だぞ!」


「それは困りますわね!!」


 するとクリシュナさんは、ポーラを見据えて冷静に口を開いた!


「私のことなら心配いりません、ポーラさん! そんなことより、私が戻るまでこの“ナマステ庵”の経営をお任せします! もちろん、カレースパイスは市場で買った鱗を使ってください!」


「で、でも……いきなり私が経営をするなんて……」


 今、ここ“ナマステ庵”で働いているのは、店長であるクリシュナさんを除けばポーラとたまにパートでやってくる近所のおばちゃん、その名も「安西さん(51歳)」だけである!!


 ピンチ! 圧倒的ピンチ!!


「大丈夫です、ポーラさん! 今のあなただったら、ナマステ庵を経営していくことができます! 自信をもって!!」


「わ、分かりましたわ!! 私、頑張りますわ!!」


 こうして、クリシュナさんは密漁の罪で裁判所に連れていかれることになってしまった!!


 果たして、ポーラは無事にこのカレーレストランを経営していくことができるのであろうか!?


 だがきっと、ここまで必死に頑張ってきた彼女であれば可能なはずだ!


 次回、「カレーレストラン、没落!!!」に続く!!!

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[一言] 待ってました!
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