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SURVIVOR  作者: MHSホールディングス
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第1章アイゼンガルド統一編 第6話ダンジョン探索

人間国アイゼンガルドにある地下ダンジョン。

ダンジョン内部は階層ごとに迷宮のような作りになっており、

階を増すごとに迷宮の複雑さが増し、魔物の強さと数が比例して大きくなっていく。

最前線は28階層まで踏破されているが、最深部は未だ謎に包まれている。

ダンジョンの中央部には大きな穴が階層を突き抜けてぽっかりと空いている。


とある数学者が第一層に空いている穴の入り口から石を落とした。

落とした石が地面に着いた時に発生した音の反響からおおよその計算を行った結果、

このダンジョンは大体50階層まであるのではないかと言われている。


だがその真偽は謎、実際に訪れたものしかわからない。


また、とある冒険家はその穴の入り口からロープを垂らしゆっくりと下まで降下していった。

しかし、その冒険家が再び戻ってくることはなかった。

なぜこんな恐ろしいダンジョンが今まで封鎖されずに、長くに渡って冒険者に愛されてきたのか、

理由は単純であった。


このダンジョンに生息する魔物からしか得られない貴重な素材やアイテム。

秘密扉を見つけた先に現れる宝の数々。

そして何より、力自慢の冒険者たちの腕試しの場所としてこのダンジョンは繁栄を続けている。


ダンジョンの入り口でレオンハルトは熱く話す。

そしてその話を嬉しそうに聞くアリス。

とは裏腹に洋輔は不安だった。


この理由も単純、洋輔の戦闘能力がまだまだ低いからである。

そんな洋輔の気持ちなどつゆ知らずレオンハルトはダンジョン内に向かって歩き出す。


「今日は最初だから1階層か、進んでも2階層くらいまでにするぞ!魔物との戦闘の基本をきっちり教えるからな!」


そんなことを言いながらレオンハルトはズカズカと歩いていく。

ダンジョンの入り口は街の中にある石造りの神殿の中にあった。

神殿に入ると中には大きな地下へ続く階段がある。

そしてその階段を中心に、周りでは露店商がダンジョン探索に必要なアイテムを売っている。

神殿の中は冒険者ばかりであった。

レオンハルトはいろんな冒険者に挨拶をされていた。

やはりそれなりに有名な人だからだろう。

そんな人が一緒ならまあ死ぬことはないと願いたい。

洋輔は自分にそう言い聞かせながら彼に続いてダンジョンの中へと入っていった。


◇◇◇◇


ー2階層ー


現在洋輔はダンジョンの2階層でインプを蹂躙している。


一人で。


インプとは人型の魔物だ。身長1mほどで頭に1本ツノが生えている。

インプから取れる素材はその角だ。武器には加工できないが、日用品としては使えるらしい。

なぜ洋輔が一人でインプ狩りをしているかというと、

アリスとレオンハルトは洋輔を置いてもっと深い層にいってしまったからだ。

寂しい。


プレイヤーとして生まれた洋輔はもともとこの世界のNPCよりもある程度ステータスが強く設定されていた。

そのため、レベル2でも全然戦えた。というか余裕だった。きっと武器の強さもあるのだろう。

最初の不安などすっかり消えて洋輔はひたすらインプを狩っていた。

軽く100匹は狩っていると思う。その間何度かレベルが上がった。

インプとはいえ100匹も狩ったからか、レベルが7まで上がっていた。

角も袋いっぱいに取れたので洋輔は一休みすることにした。

地べたに腰を据えステータスウィンドウを開く。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

種族:人間

Lv:7

HP:170

MP:170

力:20+30

体力:21+25

精神:21+20

速さ:20+15

運:70

SURVIVOR:69/100

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

スキル:【神の手】その手で触れただけで人を生き返らせることができる。

    【火耐性(中)】火属性攻撃に対する耐性が上がる。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ステータスの上昇値については運以外平凡であった。

