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RPGの世界で生き残れ! アラサー女の恋愛戦線  作者: 甘人カナメ
第四章 設定・小話 【第三章の時期のおはなし】
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87.見守り隊の日常 ――傭兵隊員と事務員の兄妹―― 後編



 事態は一転した。


 

 ロイさんとミワさんは、結局まともに顔を合わせないまま。僕たち傭兵隊も出陣となった。こうなるともう、見守り隊としての仕事は終了だ。本職に専念しなければならない。

 だけど、陣を張ったか張らないか、というタイミングで、ロイさんと第二部隊長のマリクさんが、城へと呼び戻されたんだ。

 隊長は第一部隊長のアシュカさんが兼任。厳しいじいちゃんで、腕は確かだという。皆困惑はしているけれど、思っていた以上に隊の混乱は少ない。

 だけど、隊長と第二部隊長には早めに戻ってきてもらいたい。あの二人は指揮官としてだけでなく、単体でも重要な戦力だ。僕みたいな下っ端でも分かる。

 

 それなのに、数日後。一人で戻ってきたマリクさんから、ロイさんが傭兵隊隊長から要人護衛隊長へと異動したと発表があった。

 傭兵隊の困惑は大きくなったが、「ロイさんの実力ならそれもアリか」という声も聞こえてくる。


(ロイさんは要人警護……ミワさんは軍師の部下……もしかして接点ができたか!?)


 僕の予想が当たったのかどうか。それは僕には分からない。




 ******




 事態は一転した。



 ケビンが出陣して、私も仕事に専念することになった。いや、それじゃ言い方がおかしい。最初から仕事の手は抜いていない。休憩時間の使い方が変わっただけ、ね。

 だって、隊長さんも当然出陣してるんだもの。城に残っているミワさんとは顔を合わせられない。見守り隊の活動は一時休止。――再開できるといいんだけど。


 と、感傷に浸っていたのに。

 今、事務室は静かな騒動に包まれている。傭兵隊隊長が要人護衛隊長となる、という手続きで、あちこちの部署が動き回っているから。

 そう、何故かすぐに帰城した隊長さんは、そのまま城に残ることになったの。

 そして、その護衛対象には、ミワさんも含まれている。


 見守り隊に属している事務員は、アイコンタクトで興奮を伝え合った。

 ああ、ケビンたち傭兵隊の見守り隊員にも伝えたいわ。伝える術がないけれど。



 普段、事務員はあまり酒場には行かない。だけどこれからは別。だって、いつも酒場でそれとなく観察してくれていた傭兵隊の見守り隊員がいなくなったから。不自然にならない程度に、それとなく、隊長さんとミワさんの動向を探る必要がある。

 その使命は早速実を結んだ。

 隊長さんが帰城したその日の夕方。早番事務の隊員から連絡があった。隊長さんとミワさんが食堂で一緒にいる。しかも仲違いはしていない様子。更に! 隊長さんが真っ赤になって慌ててた!! そしてミワさんも赤くなっていた!!

 そんな尊い様子が見られるなんて……居残り組の隊員は、城に残っていた幸運に感謝したわ。



 今までの数日は何だったの、と拍子抜けするほど、隊長さんとミワさんは一緒に行動している。どうやら文字の書けないミワさんを、隊長さんが補助しているみたい。何となく逆のイメージだったから、ちょっと可笑しい。

 そして、ある日、ある書類が提出された。

 隊長さんとミワさん、そして薬師さんの三人が、エルフの森へ仕事で出向く、という申請書。


 確かに、しばらく前から、奥とのやり取りが増えていた。特に奥様からの書類がいくつも届いていた。その内容にミワさんも絡んでいることは知っていた。今回の出張は、それに関連するものみたい。

 ――ミワさんと隊長さんが揃って出張ですって……!?

 事務員の隊員は色めき立った。「薬師くんが邪魔だわ」と小さくこぼす隊員までいる始末。いやいや、さすがにそれは言い過ぎだと思うの。

 そう、私たちは見守ることしかできない。薬師さんがいようがいまいが、見守る対象は変わらない。

 両片思いでジレジレなのか、隊長さんのアプローチにミワさんが頷かない理由があるのか、それは分からないまま。だけど、だからこそ、二人を見守るの。



 そう思っていたんだけどね。




 ******




 事態は一転した。



 私が……いや、私とケビンが見守り隊に入隊したのは「私たちにもしお姉さんがいたら、ミワさんみたいな人だったらいいな」という思いから。

 ミワさん、遠い遠い国から来たんだって。ここでの知り合いは誰もいない状態から、隊長さんと仲良くなったんだって。

 それがロマンチックよね、と言う隊員はいる。

 だけど、私の気持ちはちょっと違う。隊長さん以外にも、ミワさんを支えてくれる人がいるなら、それでいい。だけど今は隊長さんしかその候補がいないから、二人を見守っている。

 そんな思いを一度ぽろっと吐き出してしまったことがあるんだけど、同じ気持ちを持っている隊員がいた。彼女曰く「推しに幸せになってもらいたい……!」らしい。表現はよく分からないけれど、とりあえずミワさんに幸せになってもらいたい、という点は一致していた。どちらかというと、『ミワさんの幸せを見守り隊』ね、と笑い合ったの。

 そのままその話題は忘れてたんだけど。


 ミワさんが隊長さんと喧嘩したと聞いて、驚いたし心配した。二人がすれ違った生活をしていると知って、内心焦った。仲直りしていると聞いて、嬉しくなった。

 それは全部、二人を見守っていたから。

 そう言いながら、私は本当は、ミワさんを見守っていたんだ。そう、『ミワさんの幸せを見守り隊』だったから。


 その気持ちをしっかり自覚したのは、今日。


 実は、私、今、『二人を黙って見守り隊』を脱退するか悩んでる。

 ミワさんと隊長さんがエルフの森に向かった、今日、さっき。

 私、ミワさんを支えてくれる……かもしれない人、もう一人、候補を見つけたから。

 見守り隊の誰にも言えないけれど、もしかしたらもう、薄々感付いている人もいるかもしれない。

 傭兵隊とも、事務とも、少し離れた役職だったから、すっかり抜け落ちていたんだけど。今のミワさんは、()()補佐官。そして、今日見かけたあの人は、いつも私たちが観察している隊長さんと、同じ目をしていた。

 ね? 今、ミワさんには、最初に仲良くなった隊長さんの他にも、しっかり支えてくれる人がいそうでしょ?


 さあ、どうしようかな。

 事態が一転、しちゃったの。


 


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