異界研究会ルート 1
人生は選択の連続、とはよく言ったものである。
俺にとっての最初の大きな選択は、基本的に努力をしないと決めたことであった。理由はそのうち気が向いたら話そう。
俺にとっての次の選択は、進学であった。高校である。親や先生は頑張れば良いとこは入れると進めてきたが、地元の頑張らなくても入れる高校に入った。
高校に入って、まず、実力テストがあった。主要五教科というやつである。総合結果はぼちぼちであった。個別はまあいいだろう。
次は部活動の選択だ。
☆中学校からやってたのを続ける奴。
☆高校で新しく見つけたのをやる奴。
さまざまである。俺はあえて言うなら前者だ、ただし帰宅部ってやつだ。中学校でも部活に入ってなかったし、今更始めるという選択はしなかった。後から考えると、この選択は大きな選択であったのだろう。当時の俺は知る由もないが。
入学してから幾何かの時が流れた。起床、登校、授業、帰宅、自由時間、夕食、睡眠。その流れをこなすだけの毎日だ。我が家のルールで夕食だけは家族全員でする。自由時間は選択肢がたくさんある。読書、テレビ、昼寝、風呂、大体そんなところだが。ちなみに読書にはマンガも入っている。異論は認める。
ある日の放課後、不自然な少女を見かけた。
☆追いかけてみる。
☆無視する。
ここで無視を選択していたら、また流れをこなすだけの毎日だったのだろう。正直、俺はそんな毎日に飽きていたのかもしれない。追いかけてみることにした。ちなみになにが不自然なのかというと、少女のまがった方向には保健室と事務室、ボイラー室しかない。保健室は放課後は立ち入り禁止だ、養護教諭の方針らしいが理由はわからない。事務室やボイラー室に生徒が用事があるというのは、不自然だろう。そうゆうことである。
さて、追いかけたところで次の選択である。少女がいない。
☆見間違いだったんだと思う。
☆保健室を探す。
☆事務室を探す。
☆ボイラー室を探す。
選択肢が多いな。ゲームなら制限時間があるとこだが、これは現実だ、考える時間は十分にある。慎重に次の選択を考えよう。
しかし俺はどうやら第五の選択肢を選んでしまったようだ……
気が付くと、目の前に壁がある。いやまて、改めて状況を整理しよう。
不自然な少女を見かけた、追いかけた、少女がいなかった、次の選択を考えていた……そうだ、考えていたんだ。腕を組み、壁に背を預けて、壁が回転した。忍者屋敷の壁のように。そう、そしていま隠し通路にいる。目の前には壁があるだけだ。さて、改めて選択肢だ。
☆進む。
☆戻る。
俺は進んだ。学校にこんなものがあることへの興味心だろうか。自分でもよくわからない。地下に続いてるようだ。だが、後戻りはしない。
電気がついていたし、一本道だったこともあり、突き当りの部屋には簡単につくことができた。さて、やるまでもないが選択肢だ。
☆入る。
☆戻る。
これが、引き返すなら最後のチャンスだろうが、俺は引き返さない。
扉を開けると、中には二人しかいないようだ。一人は玉座ーーどちらかというと魔王の城にあるようなーーに座って本を読んでいる赤髪の女性。もう一人は部屋の隅で何かをいじっている長い銀髪の少女。
「ようこそ、異界研究会へ」
いつの間にかこちらを見ていた、玉座に座った女性が話しかけてくる。人との会話も選択の連続ではあるが、通常選択肢を並べて考えてる時間はない。とっさに選んだ選択肢で会話は進んでいく。
「異界研究会?」
「ええそうよ。入部希望者かしら?」
「そういうわけではないです」
「何か他の部活に入っているのかしら?」
「そういうわけでも」
「なら、この部にはいらない?」
「いや、あの」
「入部条件さえ満たしていればすぐは入れますわ」
「えーと、」
「部長さん。困っています。彼が」
部屋の隅から声がした。
「あら、ついやってしまいわしたわ。ごめんなさい」
「あ、いえ」
とりあえず、俺は会話が苦手だということが分かった。それから、ここが、この女性が部長だということ、部屋の隅にいたのが、長髪の少年だったことがわかった。
「改めまして、異界研究会へようこそ。入部希望者かしら?」
☆名乗る。を選択。
「神谷 十六夜です」
「真名は?」
「真名?」
「この部活に入るのなら必要になりますわ」
「なるほど」
「部長さん。自己紹介。我々も」
