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第1話 「没落!!!」

「うぎゃーーーーー!!!!! 没落しましたわーーーーー!!!!!」


 17歳になったその日!!!


 貴族令嬢ポーラ・エスメラルダは家を失った!!!











 ボナパルト王国で最も栄華を誇る一族はどこかと聞かれれば、国民は皆口をそろえて「エスメラルダ家だ」と答えるはずだ。


 エスメラルダ家は貿易によって莫大な富を得た一族であり、ポーラはそこに生まれた一人娘であった。


 陶磁のように白い肌と美しく輝く金の髪を持つ彼女は、両親や従者、そして街の人々からも愛情を注がれて育った。


 だが、その栄光は一瞬にして崩れ去る。


「「「ハッピーバースデイトゥユー! ハッピーバースデイトゥユー!」」」


 屋敷の大広間にて、ポーラの誕生日を祝うためのパーティが催された。


 きらびやかなシャンデリアが照らす会場で、両親や従者たち、そしてこの日のために集められた国中の貴族たちの温かな喝采を聞きながら、今日の主役・ポーラが柔らかにほほ笑む。


 数百万ゴールドはするであろう純白のドレスに身を包んだ彼女は、目の前に運ばれてきたケーキに目を奪われた。


「まあ、凄い……」


 巨大なホールケーキの上には、17本のろうそくが。そう。彼女は今日で17歳になる。ウェーブがかった金の髪を腰まで伸ばし、その顔つきにも大人の女性としての風格が現れ始めていた。


「さあ、ポーラ。ろうそくの灯を消すんだ」


 ポーラの父・クロードが、優しくそう言ってきた。


「分かりましたわ、お父様」


 彼女はコクリと頷き、火の灯ったろうそくに口を近付ける。そして一息に火を吹き消そうとした、まさにその瞬間。






 バンッッッ!!!






 突然、大広間の扉が開いた。


「?」


 ポーラも、会場にいた人々も、一斉に扉の方を向く。するとそこから、ぞろぞろと鎧に身を包んだ男達が入ってきた。その甲冑の胸にはバラの紋章が刻まれている。間違いない、あれはボナパルト王国を象徴する“薔薇の(もん)”だ。すなわち、彼らはこの国の衛兵である。


「何事だね、君達!」


 怒りをあらわにしながら、クロードが声を上げた。


「我々は、国王より派遣されてきた衛兵部隊です。エスメラルダ家当主、クロード・エスメラルダ。あなたをこれより、脱税の疑いで拘束します」


 衛兵達の隊長と思しき大男が答える。


「なんだと!?」


 クロードは驚愕に目を見開いた。


「どういうことですの? お父様!」


「わ、分からん! 国の法で定められている税は、しっかりと払っているはずだ!」


 すると──大男の隊長は、突然大声を張り上げて突進(タックル)してきた!!!


「うるさい! この期に及んで言い訳をするな!」






 ズドンッッッ!!!






 隊長の時速100キロにも及ぶタックルがクロードを襲う!!


「ぐわーーーーー!!!!!」


 クロードは思いっきり吹き飛ばされ、壁に激突した!!


「う、うう……ポーラ……」


「お、お父様ーー!!」


 泣き叫びながら、苦しそうに倒れる父のもとへ走り寄るポーラ!


「お父様! 目を開けてくださいませ! お父様!」


「うう……ポーラ、頼む……きっとこの件には、何か裏があるはずだ……! この事件の真相を、暴いてくれ……!」


「分かりましたわ! お父様!」


 すると、衛兵隊長がやって来てポーラを払いのけた!


「おらどけ!」


「きゃあっ!」


 激しく尻餅をつくポーラ! 数百万ゴールドのドレスが破れた! もったいない!


「わ、私はこれからどうなりますの?」


「ふん、今回拘束されるのはお前の父親だけだ! だが脱税の疑いが晴れるまで、この屋敷は国が取り押さえる! お前や従者達は、全員外へ出て行ってもらうぜ!」


「そ、そんなぁ!」


 ポーラ、憤慨! すると隊長は、悪人のような冷たい笑みを浮かべて口を開いた!


「くっくっく……悪いがお嬢さんには、“没落”してもらうぜ……!」


「嫌ですわーーーーー!!!!! 没落したくありませんわーーーーー!!!!!」


「うるせぇ! とっとと没落しろ!」


「嫌ですわーーーーー!!!!! 没落したくありませんわーーーーー!!!!!」


「今年で17歳だろうが! わめくな!」


「嫌ですわーーーーー!!!!! 没落したくありませんわーーーーー!!!!!」


「いやもう本当にうるせぇな! おいお前ら、こいつを外に運べ!」


 隊長が部下の衛兵2人に命じると、彼らは


「はい、かしこまりました!」


と返事をし、ポーラの腕を引っ張って会場から引きずり出そうとする!!


