妄想少女 〜事件は小さく起こり小さく不満を残し消える〜
高校二年生
最高に楽しいとあるものは言い、
最高にクソとあるものは言う
違いはもちろん充実度にあるのだろう。
やれ彼氏ができたやら、やれ部活で優勝したやら。
別にインキャであっても充実してればそれで楽しいというだろう。
そんな中、充実をなかなか稀な方法でとる者がいた
砂嘴花未来。彼女は妄想で充実を得ていた
その妄想力で小説を書いている。
ネット小説作家で未来少女というペンネームを知らないものはいない。
その小説の特徴はとんでも無く飛躍することである
しかし、それは後に繋がる。
伏線というよりは、その飛躍を完璧に正当化させるというのだろうか。とにかく妙な魅力でコアなファンから獲得していき、現在の地位を獲得している
そんな売れっ子作家は今日も憧れの男子のBLを妄想しながら一人机に突っ伏していながらニヤけている
始めはその可愛らしい容姿に惹かれ、憧れていた男子も、その憧れがあまりに危険なものだということが分かり、今では寄ってくる人は居なくなった
もう説明は不要であろうが、彼女は浮きに浮いている。というかヤバイやつだという認識である
ただ、そんな彼女のところによってきた男がいたのだ
「こんにちは」
彼の名前は轟志貴。クラスでは普通の男の子である
「こんにちは、もしかして私に用ですか?」
「まあね。」
「そうですか、罰ゲームか何かで私に話しかけた。みたいな感じでしょうか」
「ん?」
「だって、私に話しかけるなんておかしいなって」
「うん。だよね。あんま話したことないだろうし」
「はい。」
「でも、違うんだよ。申し訳ないけど放課後来てくれ。今の急に罰ゲームみたいな発想が出てくる時点で革新に変わった。」
「?」
「家庭科室な!」
面倒くさそうに言っていたが、何なのだろう。それに、確信…って…?
クエスチョンマークが止まらないのだった
放課後
未来はオドオドしながら家庭科室に歩いて行った。寄り道自体はじめてである。いつもはすぐ帰っていたから。
ガラガラときしみながらドアを開くと、そこには轟とあともう一人、謎の女が仁王立ちしてた。ミシンの上に。
「来たわね!」
あっ…
未来はこと女を一方的に知っていた。数々の事件を起こしている暴走女、桜美雨
名前だけは可愛いが本性はうって変わってヤバイやつ。校長のカツラ疑惑の真相を知るべく、校長室に殴り込みにいき、むりやりカツラを剥がして停学になったのは記憶に新しい。
そんな人がなにを…
そんな中、口を開いたのは轟だった。
「えっと…すまん。この暴走女をとめるため、事件を解決してくれはしないだろうか、未来少女さん」
「何で…そのこと…」
血の気がひいた。知られたくなかった。ただ、恥ずかしいというより、そのときは恐怖のようなもののほうが強かった。
「すまんな、俺は一応twitterでアカウントの画像が一時期おなじだったりとかそんなところで見ている。ゴメンね、俺情報いっぱいもっていたい人なの。一応揺さぶりかけてみたら案の定正解だったか。」
怖すぎるんだけど…
「で、何で私なんでしょうか?」
バンッ!
ミシンから降りる桜。美形な顔立ちからありえないほどの急変をとげ、ものすごい形相でこっちにきた。
「不思議なことを見つけたの!!!」
「愛里紗って娘知ってる?」
「いや…」
「素行があんまりよくないことで有名だね。バイク通学禁止なのにバイクで通学してたり、何人もの人と関係もったって話も聞くね」
…それよりこの人のほうがおそろしいのだけど……
「そんな愛里紗がよ!昨日の夜に歩道で骨折したっていうの!それを聞いたら、半端なく無視されて怒ってきたの!!不思議だと思わない?というか不思議よねっね?」
ものすごい勢いで言われた。
「はっはぁ…」
「でっ、貴方に考えてほしいの。
事件の真相を。」
私は人とあんまり関わらない。なぜかというとなぜか知らないけどみんなが私を避けるからだ。
でも、いまははじめて人から【求められて】いる
たまらなく嬉しかった
「でも、私そういうの解ける自信が…」
「解けるの。私がみこんだ娘だもの!間違いないわ」
この自信満々な感じで言われると出来るかな。…なんて思ってしまうのだ。それ程の力がある。
「未来さん、少しでいい意見をくれ。このままだと愛里紗の囲いに殴られる。」
「な、何をしたんですか…」
「突撃したんだよ、また。」
「そしたら、別に転んだだけだし!怖いんですけど?は?とか言われてね〜。俺はいつも巻き込まれてしまう…」
くっ…苦労してるんだなぁ…
「問題は歩道で、ってところですよね。」
「うん…しかもそこのところでなんだ。コイツがいうまで何とも思わなかったけど、こんな平らなところで、しかもバイクでだぜ?」
「不思議なの。もう一回でいいから聞きたい!」
「やめろ!馬鹿な考えはよせ!」
すまん、他言はしない。この女をとめるため、一回でいいから協力してくれ!そういって桜を無理矢理止めていた。
私は。何故か自信があった。これまでに培ってきた妄想力を存分に発揮する時だ
目を瞑り、考える。
なぜ、平らなところで転んだか
そもそも、なぜ怒っていたか
加えて、なぜ、歩道なのか
私は…
「多分分かりました。」
「「うっそ!」」
「はい。それでは確かめに行きましょう」
「どこに?」
轟が怪訝そうな目で見てくる
「資源ゴミのところ…すぐ隣の公園かな?」
「バイクとめてあるところ?」
「なら、なおさらそこです。行きましょう」
桜はニコニコでついてくる
公園の資源ゴミのところで未来はビール缶を拾った
「やっぱり…昨日捨てたもの。それも4つ。」
「酒?…まさか」
「多分そのまさかだと思います。
ビールを飲んだ後、彼女はバイクには乗らなかった。相当酔ってただろうし、多分多少の良心のようなものがあったのでしょう。彼女はバイクに乗らず、歩いて帰ろうとした。
しかし、彼女はベロベロに酔ったまま転んでしまった。でも、人には言えないですよねー、未成年が酒飲んだだなんて。だから彼女は怒ったのでしょう。あまりにも説明のしようがなくて。
現に転んだのだし。
飲んだ理由は定かでないですが、これが私の予想です
私は自分で驚くほどはっきりと喋っていた
「ナルホド!つながったわ!」
桜が抱きついてきた
何か嬉しい気持ちを抑えるのに未来は必死だった
「酒かぁ、悔しい。考えつかなかった」
褒められたことが親にしかなかった未来は、不思議な気持ちになったのだった。
何だろう、この桜、轟という人から勇気のようなものを貰ったのだろうか
晴れ晴れしくて、照れ臭くて。
そんな気持ちに浸った
自分の妄想が役にたったことに幸せを感じた。人がはなれる要素であることは自負していたが、それをプラスに変えることができたのであった
ただ、桜はこうも言った。
「あと30こは不思議はあるわ!それと私の部活、推理部にはいるべきだわ!」
と。
疲れた…一番疲れるジャンルにチャレンジしてしまちました。でも、楽しかったです