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過去・心の喪失

ダメじゃ‼︎戻れっ…‼︎


バッと飛び起きた身体には、冷や汗が伝っていた。窓から見る向こうの空が、薄っすらと明るい。街の景色は見る影もなく、そこに佇む人々の表情はただただ悲しい。


この戦争で、多くを失った。住む家でもあった医院、共に酒を酌み交わした友人、毎日朝の挨拶をしてくれた子ども達…何とか助けようと、日々もがいた。が、やはり限界はあるもんだ。儂は、全てを諦めた。


あの、真っ白の服を着た女性、カレンと出会って、儂は驚いた。以前みた異世界人と、何となく面差しが似ている彼女は、途方もない魔力を持っているようだ。火事の威力が弱まれば儲けものと思い、魔力の使い方を教えたら、なんと火事を消し、さらに少年の致命傷を治してしまったのだから。まあ、その後はからきしじゃったが…


彼女を利用する事を、考えなかった訳ではない。王都に連れて行き、兵器として差し出せば、この街を救って余りある金が手に入るだろう。だが、出来なかった。人との交流に不器用なのか、素直にお礼を言われてなぜか戸惑うような笑顔を見せたり、一心不乱に街の人を助けようと駆け回る彼女を見たからだ。


世話になっている女将さんや、赤子を抱いたエリィは、知り合って間もない彼女をえらく信頼しているが…儂は、彼女を信じるのが怖かった。また、失うのが怖いのかも知れん。


この戦争で、3年前に一人息子を亡くした。儂に似らず、病気で死んだ妻に似た賢い子だった。この状況を憂い、1人でも助けたいと、軍医として志願した。もちろん儂は反対したが、息子は振り返らず去っていった。そして、軍のキャンプで治療に当たっていた所を、爆弾で吹き飛ばされたそうだ。


不思議と、涙は出なかった。きっと、全てを諦めていたからだろう。以前、異世界人がもたらした仮初めの平和を望めるなら、それが一番なのかも知れない。そう、願わくば、儂のように諦める事がない人生を、どうか、どうかみんなには…

お読みいただき誠にありがとうございます‼︎

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