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RPGの世界で生き残れ! アラサー女の恋愛戦線  作者: 甘人カナメ
第三章 ゲームのストーリーよ、さようなら
62/136

62.なんで今まで気付かなかったんだろう……!



 たぶんね、たぶん。私が好きなのはマークなんだけど。

 ……自信ない……。


 自分の気持ちなのに自信ない、なんてね。

 もうちょい、もうちょいで吹っ切れる、気はするんだけど。


 何て言うのかなー、今は仮説が立てられた状態、っていうか。

 仮説を立てたら次に検証、それから結論なのだよ。

 今はまだ、結論づけるには早すぎるというか。


「だーっ、こんなんだから頭でっかち屁理屈屋だって言われるんだよ!!」


 まぁね、恋愛下手になったのは別としても、学生時代からこんな面倒臭い性格ですよ。

 仕方ない、これが私なんだから。

 そして、そんな私を笑って相手してくれたのが、紫音だったんだから。

 そして……そんな私をのんびり待つと言ってくれたのが、マークで。


 そういえば、夢の中の紫音から「これからどうしたいの?」って言われたっけ。


(これから、ねぇ)


 どうするにしても、やっぱり生き残らないと。

 そのためには、会談を是が非でも成功させないと。



 フェイファーの目的が分からないから、このままでは和平交渉は難しいと思う。駆け引きの情報がないんだから。

 だからソニア様は、この近辺では存在しないアロマオイルを、交渉の材料にしようとした。ここにしかないもの。それは強力な武器だ。

 話しぶりからすると、生産権は渡さないように思えるけれど。貿易品として双国の経済連携を目指しているのかな。


 ゲーム内の様子や、こちらに来て見聞きした情報からすると、ビエスタ国とフェイファー国との間に国交はなさそう。

 国交がない状況で、どれくらいの交渉ができるんだろう。

 

 国王に協力を要請しているとは言うけれど、そこまでの国の大事、いくらなんでもすぐに決められるとは思えない。

 それとも、辺境伯としての権力をフルに使って、レオナルド様やソニア様が何とかするんだろうか。


(せめて、向こうの目的が分かればなぁ。こっちに有利に話を進められるかもしれないのに)


 フェイファーには、既に聖女がいる。

 ゲーム通りにエマちゃんを聖女として狙っているのであれば、聖女の存在を国内に明らかにするのは逆効果だ。軍の士気が落ちる。

 それならやっぱり、今のフェイファー軍の目的は、別のところにあるはず。

 

 落ち着いて考えろ。思い出せ。

 ゲーム内の情報で、使えるものはないか。



 フェイファーは聖女を捜し求めていた。

 そして、1年ほど前にエマちゃんの情報を得て、ビエスタ国への進軍が決定される。

 

 戦いを仕掛けてでも聖女を欲しがった理由とは。

 ゲーム内で明言はされていなかったけれど、いくつかの情報がある。


 ひとつ、敵将であり皇子であるシヴァが、聖女は皇国にいるべきである、という意識を持っていたこと。というより、皇室全体がそういう考え方を持っていたこと。

 ふたつ、現皇王が軍事政治主義だったこと。

 みっつ、過去クーデターを起こした時に復活した邪神は、時の聖女とシャイニー様の力をもって分割封印できたこと。

 よっつ、今もなお、邪神の半身という爆弾が、国内にあること。

 いつつ、現在のフェイファー皇国は、周辺諸国との関係が不安定であること。


 こう考えると、皇国の思惑の予想がつく。たぶん、だけど。


 聖女が他国で見つかった。しかし、その他国――ビエスタ国とは、そもそもが緊張状態にある。

 聖女による邪神封印は行いたい。が、聖女を他国に取られたままなのは許せない。

 ここで問題なのが、現皇王の軍事主義。自国へ聖女を迎えるために、外交ではなく、武力で解決しようとした。

 結果、ビエスタ国へは、邪神封印の協力要請ではなく、聖女を奪うための宣戦布告が行われた。

 

 ……こんなところか。



 さて、それじゃあ、実際に聖女を迎えたフェイファー国は、この後どうするか。


 ゲーム内では、フェイファーが何か行動を起こす前に、ラルドたちがエマちゃんを救ってしまった。

 それでは、ラルドが来なかったら?


 アルバーノ神殿のティアラを聖女に授ける。そして聖女を国内に迎えたと公表する。それによって、周辺諸国への牽制を行う。

 そして聖女には、封印の弱まってきた邪神を再封印してもらう。

 そのために必要なのは――?

 

 過去の封印と同じことをしたいなら、聖女の力とシャイニー様の力が必要。

 現在、シャイニー様はビエスタ国首都にいる。おいそれと手は出せない。

 では、もう一方、聖女の力を解放するには?


「あ……ユタル神殿」


 そうだ、ユタル神殿じゃないか!


 メーヴ城南西にある古い神殿。

 ここは、クルスト王家が神と契約を交わした場所であり、聖女のティアラの力を解放するのに必要な場所でもあった。

 ゲーム内でも、ティアラを手に入れたエマちゃんたちが、神殿で力を解放していた。それによって使える回復魔術が増えるんだ。



 今、フェイファーには聖女がいる。それなら、同じ事を考えるんじゃないの?

 聖女の力を解放させて、国内の邪神へ対抗しよう、って。

 あわよくばビエスタ国にある邪神も再封印して、恩を売ろう、とか。


「あああ、マーク、マークに意見を聞きたい」


 私だけじゃ、どうしようもない。

 軍師補佐官は軍師じゃない。参謀でもない。


 会談を成功させなきゃ、先はない。

 成功させようと奔走するマークに、私は、私の知識は、役に立てるのかな。



 パン! と両頬を叩いて、立ち上がる。

 もう一度、深呼吸。


 最優先事項は、これ以上悩むことじゃない。

 早急にオイルを完成させて城に戻り、思い出した事柄を、マークに伝えること。



 ――あ、でも、せっかくの機会なんだから、トニーさんの言う通り、この清流の空気をオイルに閉じ込められないか、相談してみよっと!

 それが成功すれば、それこそ、ここにしかない唯一無二の品になる。




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