97.聖女シオンによる報告書
小難しい話で申し訳ない。
【序論】
聖女シオン・アサカ(以下シオン)が神との対話に成功。以下の情報は対話した神からの情報を纏めたものである。
対話ができるのはシオンのみ、聖女エマ・グレース・コールマン(以下エマ)は不可能。また逆に、回復魔術を行使できるのはエマのみでシオンは不可能。
今回の報告は、この世界について、またそれに付随する邪神対策についてである。
なお、≪ ≫内の記載は、ミワ・ワタナベへと宛てられた神からの補足説明となる。
【要点】
・邪神戦だけであれば聖女はいなくてもよい
・邪神封印には聖女が必須
・邪神を完全に討ち果たすことは可能、ただし神の加護が世界から消える
【神、邪神とは】
高次の存在。低次元からは関知できないもの。
神とは、世界を作り、見守るもの。邪神とは、世界を自分の物としたいもの。
≪3次元の人間が2次元を見ることができても、2次元から3次元は分からないのと一緒。邪神というのは、人の作った作品を自作発言したい奴だ≫
邪神は定期的に覚醒するが、それは邪神の干渉力が強まるということである。そのため、覚醒直後、表出する力の弱い段階で再度封印を行う。
【聖女とは】
神の管理する他世界(邪神が知らない世界)の存在。そのため、邪神は手が出しにくい。
≪他作品からのクロスオーバー。盗作したい側からすると、構成要素があまりに違いすぎて、どう扱えば良いのか混乱する。時代劇の中に魔法少女が出るようなもの≫
聖女の主な役割は、世界を固定して邪神の干渉を防ぐこと。これが邪神の封印と呼ばれる。
≪ゲームのセーブ機能。そこまでの情報を固定させる。外部からは手を入れられなくなる≫
今回、異世界人でないエマが聖女として選ばれたのは、前聖女の要請による。
前聖女は「他の世界に解決を求めるのではなく、全てをこの世界で賄うべき」と主張した。しかし現在、邪神を分割封印しているため、神の力が不十分。
その結果、全てをこの世界の人間に、あるいは今まで通り全てを他世界の人間に、という調整ができず、それぞれの世界から一人ずつを選ぶ結果となってしまった。
≪すまない。エマだけにお願いしたかったが、シオンにも来てもらうことになった≫
【邪神の封印方法は】
回復魔術の一つに浄化と呼ばれる魔術がある。これによって邪神の干渉力を一旦なくす。
その後、世界を固定するために、ユタルまたはアルバーノ神殿で神へ情報を受け渡す。
邪神弱体化はエマの魔術に、交信はシオンに委ねられている。
【神との契約とは】
神の視点の代理人。クルスト王家の人間を中心に、世界を見守っている。
封印に神との契約者が必要なのは、邪神封印の情報を契約者を通じて得ているためである。
≪クルスト王家は、話の「主人公」≫
邪神封印をラヴィソフィ国が担っていたのは、クルスト王家とユタル神殿、アルバーノ大神殿を有しており、封印に懸かる一連の行動が容易いためである。
≪この辺り一帯を自由に行き来できるなら、一国である必要はない。が、人の世でそれは難しいから、国という単位を利用している≫
神との契約を聖女に肩代わりさせるのは、他世界から召喚していた今までは不可能だった。ただし、次回以降、聖女を完全にこの世界から作り出すことができれば、可能性はある。クルスト王家との調整を行うこと。契約はどちらか一方のみ。
【封印に聖女は必要か】
邪神の力を極限まで下げるための方法が、回復魔術の一つである浄化。
その後、弱まった邪神の干渉を弾くための、神との交信。
これらは聖女特有の力。
邪神の干渉力を下げるだけならば、厳密には聖女は必要ない。武力だけで邪神の力を下げること自体は可能。ただしより危険を伴う。また、戦闘時の回復が追いつかない可能性がある。
一方、世界を固定するためには、その情報を神へと引き渡す必要がある。神と交信できるのは、聖女(今回はシオン)のみ。
【邪神を斃すことは可能か】
可能。方法はただ一つ。世界を神の手の届かないところへ切り離すこと。神がこの世界から手を引くことである。
神の干渉をなくすことで、邪神からの干渉も行えなくするという手段になる。ただし、この世界は神の保護下から完全に独立し、発展も衰退も保証できない。
≪世界を見放す。無責任かもしれないが、私の知らないところでも、自分の子たちが物語を続けてくれるなら、寂しいけれど嬉しい≫
神が世界から手を引くことは、理論的には可能。ただし、現在の邪神の干渉を一度完全に退けるという条件がある。それが『邪神を斃す』という表現に当たる。
邪神を斃すためには、浄化で弱らせる以上に力を減らす必要がある。
【異世界人を元の世界に戻すことは可能か】
可能。実際に前聖女は元の世界に戻っている。
ただし、原則、戻る意味はない。異世界人はそのまま分裂し、元の世界で生活している。
聖女はその魔力を対価に、この世界の記憶を持ったまま戻る。ただし分裂人格を統合する関係で、少なからず記憶の混濁がある。
戻るのであれば、ユタル神殿またはアルバーノ大神殿で神に願うこと。
ただし、邪神を斃して(神が完全にこの世界から手を引いて)しまえば、神に言葉は届かない。必然的にそれ以前でなければならない。つまり「今まで通り邪神を『封印する』」「戻らないことを前提に邪神を『斃す』」「邪神に関わることを拒否していつでも戻る」という選択肢がある。
【聖女ではない異世界人について】
ミワは、シオンを召喚する際に巻き込まれた一般人である。神が選んだ者ではない。神の力が衰えていたことで、適性がないのに誤って呼ばれた。魔力がないのはその一例。
≪ミワ、私が触れてしまっただけの不憫な子。安全な場所に運んであげることもできなければ、生き残るための力もあげられなかった≫
帰還した前聖女によって紡がれた「この世界の話」は、前聖女の未来視によるもの。ミワは幸いにも、前聖女が記したこの情報を知っていた。一部空白があったため、神が補填している。
これによって彼女の生存確率が上がったと言える。
≪ゲーム内で自由に書き換えられる情報を、この世界のものに置き換えた。しかし、ゲーム全体の情報を上書きするには至らなかった。私の力が足りないばかりに≫
彼女も元の世界に戻ることは可能。ただし魔力がないため、この世界での記憶は全て消える。
【総論】
対邪神戦において、聖女は必ずしも必要ではない。ただし、攻撃力・回復力の両面で非常に厳しい戦いになる。
邪神の封印は、邪神を弱らせた後、ユタル神殿またはアルバーノ大神殿で神との交信、という手順となる。
邪神を完全に廃することも可能だが、通常の封印以上に労力を使う。また、世界は神の加護を失う。
以上
報告者:シオン・アサカ




