悲しい世界〜3〜
「あらら、大丈夫かい?どこか具合が悪いんじゃ…」
ブラウンの髪を引っ詰めた恰幅の良い壮年の女性が、気遣わし気に尋ねてくる。が、私は緊張のあまり身動きすら取れない。押し黙った私を見て、女性が側まで近寄って来た。
「エリィは、言葉は通じるって言ってたんだけどねぇ…とりあえず、ベッドに戻りましょうか。お腹は空いてる?食事はとれそうかい?」
…グウゥゥゥウ‼︎
食事と聞いて、いつも以上に素直な腹の虫が騒ぎ出した。顔を真っ赤にした私を見て、女性はワッハッハと笑う。
「なんだい、エリィがあの方は神の御使いかもしれない〜とか騒いでたけど、普通の女の子じゃないか。」
女の子と呼ぶには些か歳を取っている気がするが、それは置いといて…
「あ、あの…助けていただいたんですよね?お礼も言わず、すみませんでした。」
一瞬、キョトンとした女性はまた笑いながら答えた。
「いやいや、助けてもらったのはこっちの方だよ。エリィ…あんたが助けてくれた子なんだけど、私らに遠慮して黙って1人であそこまで行っちまってね。どうにか1人で赤子を生む気だったみたいだ。5日前に大きな侵攻があってね。この街の周辺まで焼かれちまって…みんなギリギリの状態だから、優しいあの子は私らに頼れなかったんだろう。…あんたの身なりから、この辺りの人間じゃないと思って警戒はしたんだけど、エリィと赤子を助けてくれたんなら大丈夫だと思ったんだよ。
さぁ、今はこんなものしかないけど、食べておくれ。」
あまりの情報にクラクラしながら、差し出されたお皿を受け取る。聞きたいことは多々あるが、今は食事をさせてもらおう。
「…いただきます。」
ミルクとコンソメがベースのお粥を一口、口に含むと、ホッとするような温かさを感じた。
無言で食べ進めていると、涙が溢れて止まらなくなった。アラフォー女がモグモグしながらボロボロ泣くなんて…と、冷静になるとなかなか恥ずかしい…が、止まらなかった。
食事を持ってきてくれた女性は、所々煤けたボロボロの服を着ている。もしかしたら、他人に食事を分ける余裕なんかないのかも知れない。でも、明らかに怪しい私を助けてくれたこの人達に縋るしか、今の私には道がない。
「ご馳走様でした。あの、ありがとうございます。本当に、本当に助かりました。それで、その…お察しの通り、私はこの世界の人間じゃありません。何も、分からなくて…もし、ご迷惑じゃなければ、この世界の事を教えてもらえませんか⁉︎」
お読みいただき誠にありがとうございます‼︎