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RPGの世界で生き残れ! アラサー女の恋愛戦線  作者: 甘人カナメ
第四章 設定・小話 【第三章の時期のおはなし】
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89.ダリス・ファング

本日2話目の投稿です。


(2019.05.21)少しでも読みやすくなるように、加筆修正。大筋は変更ありません。



 レオナルドがフェイファーとの和平交渉の方針を固めた、その直後。

 メーヴ城外、ラヴィソフィ領のとある都市、とある宿の一室にて。

 二人の男性が向かい合って座っている。

 一人はレオナルド・ウォーレン・コールマン。

 もう一人はダリス・ファング。

 

「久しぶりだな、ダリス。30年程か?」

「せめて続けて礼を言え、馬鹿野郎。急に連絡寄越した割に感謝が見られねぇぞ」

「いやいや、ありがたいと思っているよ。ようやくラヴィソフィに来てもらえそうだからね」

「ロイがいなきゃ来てねぇよ」

「うーん、私が言うのもなんだが、ダリスも相当の親バカだなぁ」

「師弟愛と言え」

「そうかそうか。で、我が領の水の味は、リュークと比べてどうだい?」

「あそこほど美味い水は、近隣5ヶ国どこにもねぇな」

「そうか、それなら仕方がない。ウチが上から何番目なのかは聞かずにおこう」

「言ってろ。で、オレをわざわざ呼び出したのは、フェイファーとの話だろ? そこまで拗れてるとは聞いていなかったが」

「ああ、そうだったんだがね。相手をちょっと押し留めておいて欲しいんだ」

「今でも充分だろうが。ロイの手腕は聞いてるぞ」

「ただね。ちょっと中の警備を強くしたい理由があって」

「へえ? 和平交渉に関係するのかね?」

「相変わらず耳が早いね。トップシークレットだったのにどこで聞いたんだ?」

「情報源は秘密だ……と言いたいところだが、変に疑いが生まれるといけないから言っておこう。アンタの奥方だよ」

「ははは、ソニアの判断なら仕方ない。そうだ、その件が絡んでいる。比較的自由のきく傭兵隊から、信頼できる人間を呼び戻そうと思っている」

「で、オレがその代わりに隊に入れ、と」

「ダリスが入るだけで、戦力は桁違いに跳ね上がるからね。その上、牽制も挑発も暗躍も陽動もお手の物だろう。ダリスなら、フェイファー軍が絶対に動かないよう、確実に操作できる」

「そうか。それなら、ロイを呼び戻せ」

「おや。意外だね。彼の手腕は聞いている、んじゃなかったのかい?」

「だからだ。単純に、指揮系統が分かれるのはダメだろ」

「それだけかい?」

「オレの耳を舐めるなよ? 最近何やら()()()()()になってるだろ、あいつ」

「ああ。私としては、ロイではなく別の人間の方が選ばれると思っているが」

「なんだ、つまらんな。アンタがそう言うなら、勝負はほぼ確定じゃねぇか」

「人の心は分からんよ」

「じゃ、やっぱり、機会をやらんとな。あいつが孤児院を出てから初めて動いたんだ。オレの真似をする必要なんてない」

「親バカだなぁ」

「師弟愛だっつの。ああ、後はだな。あいつを悔しがらせたい」

「酷い親だ」

「厳しい師匠だと言え」

「ああ、厳しい親だ。では、正式に契約成立ということでいいかな。ロイとの引き継ぎもある、すぐにメーヴ城まで来てもらおう」


 こうして、ダリスはクルスト軍に加入した。




 ******




 軍事再編が行われた、その直後。

 メーヴ城、レオナルドの執務室にて。

 二人の男性が向かい合って立っている。

 一人はレオナルド・ウォーレン・コールマン。

 もう一人はダリス・ファング。 

 

「そんじゃ、ま、行ってくるかね」

「ダリスに対して大袈裟だが、言うだけ言っておこう。戦果を期待している。よろしく頼む」

「おう。あいつ、いい隊に育てたようだな。肝心のトコはヘタレてやがるが」

「うん?」

()()()()()、オレが水を向けても言いやがらねぇ」

「それはおそらく、ダリスの顔を見た途端に言う気が失せたのではないかな」

「どういうこったよ」

「今ですら、明らかに『からかってやろう』と分かるからね。水を向けたが故に避けられたか」

「つまらんな」

「後は、仕事を下ろされた不満が多少なりともあるのではないかな」

「はー、つまらんなあ」

「ダリスが危険な仕事に就くのなら打ち明けていただろうが……今回は、誰が見てもダリスにとって役不足の感があるからね」

「それでも出るのを決めたのはオレだ。仕事はするさ」


 こうして、ダリスはクルスト軍傭兵隊隊長となった。




 ******




 フェイファーとの和平交渉が結ばれた、その直後。

 メーヴ城、レオナルドの執務室にて。

 二人の男性が向かい合って座っている。

 一人はレオナルド・ウォーレン・コールマン。

 もう一人はダリス・ファング。 

 

「相変わらず人遣いの荒いこった」

「うん、今回は私も想定外だった。すまないな」

「おお、今度は礼があるか」

「さすがに、戦場に派遣して間もないのに『戻ってこい』というのは、私でも申し訳ないと思うよ」

「雇い主の要望だ、文句はねぇよ。多少はヤツらも鍛えて来たしな。オレはオレの仕事をする」

「ありがたいね。それで、次の仕事なんだが」

「ああ、あっちへ同行しろ、ってやつだろ」

「……一応聞いておこうか、情報源は?」

「奥方だ」

「うん、そうだと思っていた。私の立つ瀬がないなぁ」

「誰彼構わず言い触らしてるんじゃない、大目に見てやんな」

「ははは、彼女に文句を言うつもりは更々ないよ。ともあれ、今日はフェイファーの協力者たちに引き合わせる。先方はダリスのことを知っているから、ダリスが彼らを判定する場、だな」

「協力者をか? アンタがそう言うなら、白なのはほぼ確定じゃねぇか」

「人の心は分からんよ」

「よく言う。こういう時に味方を見極めるアンタの嗅覚、とんでもない勝率だろう」

「それが私の存在意義でもあるからね」

「ふうん? ま、突っ込んだことは聞かねぇよ。見極めるだどうだじゃなく、自分が見ている前でさっさと作戦練ろってことだろうが」

「ご名答。私はもうすぐ、エルフ王とウォーカー当主と長い会議に入るからね。その前に自分で確認しておきたい」

「お? 守護のエルフに武のウォーカーか。アンタも手足が増えたなぁ」

「手足ではないよ。共同戦線だな」

「そうかね。まあいい、ここから事態がどう動いていくのか、楽しみにしてるぞ」


 こうして、ダリスは斥候員としてハーミッドと共にフェイファーへ渡った。




「すまないな、ダリス。厄介ごとばかりを頼んで」


 執務室から外を眺めながら、レオナルドは旧友へ小さく礼を言う。




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