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RPGの世界で生き残れ! アラサー女の恋愛戦線  作者: 甘人カナメ
第一章 ゲームの世界へ、こんにちは
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18.城下町へお出かけだ!



 休日。待ちに待ったメーヴ城下町へ出かける日。

 着るものはレオナルド様に支給された服しかないから、いつも通り。今日の予算が許せば、多少の洋服と、鞄や財布なんかを買いたいけれど……欲張らない、欲張らない。

 あくまで街並みを見て回るのがメインだからね。

 

 マーカスへ外出許可をもらいに行く時は、ロイが同行すること、アロマオイルの市場調査に行くこと、を説明した。後者は建前に近い。実際は市場調査なんて大げさなことをする予定はなく、何かいい物があれば儲けもの、くらいの気軽な気持ち。

 案の定、後者が決め手となったようで、多少渋い顔をされながらも思ったよりすんなりOKをもらえた。

 プレゼンを成功させた頃の私、グッジョブ。



 城表、徒歩用通用口前の広場で待ち合わせたロイは、胸元まで寛げた半袖の開襟シャツに、ざっくりとしたジーンズ姿だった。初めて見る格好。


 そうそう、この世界とゲーム内で違うこと。

 ゲームではそれぞれのキャラクターは着た切り雀なんだけど、こっちではもちろんそんなことはなく、皆ちゃんと着替えている。

 ゲーム内と全く同じ服を着ていることもあれば、似たようなニュアンスの服に変わっていることもある。一部、毎日同じに見える人もいるけれど、同じ服を何着も持っていて替えの服にしているみたい。制服みたいなものだね。


 今日のロイは、今まで見てきた服装とはがらりと変わっていて、普通に街並みに溶け込むような兄さんだった。そりゃそうか、傭兵隊の格好をするわけにも、修練時のヨレた格好をするわけにも、帯剣するわけにもいかないよね。


「一応は武器を隠し持っているから安心しな。体術も一通りこなせるからな」


 うんうん、さすが隊長。さすが我等のアニキ!

 それに、ラフな格好とはいっても、ガタイはいいし醸し出す雰囲気は一般人とは明らかに違うし、なんなら服の隙間から傷跡が見えているし。そこらのチンピラくらいなら(はだし)で逃げ出すに違いない。

 知っているけれど知らない街を歩くには、こんなに心強い同行人はいないよ。


「それじゃ、今日はよろしくね!」


 ウキウキしながら、城の門をくぐった。




 ******




(ほわーーーっ! これこれ!! これよこれ!! あの景色も、あっちの店も、この辺走り回ってた時に見たやつ!)


 城で慣れたとはいえ、やっぱり新たなマップ……じゃない、新しい景色は興奮する。

 キャスパー王子に城まで連れてこられた時には、人通りの少ない馬専用道だった上に、城門の近くに来るまで寝ちゃっていたから、実質これが初城下町。

 目がキラキラしていたのだろう、ロイが嬉しそうに、


「そんなに喜んでもらえるなら、連れてきたかいがあったな」


 と、目を細めてくれる。


「何か買いたい物があるのか? 連れて行ってやるぞ」

「一般的な服とか、靴とか、鞄とか、雑貨とか。身の回りの物、レオナルド様に揃えてもらったものしか持ってないから」

「あぁ、それでいつもの格好なのか。俺と出かけるくらいじゃ洒落た格好する必要がないのかとガッカリしていたんだが、安心した」


 くくくっと意地悪そうに笑うものだから、思いっきり小突いてやった。

 いくら引きこもりがちな生活をしていた私だって、外に出かける時くらい、きちんと身なりを整えますよ! 社会人舐めるな!

 私の攻撃にさほどダメージを食らっていない様子なのは想定内! ふん!



 予算を鑑みて、いわゆる『布の服』『布の帽子』『布の鞄』的な装備アイテム――もとい、身の回りの品を数点購入。ブルフィアシリーズではそんな名前のアイテムはないけど、そこはイメージ。要はファストファッションですよ。

 やはり城よりは物価が低い。見て回るだけのつもりで来たけど、自分の趣味に合ったものを予想以上にリーズナブルに買えてほくほくだ。


 必要物品を揃えた後は、のんびりブラブラと街を巡る。雑貨屋を覗いてアロマオイルを探したり(やっぱり存在しなかった)、市場を覗いて食材を見てみたり(朝ご飯のメニューを何とか増やしたい)、ラルドがイベントを起こしたお店を覗いてみたり(ゲーム通りに威勢のいいおっちゃんがいた)。

 お昼はロイお薦めの大衆食堂。屋台で買って食べ歩きでも良かったんだけど、さすがに止められてしまった。奢ってくれるというので、ありがたくゴチになる。

 そういったぶらぶら街歩きの間、ロイのリクエストに応えて日本の話を色々した。街並みの違いや似ているところ、食べ物の話、文化の違い。エマちゃんの時とは違い、異世界から来たという前提を知っている相手だから、幾分気軽に話せる。

 どんな話題でも興味深そうに聞いてくれるロイは、傭兵という荒々しい職業だということを忘れてしまうほど、穏やかに笑っていた。


 

 昼食後も街を歩く。さすがに城表以上に広いし、見る場所が尽きない。

 次に来た時にはどんなものを買おうかな、と店を覗いて回っていると、一軒の店先でロイの足が止まった。


「ミワ、ちょっとここに寄ろう」


 ちょっと素敵なレディース服の店だけど、臆した様子もなくスタスタ入っていってしまう。


「あら、ロイさん! その節はお世話になりました!」


 カウンターにいた女性がパアッと顔を明るくして挨拶をしている。

 おぉ、もしや、このお姉さん、ロイの……?


「生憎、主人は今外出していて。ごめんなさいね、あの人もロイさんにご挨拶したがっていたんだけど。

 それで、今日は何か?」


 あれ、ロイの恋人かと思いきや、結婚されていたらしい。

 そういえばゲーム内では、ロイの恋人の描写はなかったな。恋人関係が確実に判明していたのは、ラルドとエマちゃん、それから……。


「あ、もしかしてそちらの方に? やだぁ、ロイさんが女性を連れているなんて街中が驚いちゃうわよ!?」


 私の思考は、お店のお姉さんによって遮られた。ロイも苦笑している。


「俺は珍獣か? 既に街を歩いてきているから、そんな驚かれないぞ。

 でも半分は当たりだ。彼女に何か見繕ってほしい」

「うええぇ!?」

 

 変な声が出た。

 ちらっと見た値札によると、ここで服を買ったら、完全に予算オーバーになるんだけど!?

 しかも、普段着にはできなさそうなお洒落デザインじゃないですか!

 アワアワしている隙に、お姉さんに有無を言わせず拉致されて、着せ替え人形にされてしまった。

 試着室から声を上げる。


「いやいや買えない、私今日はもうお金ないんです、お姉さん。

 ロイ! もう今日はウィンドウショッピングのつもりなんだけど!」

「安心しろ、ここでの買い物は俺の奢りだからな」

「さっきお昼奢ってもらった!」

「次に一緒に街に出る時に着る服だ、俺の我が儘だから俺が出す」

「訳分からん!」

「デートの時くらいお洒落しろって」

「デートじゃないでしょ!?」

「俺がデートだと思ってるんだからデートだよ」

「だー、ホント訳分からん!!」


 フフフッとお姉さんが笑い、試着室の向こうでもロイが声を上げて笑っている。


 いい加減にしないと勘違いしちゃうでしょ!

 もう変に期待を持つのは懲り懲りなんだってば!

 


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