それにしても装備による補正がとても強い。良い武器を買っといて本当に良かったと思う。

レッドドラゴンの鱗を使った胸当てを着けている影響か、火耐性のスキルも備わっている。

まあインプ相手では全く意味をなさないが。


レオンハルトいわくダンジョンでは10階層ごとに階層守護者と呼ばれる魔物がいるらしく、

他の魔物とは強さも大きさも桁違いらしい。

そしてちょうど10階層の守護者が炎を使ってくる魔物らしく、俺とアリスはこの防具を選んだ。

にしてもステータスの上がりが本当によろしくない。

このままで俺は果たして最後の一人として生き残れるのであろうか。

もしアリスと一騎打ちになったら確実にやられる自信がある。

洋輔はそんなことを考えながら重い腰を上げて狩りを再開した。


と思ったが、もうインプの角を手に入れたところで持ってきた袋には入らない。

洋輔はしょうがないので2階層を散歩することにした。


インプを避けながら、しばらく迷宮に沿って進んでいくと、少し広い空間に出た。

20m四方くらいだろうか、そこには3階層に進むための地下への階段があった。

他には一辺だけ壁が無く、崖のようになっている場所があった。

これがレオンハルトの言っていたダンジョンに空いた大きな穴のようだ。

どれくらいの大きさだろうか……とにかくでかいとしか言いようがない。

下を覗いてみても暗闇しか見えない。

落ちたらきっと死んでしまうのだろう。


そんなことを考えながら洋輔がぼーっと穴を眺めていると、



「そんなとこいたら落ちて死んじまうぞー! 洋輔、遅くなって悪かったな!」



「レオンハルト、それにアリス。待ちくたびれたよ。」



「悪い悪い!今日は気分が良くてな、10階層の階層守護者を倒してたら遅くなった!」



洋輔は懐かしい声に少し安堵した。

ていうか、今なんて言った?10階層まで降りたのか!

アリスと二人で階層守護者を倒したってことか!

ツッコミどころが多すぎて逆に何を聞けばいいのかわからなくなるわ!

もういいや、今日は疲れた。今度聞こう。


帰り道、アリスは洋輔に今日ダンジョンで起こった出来事を楽しそうに話してくれた。

レベルが9になったこと、10階層の階層守護者がドラゴンのような怪物であったこと、

どれもすごく気になったが、洋輔はどれもそっけない返事をしてしまった。

疲れていたからだろうか、いや多分自分だけ二人についていけていないこの状況が面白くなかったのだろう。

疎外感や嫉妬、ゲームの中でもこんな感情を持つことがあるのだな。

洋輔はつまらないことを考えている自分に嫌気を覚えながら帰り道を歩いていた。


ダンジョンのある神殿の向かいにはそこで取れた素材やアイテムを買い取ってくれる施設があった。

洋輔はそこで今日取れたインプの角を全部売った。

100本ほどで1万ゴールドになった。初めて自分で稼いだ金だ。少し嬉しい。

洋輔の買取が終わり、アリスとレオンハルトを待つためそばにあったベンチにしばらく腰を掛けていた。




「あなたが奇跡の手を持つっていうお兄さん?」




突然聞こえた声に洋輔は驚き、ふと声のする隣に目をやった。

そこには黒いフードを被った少女が腰かけていた。

全く気配を感じなかった

そしてちらりと見えた顔には見覚えがあった。

ハンナ・ミシェーレ。確か死神の手を持つという少女。

俺は腰にある剣をすぐに抜ける体勢をとった。



「安心してこんなところで殺したら私捕まっちゃうでしょ?


 そんなことになったらめんどくさいじゃない。今日は挨拶に来ただけよ。


 でも必ず殺すわ。あなたもあのアリスっていう女も。」



彼女はそう言って洋輔に微笑みかけた。



「俺は別にここでお前を殺すこともできるぞ。」



「できないわ。」



洋輔が剣を抜こうとすると、首筋に冷たいものが当たった。



(他にも誰かいる!?誰だ!)



