恋
旅を続けているうちに仲間が増えた。
とても強い力を持つ魔法使いリタ。
幼い彼女は最近までずっと力を封印されて生きていた。けれど彼女の街が魔物に襲われて、人々を守る為にその力を振るった。その時に一緒に戦った私たちの力になりたいと、旅についてきてくれることになった。
戦いの中ではすごく凛々しい表情をするけれど、甘いものを食べるときはいつも以上にとろけそうな顔で笑う少女。
獣人の中で最も強い戦士のヴァルファル。
魔の名を持つ彼は魔族と獣人のハーフだった。強すぎるヴァルファルを誰もが腫物のように扱った。対等な関係の者も居らず、つまらなそうに過ごす彼を見た両親が彼を連れて行ってほしいと願った。
他人とのかかわり方を知らなかった彼は私たちの仲間の中でも積極的なリタの扱い方に困っていた。でも、最近になってリタの事を見る目が変わってきていること、フィニア姉さんと私は気が付いている。
遠い東の国の侍アキト。
彼は東の国の剣術を使える戦いにおいて最強だった。自分はどこまで強くなれるのだろうかと、強い相手を探して旅を続けていた彼を初めて倒した私について行きたいのだと言った。
仲間の中でも誰より大人で、喧嘩が始まりそうになったらさりげなく話題を変えて大きな問題にならないようにしてくれている。でも、刀の事になったら決して譲らない部分があるのを旅の途中で知った。
小さいころから見守ってくれていたフィニア姉さん。大陸一番の神聖魔法の使い手で、聖女。私が間違えそうになった時にはいつも叱ってくれて、とても頼りになる家族のような女性。私が不安なのもいつもすぐに気づいていた。
優しくておおらかなフィニア姉さんだけど、そんな穏やかな外見では気が付かないくらい酒豪で、フィニア姉さんに挑む人みんなが面白いくらいに驚いていた。
そして、不思議な雰囲気をもつ青年ゼノ。
勇者である私と同じくらいの強さを持つ剣士。私が唯一背中を任せられる仲間。旅を始めて初めて出会った仲間である彼は初めは全く笑ってくれなかったけれど、旅を続けていくうちにいつの間にかとてもきれいに笑うようになっていた。
紅玉のような瞳に夜の空のような髪。とても整った容姿をしていた彼は行く街行く街で女性に声を掛けられていた。それがなんだか悲しくて、いつも目で追っていたら必ず彼は振り返ってきれいに笑った。
彼が笑うたびに心臓が締め付けられるようで、でも何となく心地が良かったような気がする。
「アルマ、それは恋よ」
そうフィニア姉さんが教えてくれた時に目が零れ落ちるほどに驚いた。
けれどその言葉は私のふわふわした気持ちにピッタリの名前だった。
これが恋なのね。リタも、ヴァルファルも、アキトも、フィニア姉さんも好きよ。けれど、
私はあなたが愛しいわ、ゼノ。
*
ああ、胸が苦しい。