肝試し
(今日も楽しかったなあ)
うちはベットにゴロンと寝っ転がった。
今日もみんなとおしゃべりして、わいわいご飯を食べて。それから、あの子をちょっといじって。あの子をいじるのが一番楽しいの! ちょっといじるだけでボロボロって泣くんだもん。おかしくってたまらないよ!
「ピロンッ♪」
軽やかな通知音が鳴り、ひょっこりとロック画面に通知が来る。
[ひより:ねえ、みんなで肝試し行かない?]
仲良しグループのLINE。こんな風に誰かが何かを提案すれば……
[まみ:いいね!楽しそう!]
[りりあん:いいよ!]
みんなが一斉に返事を返す。
それにしても、肝試しかあ。面白そう! ひよりは本当に素敵な思いつきばかりするなあ。
[どこで?何時?]
そう問えば即座に返事が返ってくる。
[ひより:今日7時に、7丁目の幽霊屋敷に現地集合!]
うちは即座に、女の子が「はーい!」と言っているスタンプを送った。私のお気に入りのやつ。他の子もいろんなスタンプを押している。
丁度いいことに、今夜は秋のお祭りの日。別に中学生が夜に出かけていても何も言われない。ひよりはそのことも考えて、肝試しを今日にしたのかな。
夜7時。
うちはポロシャツに薄手の上着を羽織って、お気に入りのスカートで7丁目の幽霊屋敷に来た。
「紗衣、遅いよお!」
「ごめんごめん! 」
うちが一番来るのが遅かったらしく、みんな揃ってる。うん。ひよりに菜月、花音も茉美も、知子も梨々愛もだ。
「みんないい? ルールを説明するよ」
ひよりがパンパンっと手を叩き、流れるように説明を始めた。
まず、全員が別々の部屋に入って、その中でミッションをこなすこと。次に、ミッションがこなせたら部屋の中にあるノートの切れ端を持ってくること。最後にそれを、入り口にいるひよりに手渡すこと。早く出てきた人の勝ち。一番早く帰ってきた人には景品が、紙を持たずに帰ってきた人には罰ゲームがある。
大体こんな感じだった。
「じゃ、これからみんなに部屋を割り振るからね!」
ひよりはそう言って、幽霊屋敷の中に躊躇なく入っていく。うちらもそれに続いて、歩いていった。屋敷というだけあって、広い。
「紗衣はそこ。菜月はその隣ね。花音はそのまた隣。茉美は紗衣の部屋の向かい、知子はそこの階段の近くの部屋。梨々愛はその鏡の隣の部屋ね。みんな中にはまだ入らないで。せーので入ってもらうから」
流石はこのグループのリーダー。ひよりはテキパキと部屋割りを説明していく。
全員が部屋の前に立ったところで、ひよりは「じゃあ行くよ?」と言った。暗くてその表情は、よく見えないけど、楽しそうな声だった。
「よーい……ドンッ!」
その瞬間、うちは部屋の中に吸い込まれていった。




