邂逅
さくさくと草を踏みしめながら歩く男。
恐怖を感じるほど美しい男は魔物に囲まれていた。
「・・・」
鬱陶しく思っているものの、遠ざけはしない。その理由を疑問に思いつつも魔王である男は勇者のいるほうへ歩く。
この大陸までは飛んできた。この男にとっては遠く離れている魔族大陸から人族の大陸まで飛ぶことも造作も無い事だ。
そしてある程度勇者に近づいてから飛行をやめた。そこからはずっと歩いている。その歩いているうちに魔物に囲まれ始めたのだ。
それは、傍から見て襲われていると感じてもしょうがないものだった。
ざんっ、
魔王である男の周りにあふれていた魔物が切られ、魔物の輪の外にいる人物と魔王まで道ができた。血が飛び散った真っ赤な道だったが、それが運命の道だったことに変わりはない。
なぜなら、魔物の道の端同士で向かい合うのは、魔王と勇者だったのだから。
魔王は道の先の、勇者と呼ばれる、花のように美しい女と視線がぶつかる。
___
街を出発してから数時間、街道に沿って次の街に向かっている勇者と巫女。ここで巫女が異変に気が付いた。
「・・・あら?魔物が・・・」
巫女の視線の先を勇者も追う。それは一匹の魔物だった。
それだけなら何の問題もない、それだけならば。
その魔物は何かに引き寄せられるように街道を横切って向かいの森の中へと入っていく。近くにいる人間に見向きもせずに行ってしまうのは確かに普通ではない。
「追いましょう」
勇者アルマはすぐに決断する。あちらに魔物を引き寄せる何かがあるなら見に行かなければならない。それが人ならば助ける、魔族の策ならば、次の策が実行できないまでにしなければ。
そう考えつつ森へ、魔物を追う二人。
その二人がしばらく歩くと、魔物の数が徐々に増えていく。
「魔物がこんなに・・・」
滅多に魔物の近づいてこない王都に住んでいた二人からすればそれは異常といえた。勇者の表情は険しく、いつも浮かぶ微笑みがすっかり消えてしまっている。
警戒をしながらさらに進む。ここまで魔物に襲われることはなかった。
そしてついに発見する、魔物に群がられる「人」を。
「大変!」
勇者はすぐさま剣を振るう。あの「人」を助けるために。彼が「人」だと信じて、守る為に。
魔物を切り裂いて道を作る。血に塗れた道でも、これが助かるための道なのだから。私は信じて進まなければいけないのだと、剣を振るう。
そうして、血の道の先で佇む男は、驚くほど美しかった。
闇のような黒い髪を風になびかせていた。その男と、視線がぶつかった。
*
何かを感じた