勇者パーティーで邪魔な影
二時間後にまた投稿します。誤字脱字ありましたらすみません。
「愚者の一撃」
現代の地球には魔術師というのが存在している。
魔術師は魔術回路を体に刻み魔術を発動する。進化する前の魔術は決まった詠唱をし、魔術回路に魔力を流して決まった魔術しか使えなかった。
それを天才魔術師、影縫銀次は個々に合わせて進化させることで、自分の個性にあった魔術を発動できるようになった。
ちなみに影縫銀次は皆から殺されないように、視線から隠れたい一心で影の魔術に適する進化をした。結果は攻撃性の高い魔術になってしまったが。
影縫銀次の大規模魔術で平和な裏で暗躍し、戦場で戦っていた魔術師達は魔術師生命を潰され、魔術師の半分は再起不能になった。
魔術師達を再起不能にした彼。
大多数の元魔術師、それらの家族に恨まれた彼は魔術師達の中でこう呼ばれている。
『愚者の銀次』と。
✕✕✕
季節は夏。日中の暑い中俺はアイスを食べながらテレビを見ていた。
夏はやっぱり嫌いだ。暑いし湿気凄いしアツアツのムレムレだから。
魔術師戦争から数年が経った今、俺は多額の金を得たので家で妹と二人でニートをしている。
「あー涼しー。やっぱ影の中は丁度いい涼しさだ。もう日本ってなんでこんなに暑いのかねー。なぁ妹、アイス持っていてくれない?」
「銀次はなんでそう冷蔵庫まで歩くのを面倒くさがるかなー」
そう言いつつ、妹の麻耶は冷蔵庫に向かう。
「お兄ちゃんって言えよ。俺は妹に構ってほしいんだ」
俺は魔術で影の中に入り、顔だけ出してテレビを見ている。
家の中には妹だけしかいない。
友達も今は二人ぐらいしかいないから誰も遊びに来たりはしない。魔術戦争は俺が『愚者の一撃』を使い、全ての勢力が降伏した。
それ以来魔術師同士の争いは起こっていない。魔術師に依頼をする人間もいなくなった。俺のせいで魔術師は路頭に迷っている。
俺は恨まれる機会が毎回のようにある。妹も狙われるが、俺と同じように魔術の天才だ。そこら辺の魔術師にやられることなんてない。
「あー暇だ。面白いことが起きてほしい、なんつってな」
そう言った瞬間、影よりも二回りは大きい魔法陣が現れた。
「なんだ?魔法陣?どこからだ」
急いで影から抜け出して魔法陣から離れようとしたが、まるで影のようについてきた。
「お兄ちゃん!」
麻耶が俺の方に走ってくる。
「おいなんだこれ、影武者!」
十八番の魔術。影魔術を発動。
発動後、俺の身体は光に包まれた。
✕✕✕
一年後。
異世界スカンディック。そこには勇者がいて、魔法使いもいるし僧侶もいるし盗賊だっている。俺は見たことないが魔王もいるらしい。
「おい、アキト。お前は勇者だ。食事中に音を出して」
「なんだよ、また勇者なんだからってグチか?それは聞き飽きた、やめてくれ」
一般論を言おうとしただけだが。
それに聞き飽きたも何もまだ俺とお前はパーティー組んでから三日目だぞ?俺だって言う気はあまりないんだが、食事を食べる時にくちゃくちゃしたら女にも逃げられるんじゃないか?