「嫌ですわーーーーー!!!!! 没落したくありませんわーーーーー!!!!!」


 渾身の力で暴れるポーラ! その暴れっぷりは、スーパーのおもちゃ売り場でおもちゃを買ってくれと泣き叫ぶ子どもの動きに匹敵していた!!


「おいやめろ!」


「暴れるな!」


「嫌ですわーーーーー!!!!! 没落したくありませんわーーーーー!!!!!」











 というわけで! ポーラとエスメラルダ家に仕える従者達は、全員屋敷からつまみ出された!


「うぎゃーーーーー!!!!! 没落しましたわーーーーー!!!!!」


 17歳の誕生日を最悪の形で迎えたポーラは、屋敷の門の外で泣き叫ぶのであった!


「落ち着いてくださいポーラ様!」


 その時彼女に声をかけてきたのは、アルノであった!


 彼は昔からエスメラルダ家に仕える執事で、ポーラのお世話係を担当している!


 彼女が父親の次に信頼を置く人物だ!


 年齢は30歳で、身長は圧巻の190センチ! 黒い燕尾服に身を包んでおり、顔はもちろん超イケメン! 白馬に乗って颯爽と草原を走っていても違和感がないほどの、色白な王子様顔なのだ!


 この美男子っぷりには、毎日恋愛カテゴリの小説を読み漁っているなろう読者の皆様も思わず納得!


 さらに腕っぷしも一流であった! 彼はかつて王国最強の執事を決めるために開催された“天下一執事武闘会”にて優勝した経験を持つ! 一見華奢に見える線の細い男だが、脱いだら凄い!


「あ、アルノ……私、これからどうしたら……」


「この事件の真犯人を、私と一緒に探しましょう!」


「マジですの? 協力してくれますの?」


「マジです! 犯人を見つけて、クロード様の濡れ衣を晴らすのです!」


 肩まで伸ばしている艶やかな黒髪を揺らし、力強く言うアルノ!


 その言葉を聞いたポーラは、滝のように流していた涙を止めて晴れやかに笑った!!!


「分かりましたわーーーーー!!!!! 真犯人を殺しますわーーーーー!!!!!」


 こうして、没落令嬢ポーラとその執事・アルノの冒険が幕を開けた!!!











 ──が、1つ問題がある!


「お待ちなさいアルノ」


「はい、なんでしょう」


「これから生きていくためには、まずお金が必要ですわ」


「そうですね」


「とりあえず、今私が着ているドレスを売れば数百万ゴールドは手に入りますけど……それじゃ全然足りませんわ」


 するとアルノは困ったような表情になった!


「そ、そうでしょうかポーラ様。数百万ゴールドもあれば、とりあえず1年は楽に暮らせるはずですが……」


 しかしポーラ、不服!


「私は令嬢なんですわよ!? 没落したからといって、生活水準は下げたくありませんわ! 1日三食キャビアの金箔まみれ弁当を食べなくては!」


「そうはいきませんよポーラ様! これからは食費も節約していかないと……」


 と、その時! ポーラの脳裏に電撃走る!!!


「……アルノ」


「はい、なんでしょう」


「そういえばあなた、イケメンですわよね」


 率直に言うポーラ! アルノは照れくさそうに頭をかいた!


「えへへ、そ、そうですか?」


「アイドルにおなりなさい」


「はい?」


「アイドルになって、お金を稼ぎなさい!」


「はい?」


「そうすればお金がたくさん手に入りますわ! 貧乏な生活をしなくてよくなりますわ!」


 ポーラ、悪魔的発想! 没落したショックで完全に頭がおかしくなったのか、発言がめちゃくちゃである!


「お待ちくださいポーラ様! お、お父様に濡れ衣を着せた犯人を捜すのはどうするんですか!」


 必死の形相で訴えるアルノ! しかしポーラ、聞く耳持たず!


「犯人探しは後からでもできますわ! “そんなこと”よりも、とりあえずお金稼ぎが優先! それに、お金があれば犯人探しもスムーズにできるようになるかも知れませんわよ!」


「そ、それはそうですが……」


 アルノ、たじたじ! 圧倒的たじたじ! もはやこのイカレた没落令嬢は誰にも止められない!!


「と、いうわけで! 私がプロデューサーになって、新人アイドルのあなたをプロデュースいたしますわ~~~!!」


「えぇ~~~!?」


 次回、「執事、アイドルデビュー!!!」に続く!!!

とりあえず1話だけ書いて放置してたんですけど、このままにしておくのももったいないので投稿しました。恋愛ジャンルの小説を書くのは初めてだったのですが、楽しんでいただけたでしょうか?

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