森の中での出会い〜5〜
森の木々は風にさざめいて、水面はユラユラキラキラと輝いて、なんだか吸い込まれてしまいそう。物理的に。いや冗談抜きで。
こちとら飲まず食わずで、おそらく異世界に飛ばされて、訳も分からずお産の介助…心身共に限界過ぎた。
じゃぶじゃぶ手を洗っていると、ふわ〜っと身体が前のめりに倒れていくのを感じたが、止められるはずがない。
後ろから、「ダメッ‼︎危ない…っ‼︎」と、お産を終えたばかりのお母さんの叫び声が聞こえた。
あぁ、疲れてるのに、そんなに大きな声を出したら血圧が上がりますよ…
…ザバァンッ‼︎
頭から池に落ちて、そのまま身体も意識も沈んでいく。今度こそ、死んじゃうのかなぁ…
小さい頃から、あなたは長女だからと厳しく躾けられた。年の離れた弟ができてからは更に厳しく育てられ、色々あったのち、自意識過剰で他人の評価を気にする、甘え下手で可愛げのない女になった。
大学時代の彼氏には、お前には思いやりがない、息が詰まると言われてフラれた。ありがちな話だが、それから恋愛にはとんと縁がない。
親からも友人からも、若いうちに結婚しろとか子供はいた方が良いとか、ごちゃごちゃ言われたものだが、齢35を超えた辺りから静かになった。
…まぁ、こうやって考えると孤独だが、仕事は頑張っていた。いや、頑張り過ぎていた…か。
頑張り過ぎた上にこの性格も災いして、後輩や同僚に疎ましがられ、新人に泣かれるなんてしょっちゅうだった。特に山藤。
そんな私が、異世界でダイナミック入水で孤独死…因果応報にしちゃ、厳しすぎる気がするが、人生何があるかわからないものだなぁ。
溜息ばかり吐いてきた私が、まさに人生最後の溜息を吐こうとした瞬間…金色の光が全身を包み込んだ。
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