「ああ、そうでしたわ。わたくしはセラフィムですわ」
「神谷さん。髑髏。我は」
「あなたも真名を考えておきなさい」
これは、入部する流れなのか。
「新顔がいるみたいだな」
そうこうしているうちに、もう一人来たらしい。
「神谷さん。ベレト。彼は」
「ベレトだ。よろしくな新入り」
「よろしくお願いします」
仮面をかぶっていて顔は見えないが声的に男だな。
「では、神谷さん。入部届と真名、よろしくお願いしますわ」
「わかりました」
これは入部は決定なのか。ていうか、入部条件はどうなったのだろうか。
「ところで、彼はどっちなんです?」
どっちってなんだよ。なんの話なんだ。
「あら、そうでしたわ。入部条件はどちらか満たしていればいいので、どちらか教えてくださいまし」
☆人間以外の生命である。
☆人間以外の生命はいると信じてる。
さて、俺はいま家にいる。あの質問にどう答えたかは言わずもがな。俺は人間だ、一択しかない。あの後、帰るに帰れず終わるまでいたが、何をする部活なのかはわからず。明日、真名と入部届を準備してまた行くことだけがわかっている。夕食も食べたし、今日はもう寝よう。
とりあえずは、入部届をもらわないといけない。入部届は担任の先生に言えばもらえる。と、いうわけで放課後、職員室へ向かった。
「おう、用事はなんだ?」
この人が担任・大河友樹先生である。本人曰く、フレンドリー担任を目指しているらしい。
「入部届をください」
「いいぞ、ほれ」
「ありがとうございます」
第一関門は突破した。
「ところでなに部に入るんだ?」
まだだったか。
☆答える。
☆ごまかす。
「異界研究会です」
ごまかしてもしつこそうなので素直に言った。
「そんな部活あったかなぁ?」
「どうせ、異世界探求部のことでしょう」
会話に割り込んできたのは、数学の佐々木先生だ。厳しいことで有名らしい。
「あんな部に入るのはオタクだけですよ」
「まあ、入りたいってんだからいいじゃないの」
「ふん」
明らかに不満そうだが、とりあえずいなくなったので大丈夫だろう。
「先生は応援してるからな、頑張れよ」
とりあえず、俺は急いで職員室を後にした。
「さあ、あなたの真名をわたくしに教えてくださいな」
一晩考え二択になった、決めろ俺。
☆神とお呼びください。
☆十六夜でお願いします。
「十六夜でお願いします」
「わかりました。神よ」
なぜだぁぁぁ、なぜそうなった。
「さあ、神よ。入部届を」
「いやあの、十六夜で」
「神。賛成。我は」
「俺も、神に賛成」
なぜか二人まで乗ってきた。
「では、三対一で神に決定しますわ」
俺は何のために一晩考えたんだ、一体。
「それよりも、入部届を」
☆渡す。
☆真名の修正を。
真名とか普通に使ってる時点でもう流されてるな。素直に渡そう。
「異世界探求部?」
あれ? 雰囲気が変わったぞ?
「ここは、異界研究会ですわ! 間違えないでくださいまし!」
「すいません」
「部長さん。怖い。顔が」
「神よぉ。それは禁句だぜ」
禁句? どういうことだ。
「あの部、実際はアニオタどもが語り合うだけの部なんだよ」
なるほど、なんとなくつながった。
「とりあえず、書き直すんで返してください」
「以後、お間違えになりませんように」
とりあえず、二つの似た名前の部があること、それが禁句なこと、部長はおこると怖いことが分かった。
「じゃあ、神が正式な部員になったといことで、他の部員もきちんと説明いたしますわ」
部長はいつもあの玉座に座っているようだ。
「まず、わたくしの真名はセラフィム。三年生で部長をやらせてもらっていますわ」
三年生だったのか。部長は仮面の男、ベレトだっけ、に自己紹介するように促した。
「俺はベレト。二年生で副部長だ。ベレトって呼んでくれ」
ベレトであってた。こちらも先輩だな。それにしても、ベレト先輩はなぜ仮面をしてるのだろうか。
「神。髑髏、一年生。我は」
髑髏くんだな。どうやら同学年らしい。あと一番話すのが大変だな。
「あと、たまにしか来ませんけど二年生できららちゃんがいますわ」
「わかりました。メンバーはそれだけですか?」
「ええそうよ。これから頑張りましょ」
この選択が、正解だったのか不正解だったのか、もっといいルートがあったのか、それはわからないが今はこれでいいのだと思う。楽しくなってきそうだ。
