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RPGの世界で生き残れ! アラサー女の恋愛戦線  作者: 甘人カナメ
第三章 ゲームのストーリーよ、さようなら
67/136

67.本来の会談にようやく戻ったよ



 はあ、と深い溜息をついたのは、シヴァとハーミッド。


「シオンが行くなら私も行く。私が行くならハーミッドも付いてくるだろう」

「うん、それが目的」

「……シオン……」


 椅子に座ったままくるりと後ろを仰ぎ見て、紫音とシヴァが言葉を交わす。

 や、紫音、簡単に言ったけど、聖女と軍トップとその右腕がこちらの本陣に遊びに来るとか、めちゃくちゃなこと言ってない?

 渋面を作って頭を抱えているシヴァ――気持ちはお察しします――を放置して、もう一度こちらへ向き直る紫音。


「美和ちゃん。あ、いや、これを聞くのは美和ちゃんじゃないか。

 クルストの司令官様。

 念のため聞いてみますが、ユタル神殿を我々フェイファーに譲ってもらうことって、できますか?」

「それは無理な相談ですね」


 レオナルド様は苦笑して即答した。

 

 ユタル神殿はメーヴ城よりも更に国境から遠い。国境付近の領地奪い合いでも相当大変なのに、そんなことはまず無理でしょう。

 それに、邪神を封印するキーとなる、大事な神殿。ラルドがこちらにいるのだから、フェイファーに渡すのは危険だ。

 

 私でも分かる。色んな意味で無理だよ、紫音。

 

「うん、ですよね。

 じゃあ、あた……わたしを含めた使節団が、一旦メーヴ城にお世話になって、それからユタル神殿を安全に訪ねることは、認めていただけますか?」

「ふむ」


 今度は即答せず、腕を組んで顎髭を撫で始めるレオナルド様。


「ひとつお聞かせ願えますか、聖女殿。今回の交渉の内容は、今仰ったことだと考えてよろしいのか?」

「はい、主にそうですね」

「シオン! あなたが交渉を始めないでくれ!」

「あ、ごめん」

「……コールマン殿。一旦、この双方の女性に黙っていてもらう訳にはいかないだろうか?」


 頭を抱えていた手だけは外したものの、渋い顔は隠さないまま、主に紫音に対して釘を刺している。

 剣をぶら下げたままのハーミッドの代わりにか、シヴァ自ら椅子を下げに来て、そのまま紫音をテーブルに押し戻す。


「ミワ、君もだぞ。まったく、勝手に色々と発言して」


 紫音を目で追っていたら、私もマークに首根っこを掴まれて席へ戻された。


「ごめん」

「後で説教だ」

「すみません」


 覚悟の上ですよ。あ、いや、でも、目が据わったマークはやっぱり怖いわ。ごめん。




 ******




 一騒動が落ち着き、ようやく、当初の目的である、交渉が始まった。

 中心近くに改めて席が設けられ、レオナルド様とマーク、シヴァとハーミッドによる話し合いが続く。


 私と紫音は後ろへ下げられ、完全に口を挟めない。

 でも、私たちの親交が双方に伝わったためか、当初のピリピリ感は少し和らいでる気がする。

 というか、紫音がちょっと口走っちゃっていたからか、予想以上に話がスムーズに進んでる気もする。



「ミワさん」


 すっと私の横に並んだケインが、視線を前に固定したまま、小声で話しかけてきた。


「彼女は、本当に本物?」

「少なくとも、服とティアラは本物。あっちの国内でも本物と認識されているみたいだね」

「回復魔術が使える人間が他にもいたということですか?」

「分からない。私たちが元いた世界では、魔術なんてものはなかった。

 紫音がこちらに来た時に何らかの力を得たのか、それとも何の力も持たないままなのか、今はまだ断言できないかな」


 私は未だに魔術が使えないけれど、紫音も同じだとは言い切れない。

 

「じゃあ、フェイファーがシオンさんを聖女と認定したのは……」

「神殿に現れたから、って言ってたけど」

「そこが詳しく知りたいですね。どこの神殿に現れたのか。

 今のフェイファーで聖都とされている、アルバーノ大神殿に現れたのだとしたら」

「したら?」

「神の御使いである可能性は高くなります」


 え、そうなの?


「あの神殿の祭壇は、神に連なる聖女か、神と契約したクルスト王家の者しか触れられません」


 そういえば、ゲーム中でも神殿の祭壇まではプレイキャラを動かせなかった気がする。


「どちらにせよ、邪神に抵抗するにはティアラの力の解放が必要です。

 シオンさんとエマさん、両者をユタル神殿へ向かわせるのが最善だとは思いますが」

「が?」

「フェイファーがどう出るか、ですよね」


 ですよねー。


 ケインと並んだまま、中心の4人を眺め続ける。


「そうえいば、ケイン。ラルドの正体は、今、どの程度の人が知ってるの?」

「王子本人と、エマさんには、先日の軍略会議の後に伝えました。

 ……それでも、僕に対する態度が臣下に対するものにならないのは、頭が痛いところですが」

「しょうがないじゃん、実際に幼馴染みなんだし、目覚めて記憶がない間もずっと『友人』だったんだから」


 そうだね。その悩みはね、私は画面越しに見てきたから。

 でもごめんね、それはケインとラルド自身が乗り越えなきゃならないんだよ。私に言えるのは、これくらいの茶々だけ。


 私がゲームプレイ時に、ロイを『頼れるアニキ』と認識していたように。

 今の私は、ラルドやケインからしたら、いいとこ『得体の知れない姉さん』、下手すると『お節介な年上女』くらいだからね。


 エマちゃんみたいに、自ら私に飛び込んできてくれるなら相手をするけれど、そうじゃないなら、私は年上組と戯れることにするからね。


 

 


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