「やめて。今日は挨拶に来ただけよ。」



彼女がそういうと、首筋に当たっていたナイフは解かれた。

幸い周りの人たちは誰も気づいてないみたいだ。変な騒ぎにはなっていない。

洋輔が後ろを振り向くと、ハンナと同じくフードを被った男が立っていた。

この男にも見覚えがある。たしかハン・ヨンウン。


その男はしばらく洋輔を睨みつけ、何も言わずに建物の外に向かって歩きだした。

そしてハンナもその男の後ろを追って建物を後にした。


まずいことになった。

洋輔はひとまず冷静になることに努めた。

帰ったら一度状況を整理しよう。ここで考えるのはやめだ。



◇◇◇◇



あの後レオンハルトと別れて、アリスと共にガンドール家までたどり着いた。

正直ヒヤヒヤものだった。夜道を襲われるのではないかと危惧したからだ。

今はアリスと共に洋輔の部屋にいる。決していかがわしいことをするわけではない。

情報交換をしないとだ。洋輔はさっきよりも冷静になっていた。


だが少しだけアリスの様子がおかしい。なんかちょっと怒ってるっぽい。

ほっぺたを膨らましてこっちを見てくる。でも目を合わすとプイってする。かわいい。



「あの、アリスさん?もしかしてご機嫌斜めな感じですか?」



洋輔がそう尋ねるとアリスはまたプイっとした。かわいい。

洋輔はひとまずシカトして今日あったことを話し始めた。

今日あったこととはプレイヤー二人と遭遇したことだ。

その話をするとさすがにアリスも真剣に聞き始めた。


ハンナ・ミシェーレとハン・ヨンウン。



「ハンナは恐らく俺とは全く逆の能力、触れた相手を殺すことができる能力を持っていると思う。


 ハンヨンウンについてはよく分からないけど、酒場の掲示板にはプレイヤーサーチって書いてあったから、


 プレイヤーの居場所とかがわかるのかもしれない。まあ実際のところはよく分からん。


 そんなことより一番重要なことは、二人が協力関係にあるってことだ。


 どんな理由かは分からないけどね。


 でもそうなると相手にするときは能力者二人を相手にしなくてはいけない。


 それを考えると、明日から俺とアリスは離れないほうがいいだろう、と俺は思う。


 アリスはどう思う?」



洋輔がアリスに尋ねると、アリスは何やらぶつぶつと言いながら頷いて言った。



「うん!私も洋輔とは離れないほうがいいと思うの!明日からは一緒に行動しましょう!」



アリスはちょっと嬉しそうにそう言って、お互いに目を合わすとまた少しむすっとした顔をした。

そしてアリスは洋輔に尋ねる。



「洋輔が今日ちょっとだけ私に素っ気なかったのは、2人にあったからなんだよね?


 いろいろ考え事してたからだよね?」



「ああ、、うん、そうだよ!」



洋輔は少しごまかしながらそう言った。

それでこの子は怒ってたのか、まあ何はともあれ、そう言うことにしておこう。



「そう言うわけで、明日もダンジョンに潜ろう。あの二人のことを考えると少し危険だけど、


 襲ってくるならダンジョンだ。ダンジョンの配置について細かく知っておく必要がある。


 第1層から行けるところまで、二人で探索しよう。」



「わかったわ!洋輔は私が守るから安心して!」


アリスは自信満々な顔で洋輔にそう言った。


なんだか少し情けないが、今はアリスのこの言葉がとても心強い。

ステータスだけ考えれば、間違いなくアリスがプレイヤーの中でも一番強いだろう。

そんな子が自分のガーディアンになってくれるんだ。


てか普通逆だよね。まあ細かいことは気にしない気にしない。

俺も明日から頑張るか。

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