「ギンジ、君はあくまでこのパーティーでは傭兵だ。リーダーで勇者のオレに口出しするのは間違いだと思わないか?」
「そうなのか?俺は仲間で他人の駄目な所を指摘することはいいと思うぞ」
この勇者は特に駄目な所が多い。まず食事中くちゃくちゃ音を鳴らする。戦闘時には攻撃を一回一回全力で剣を振る。そのせいで体力を使うわ無駄に突っ込む。魔法は下手くそ。一年前にこの異世界に来た俺が初めて使った魔法より下手くそ。光魔法が得意なくせに光を灯すぐらいしかできない。それなのに鍛錬を積まない。剣の練習もしない。雑魚の魔物にすら苦戦する。勇者は勇者として特別な力を与えられているから一般的な冒険者の軽く五倍は強いのにどうして魔物を倒す適齢期である十六歳で倒せない?本当にこいつ勇者かって疑うほど弱い。でもステータスを見る限りではちゃんと勇者、最初にしては高ステータス。
まだまだこいつの悪い所は沢山あるが、とにかく強ければ俺はある程度許すんだ。強くないならマナーぐらい守れって話。
早く魔王を倒して地球に帰る情報が欲しいんだ。早く強くなってもらわなければ困る。
✕✕✕
勇者は個性的だが、勇者パーティーもなかなか個性的だ。
俺の目の前では今はゴブリン一匹と三人の勇者パーティーのメンバーが戦っている。
「影魔術、影鳶」
俺は周りの警戒のために影から作り出した鳶で周りの森の中を見張らせている。あ、ゴブリンいた。影鳶で攻撃しておこう。
うむ、やはり弱い。影鳶の体当たりでやられる。
「ファイアーアロー!あ、失敗したわ。ミレイ!そっちいった!」
魔法使いであるアーニャはゴブリンにファイアーアローを発動したが成功しなかった。今日一回しか魔法の成功見てないぞ。
ゴブリンは俺達の方に突っ込んできた。
「分かっている!デコイ!私がひきつけてる間にアーニャとアキトとギンジはこのゴブリンを!あぁん!」
お前弱すぎるだろ。お前騎士候補なんだよな?なんでそんなに弱いんだよ。ゴブリンの棍棒でやられるって弱すぎるだろ。
「わ、私もう魔力切れだわ。何回も魔法使ったせいだわ」
お前失敗しかしてないだろ。失敗で魔力取られるのかよ。何回も魔法使ったとか言ってるけど一回しか発動してないから。しかも外したよな。
「オ、オレは負けない!くそ!オラァあああ!」
勇者アキトは剣を振っても全然当たらなかった。だがそれでも諦めず剣を振っていた。ゴブリンを十分ぐらいで彼らはやっと倒していた。
「おい!ギンジは何やってるんだよ!」
お前らが何をやってるんだ?お前ら魔王討伐メンバーだよな?これならゴブリン三体の方が絶対強い。
そして俺はお前らが遊んでいる間に他の魔物が来てないか見張っていた。というより処理していたから。それにお前らのレベル上げだろ、俺が倒してどうするんだよ。
「レベルを上げるには魔物を倒すことで経験値を得られる。それを貯めることでレベルアップするが、魔物を殺す時に戦いに参加した人間が経験値を得られる。ちなみにさっきの戦いではアーニャは何一つ攻撃が当たってないから経験値は入っていない。ミレイはダメージ受けただけで攻撃当たってないから経験値なし。アキトが倒したことでアキト一人が経験値を総取りした。アキトは今すぐにでもレベル上げをしていち早く強くなってもらわなきゃ困る。俺のレベル上げは今は必要ないからな。だから手は出さなかった」
「だからって何もしていないのはどうかと思うけど?」
「周りに敵がいないか確認していた」
「どうだか、ただサボっていただけじゃないの?」
こいつなかなか目がいいじゃないか。確かに俺は他の魔物を倒していたが、全力でサボっていた。こんな魔物が弱い場所で本気を出すのが馬鹿馬鹿しいからな。
「アーニャ君、私のご主人は真面目にやっていたよ。このジェントルチワワが保証しよう」
「まあ、チワワさんが言うなら許すわ」
結局最後は俺が悪いことにしてるじゃねぇか。
俺のことを庇ったのは自称ジェントルの見た目は柴犬、名前はチワワだ。
この犬は魔法を使える。火を吹けるし水出せるし風も起こせるちょっと変わった犬だ。
「ミレイ!大丈夫か!?」
そうだった、ゴブリンに弾かれたミレイを忘れていた。ここで怪我をするなんてことがあったら速攻新しい人材を投入しなければならない。むしろ早めに殺っておくか?でもどちらもちゃんと鍛えれば強くなれるポテンシャルは秘めているはずだからな。もう少し経過を見よう。
「大丈夫だ。私は頑丈だけが取り柄だからな。この程度大したことないさ」
この女、真面目でいい女だがいかんせん弱い。騎士のくせに攻撃当たらないし魔法もろくなのが使えない。だがこの中で一番の努力家だ。きっとこの中の誰よりも強くなる。
あと、お前硬くはないからな?硬いのは鎧だからな?
俺達勇者のパーティーは勇者アキト、魔法使いアーニャ、騎士ミレイ、そして魔術師の俺と俺のペットの柴犬チワワの四人と一匹で構成されている。
誰でもいい。こいつらと変わってくれる勇者はいないか?
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