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私が彼女と出会ってから短くも長くもない月日が流れた。


「ゼノ」


優しく私の名を呼ぶ彼女の声が頭の中でリフレインする。一緒に行こうというように差し出された手のひらと弧を描く瞳。美しい信念を持った勇者。その日の事を懐かしく思うが決して忘れることはない。記憶に焼き付くように残る花の勇者。


「ゼノぉ」

「ゼノ!」

「ゼノ殿」

「ゼノちゃん」


リタ、ヴァルファル、アキト、フィニア。仲間も増えた。そのうちに私は楽しい、という感情を知り、これまで心の内にあったのは孤独だと知った。暗い日々を切り開いた勇者。彼女は誰からも愛され、頼られ、時には守られた。立ち寄る村や町で男に声を掛けられていた彼女をつい見つめてしまうのを止めることはできなかった。でもいつも、彼女は私の隣にいた。気が付くと隣でこちらを見て優しく微笑んでいた。あたたかい勇者。


「任せたわ」


盗賊のアジトに忍び込んだ時も、魔物に囲まれた時も、夜一人で寒い時も。体温を分け合うように背中合わせに存在する勇者。私が信頼して背中を預けることができる彼女はいつも澄んだ瞳でこちらを見つめる。


「使命があるの、でもね」


力強くこちらを見つめて話してくれた彼女の本心。血に塗れる覚悟はしたけれど本当は自分の手で命を絶つことがとても怖いのだと。自分勇者だからそんな迷いを持つわけにはいかないと。そして何より、血に塗れる自分の手が汚いのだと。勇者なのではないのだと、とてもきれいに泣きながら私に打ち明けた一人の少女。本当にきれいな涙だと思った。

 


「ゼノ殿。それは恋であろうよ」


これが、恋。


その言葉は私の胸にすとんと収まって、心を占領して離れようとはしなかった。

ゆったりと胸を締め付けるような心地よいなにか。そうこれは、あの日であった時からずっと、


私は誰より君が愛しい、アルマ。



*


どうか、このまま


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