さて、閑話休題。ゲーム風にキャラクターを紹介してみようと思う。
主人公
真名 神 本名 神谷 十六夜
浅山高校一年生。流れで異界研究会に入部する。基本的に努力しない。主人公だがいろいろと語られてないことがたくさんある。重要なこともそうでないこともあるがそのうちいくつかは、いつか語られる。
真名 セラフィム 本名 不明
浅山高校三年生。異界研究会の部長。赤髪。玉座に座っていることが多い。おこると怖い。
真名 ベレト 本名 不明
浅山高校二年生。異界研究会の副部長。部室にいるときは常に仮面をつけている。
真名 髑髏 本名 不明
浅山高校一年生。異界研究会の一員。長い銀髪。しゃべり方が変わってる。
真名 きららちゃん 本名 不明
浅山高校二年生。まだあってないので不明。
大河 友樹
浅山高校の教員。主人公の担任であり国語担当。フレンドリー担任を目指している。
佐々木 巌流
数学の担当。厳しいことで有名。他校に高一の息子がいる。
養護教諭
詳細不明。保健室を放課後出入り禁止にしている。
少女
異界研究会の部室を見つけるきっかけを作った少女。
ここで初めて出てくることもあるが、あまり気にしてはいけない。高校の名前とか。普段使わないし。
閑話休題、終了。
あれから、一週間がたった。放課後には部室に行くことが習慣になっていた。ただし、やることもなく各自で時間をつぶすか、駄弁っているだけである。一人で時間をつぶすときは大体読書であった。実は部屋の片隅にベレト先輩の本棚があって、小説やラノベが入っているので、そこから借り読みしてるわけだか。ちなみに、部長も借り読みである。髑髏はいつも折り紙を折っている。さて今日はどうするか。
☆本を読む。
☆部長に話しかける。
☆ベレト先輩に話しかける。
☆髑髏に話しかける。
「部長、ここはなにをする部なんですか?」
今さらではあるが、聞いてみることにした。
「そうですわね。何かあれば、やりますわ」
「何かですか?」
「やりたいことを言えば、やるかもしれませんわよ」
「今までやったことといえば、なにが」
「そうね。部活の助っ人とか、かしらね」
「なるほど」
これ以上の情報は得られなさそうだ。次は……
「ベレト先輩は、なぜいつも仮面を?」
「素顔を隠すためだ」
「見られちゃまずいんですか?」
「知らないほうが良いだろうな」
「わかりました」
触れないほうが良い話題みたいだな。次にいこう。
「髑髏は、いつも何折ってるんだ?」
「神。朱鷺。これは」
「朱鷺?」
「神。朱鷺。これは」
「なるほど」
鶴だと思ってたな、てか朱鷺の折り方とか知らないしな。
さて、本でも読むか。
「セラフィム様、依頼が参りました」
新しいのが増えた。ていうかどこから現れた。
「内容はなんですの?」
「行方不明の猫が……」
行方不明の猫探しとは、ありがちな話だな。
「昨日見つかったが死んでいたので、何とかしてほしいと」
普通じゃなかった。なにそれ。無理だろ。
「わかりました」
わかりましたなのか。大丈夫なのか。
「では」
消えた……。とりあえず、確認しておかないと。
「今のは?」
「きららちゃんの使い魔です。依頼を持ってきてくれます」
「さっきの依頼なんとかできるんですか?」
「ええ」
なんか色々すごすぎて、ついていけない。
「髑髏、よろしく」
「部長さん。了解。我は」
消えた。髑髏も消えた。どうなってんのこれ。
「これでじきに解決しますわ」
一時間後、髑髏が帰ってきた。「どうでしたか?」
「部長さん。解決。無事に」
「ご苦労様ですわ」
なにがどうなったのかだけは聞いてもいいよな?
「どうやって解決したんですか?」
「髑髏が死ぬ前の猫を連れてきただけですわ」
「どうやって?」
「過去に行ってですわよ? 他になにがありまして?」
「あ、はい」
なんか、さらっとすごいこと言ったな。
その日は、他に変わったことはなにもなく。いつもと同じように時間が来たら解散となった。
入部条件は
☆人間以外の生命である。
☆人間以外の生命はいると信じてる
少なくとも一人、人間ではないようだ。これで俺は、本当の意味で入部条件を満たしたのだろう。
俺のこの新たな日常は始まったばかり、当然選択は、
☆続ける
☆やめる
(続ける)が選択されましたので、次回へ続きます。
作者の実体験と妄想をもとに考えたお話です。




