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悲しい世界〜9〜

「…なに、これ…」


いや、覚悟はしていた。ここは日本どころか地球ですらないのだろうと。日本語は通じるけど、人の見た目や格好、文化が違うのだから。が、ロナウ先生に世界地図だと見せてもらったものは、巨大な砂時計が横に置かれたような形の大陸がドカンと描かれているだけだった。


「やはり、あんたの世界とは大分違うかのう?こちら側が儂らのいるレフトゥール国、今いる街はちょうど国の右側、国境を繋ぐ道のやや近くじゃな。」


地図に描かれた砂時計のような大陸、その左側がレフトゥール国で、右側がライトゥナ国と言うらしい。まぁ、覚えやすいな。


「この世界には、国は2つしか存在しないんですか?」


「そうじゃな。この世界を、どう断定するかで変わってしまうが…儂らの世界では、王国が2つ存在していて、隣同士で時に争い、時に手を取り合い繁栄してきた。ところで、この世界の成り立ちは聞いておるか?」


「あ、えっと…たしか、神の結界がどうって…?」


「そうじゃ。大昔、この世界の全てに絶望した神が、せめて自分の愛し子だけでも護ろうと、結界を張り隔離したのがこの国の成り立ちじゃ。じゃから、結界の外には、おそらく世界があって、国がある。行き来は出来んがな。」


「あの、時に争い、時に手を取り合い…って、2つの国は、戦争を繰り返しているんですか?」


「…人間とは、業が深い生き物じゃ。欲しなければ、望まなければ、こんな戦争を繰り返す事もないのにのう。」


ロナウ先生は、悲痛な表情を浮かべて語った。両国がそれぞれ領地拡大を目論み、侵略戦争を行なっているのだそうだ。以前やってきた異世界人のお陰でしばらく停戦状態だったが、今から約5年前…レフトゥールの所有する谷から魔力を蓄える事の出来る鉱石が見つかり、その利権関係が侵略戦争に発展したそうだ。


…全く以って、くだらない。


「この、国と国を繋ぐ道、横に3本走っておるじゃろう?真ん中は、前回の戦争が一応終結した事の証に、平和協定が結ばれた事を記念して作られた道じゃ。この道では、両国民が通れるが絶対に戦争行為をしてはならないとされている。この侵略戦争にあっても、それは守られているらしい。そして、その道の両脇に走っている道は、それぞれレフトゥールとライトゥナのもので、その国民以外通ってはならないとされている。…全く、愚かしいのう。」


私は、言葉に詰まった。日本という国に生まれて、おおよそ命の危機を感じた事も、貧困に喘いだ事もない私には、何も言えないと思ったからだ。


…いや、それもあるが、世界の悲しい紛争や格差、様々な問題をない事として、のうのうと生きていた人間には、何かを言う資格がないと思ったからだ。

お読みいただき誠にありがとうございます‼︎

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