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RPGの世界で生き残れ! アラサー女の恋愛戦線  作者: 甘人カナメ
第四章 設定・小話 【第三章の時期のおはなし】
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86.見守り隊の日常 ――傭兵隊員と事務員の兄妹―― 前編



 僕はケビン、傭兵隊第三部隊の隊員。

 双子の妹はアリス、城表の事務員。

 僕たち二人は、『ロイさんとミワさんを黙って見守り隊』の隊員だ。ちなみにこの隊、傭兵隊と事務員がメインの構成員である。

 

 ロイさんは傭兵隊隊長。城で鍛錬を行うこともあれば、お嬢様や斥候員の少年たち――ロイさんが自ら見つけてきた逸材らしい――と共に城外で魔物狩りをしたり。傭兵隊もそろそろ忙しくなるだろうけど、まだいつも通りの生活だ。

 ミワさんは城表のキッチン担当。お昼までが仕事時間で、午後は比較的自由にしている。最近は軍首脳部とのやり取りが少し増えているらしい。理由まではよく分かっていない。

 ともかく、そんな二人が会うとすると、午後から夜にかけてがメインになる。よく目撃されているのは、夜の食堂。酒場になった頃合いに、一緒に飲んでいる姿が見かけられると報告が上がっている。



「アリス、そっちは何かあった?」

「うーん、特には……ケビンの方は?」

「ああ、ちょっと気になる情報があってな」

「詳しく」


 僕たちは双子で一緒に暮らしているということもあり、いつの間にか、傭兵隊員と事務員の情報橋渡し役みたいになっている。


「ほら、昨日の朝、ミワさんに詰め寄られただろ、僕たち」

「ああ、うん、凄い勢いで話に食いついてきたアレね。フェイファーに聖女が現れた、って話だったっけ」

「そうそう、首都の方で貴族の一悶着があったアレ。僕も援軍に出てて、一昨日帰ってきただろ?」

「改めてお疲れ様」

「おうよ。で、ロイさんは僕たちより前、一足先に帰ってきてたんだけど」

「うんうん」

「一昨日の夜、酒場で、二人が喧嘩してたって情報が」

「えええっ!?」


 アリスが目を剥く。


「あの二人が……喧嘩……!?」

「僕はすぐ家に帰ってきたから直接は見てないんだけどさ。帰ってきた解放感でそのまま城で飲んでた人たちが目撃してる」


 ポカンと口を開けているアリスはなかなかマヌケだ。


「ケビン、本題とは違う失礼なこと考えたでしょ」

「はっ!? いや何も!?」

「……まぁいいや。傭兵隊で目撃者がいるなら単なる噂じゃないわね。しっかし、しばらく見守ってたけど、こんなこと初めてだわ」


 腕を組んで考え出すアリス。だからその格好、お前のない胸が強調――


「ケビン、やっぱり失礼なこと考えてるわね」

「そんなことはっ!」

「……次はないわよ。とにかく、隊長さんは普段温厚なんでしょ?」

「そうだな。陽気な性格だし、弱い奴には優しい。ただし修練中は鬼になる」

「そんな性格なら、ミワさんに根拠なく怒ることはないでしょうね」

「だけどさ、ミワさんだって普通に普通な性格してるだろ。適度に笑って適度にふてくされて適度にアンニュイになって適度にハイになって」

「ま、取り立てて怒りっぽいとか、そういう感じではないわよね」

「だろ? あの二人のどこに喧嘩する要因があるのか、見当つかねぇな」

「これは重要な観察案件ね」

「だな」

「明日、こっちの隊員に伝えておくわ」

「僕も伝えておく。で、何があっても出しゃばらない、だったな」


 僕とアリスは顔を見合わせて頷き合った。




 ******




 数日観察して判明したんだが、ミワさんはキッチンの仕事を辞め、軍部へと転職していた。もしかして、最近ミワさんが軍首脳部に出入りしていたのは、その関係だったのか?

 そうだとすると、傭兵隊隊長という要職にあるロイさんとの接点も増えるんじゃ……!?

 と、期待したんだけど。

 ミワさんもロイさんもそれぞれ忙しそうで、ちっとも出会わない!!

 そもそも、僕たち傭兵隊も、アリスたち事務員も、そろそろ本格的な戦争が始まるかもしれないということで、皆がバタバタし始めている。見守り隊員も本職が多忙になってきて、報告内容が薄いんだ。


 

 そんな中、アリスが重要情報を持ってきた。


「二人にとってはあまり良い状況ではないわね」


 開口一番、深刻な顔でアリスが呟いた。

 僕よりもしっかり者の妹が弱音を吐くことは、滅多にない。


「事務も忙しかったせいで、情報が遅れた。ミワさん、単に軍所属になっただけじゃなく、軍師補佐官になっているらしいわ」

「なんだその役職」

「簡単に言えば、軍師のマーカスさんの部下、って感じかしら」

「で、それの何が困ったんだよ」

「まず第一に、隊長さんとの生活時間が重なる」

「ん?」

「今まではミワさん、午後は自由時間だったでしょ? 今は普通にフルタイムなのよ。夕方、っていうか夜まで仕事」

「ふんふん」

「ケビン、傭兵隊は、夕方までが基本勤務よね?」

「まあな。修練は日の出ている時間が基本だし。最近は夜戦対策も増えてきてるけど」

「つまり、どちらも仕事で夜まで忙しい。自由時間が多かった頃のミワさんのスケジュールは、当てにならないのよ」

「今まではロイさんが時間を作れば会えていたのが、両方が予定を合わせないとダメなのか」

「そして、第二の問題。ここまで忙しくなると、夜の飲み会は?」

「普通に減るだろうな」

「そうなのよ。実際、ここ数日、酒場に二人は現れていないわ」


 そういやそうだな。僕たちの情報でも、ロイさんは一日中動き回っている。


「ということは、よ? 二人は喧嘩してから、まともに顔を合わせてないんじゃ?」

「あっ!?」


 そういやそうだ!! 喧嘩の原因についてばかり気を取られてたせいで、その後どうなったかまでは考えてなかった!


「せめて二人で話をして欲しいな」

「喧嘩したその場で仲直りしてくれたのを期待するしかないわね」


 今日の晩飯は、ちょっと味がしなかった。

 

 


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