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RPGの世界で生き残れ! アラサー女の恋愛戦線  作者: 甘人カナメ
第一章 ゲームの世界へ、こんにちは
14/136

14.QOLって大事だと思う



 思いついたこと。新しい物ができるかもしれないこと。

 それって、結局世界に介入することだよね、とは考えたんだよ。一応ね。


 考えたけどさ。前にうじうじした時に一度開き直ったんだよ。私はこの世界を楽しむんだって。理屈ばっかり捏ねてるとどうしても動けなくなるんだもの。

 それなら、ここでの私のQOL――クオリティ・オブ・ライフ、つまり生活の質――を向上させるのも、楽しむ一部じゃないの?


 で、その裏付けを取っていたところだったのだ。


 

「まず、そもそもの目的は、私の生活の質の向上です」


 プレゼンテーションソフトのスライドもなく、概要を記した書類もない。しかも事前のチェックもなし。どうやって話をしようか、即興で纏める。


「突然ですが、私はマッサージが好きです。してもらうのが一番好きですが、自分でも行います。ここに来た今も、お風呂の中や寝る前のマッサージは習慣として行っています」


 人にやってもらうのは難しくても、自分でヘッドスパや手足のマッサージはできる。

 特に脚ね。立ち仕事に変わったから、どうしてもむくみがちになる。


「そのまま揉んでもいいんですが、オイルやクリームを使うマッサージも好きです。ですので、この世界、この国に、マッサージに使うオイルはあるのかを聞き込みました。

 すると、上流階級の女性は使うものの、一般には浸透していないということが分かりました。自分で揉みほぐしたり家族のマッサージをするのに、わざわざオイルは使わないんだとか」


 女性陣に聞き込みをして判明したこと。一応、マッサージ用のオイルは存在はしているらしい。ただし値段は不明。貴族しか使っていないんだし、めちゃくちゃ高価な可能性もある。

 マーカスは黙って聞いてくれている。


「さて、少し話は変わります。マーカスさん、そのコーヒー、少し香りが甘く感じられませんか?」

「菓子で似たような味のものを食べた覚えがある。そういえば、お前が担当した朝食のデザートもか」


 うんうん、話が早い。

 というか、杏仁豆腐もどきのこと、よく覚えてたね。何日も前のデザートじゃん。


「これ、ある植物のエッセンスが入っているんです。香りがいいから、お菓子によく使われますね。

 私は今、これ以外に、植物の香りや成分を抽出したエキスが存在するのか調べようとしています」

「それとオイルとを合わせるというのか?」

「そう、目指すはそこなんですよ! 香りのあるオイルでマッサージして疲れを癒やす。これが生活の質の向上に繋がります!」


 要は、アロマオイルってこと。

 私もそこまで詳しいわけじゃない。マッサージしてもらう時に色々説明してもらったけれど、名前はともかく効能まではなかなか覚えられなかった。

 ざっくりとした効能まで覚えられて、自宅でも使っていたのは、ミント、ラベンダー、レモングラス、シダーウッドくらいか。

 そこまでは求めないけれど、何かしらの香りがあるだけで気分が変わるはず。

 最悪、軟膏の基剤にバニラエッセンスをちょこっと入れるのでもいいかな、くらいのもの。


「上流階級の方が使うオイルが分かればいいんですが……私の立場では調べるのは難しいので、自分で作れないかと考えたんです。自分用に作る分には少量でいいですし、金額もそこまで考えなくても、自分で折り合いをつけられます。私の給料で難しそうなら諦めればすむ話なので」


 腕組みをして目を瞑ったマーカス。

 少し考えて。スッと目を開けた表情は、そこまで厳しくなかった。

 組んでいた腕を解き、カフェオレを飲んでから口を開く。


「物としてはまだまだ未知数だな。書類に纏めるまでではない。だが、面白い試みではある。戦で不安になる民の精神安定剤としても需要はありそうだ。

 お前が何を考えて動いているのかも判明した。それなら、このままやってみればいい。

 もっと具体的な話に詰めてから、再度話を持ってこい」


 

 あれ? もしかして、いやもしかしなくても、完全に軍資金確保のつもりで話を聞いてたね?

 私が不用意に「商売になるかも」って言ったから?

 ま、いいか。行動を疑われ続けるのも疲れるし、これで堂々とあちこちで調べ物ができる。



「さて、思った以上には有意義な時間になった。ここでの支払いくらいは私が持とう。

 お前は自分の仕事を進めるんだな。いい報告を待っている」


 チョコを口に放り込んでから、席を立つマーカス。


「あぁ、貴族が使っているオイルの話だが。私からレオナルド様に話をしておいてやろう」

 

 え? なになに、マーカスが優しい!?


「調子には乗らないことだ。軍資金が絡まなければ、レオナルド様の手を煩わせるような真似はしない」


 また眉を寄せた顔に戻って、食堂を出て行った。

 うーむ、私、ここに来てから一度も、マーカスが笑った顔を見たことがないぞ? そりゃあ、ゲームでも難しそうな顔をしていることが多かったけどさぁ。

 


 ――そうだ、ゲーム。

 新しい物を作り出すこと自体は開き直っていた。自分で楽しむための物だし、って。

 でもマーカスは、できれば新たな資金源にしたいと思ってる。

 えーと、軍資金に関わるような話って、セーフだろうか、アウトだろうか。

 私、戦争には口を出さない、ってレオナルド様とマーカスに啖呵切ったよね。がっつり軍に絡んじゃうわけだけど。

 


 …………。


 ラルドたちが充分な装備を調えるための資金! きっと大丈夫!!

 この先に起こる出来事の話は全くしていないし、そもそも軍資金として使えるだけの商品になるかどうかも分からないよね! うん、ぎりぎりセーフ! たぶん!



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