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幸せな勇者様

できたら毎日0時に順番に投下したい

ひゅん、


鋭い音とともにきらめく刃が振り下ろされた。

ロングソードを軽々と振り回すのは人族の少女。


わずかに汗を流しながらロングソードを振り下ろす。

ぼそぼそと数を数えながら片手で素振りをする少女は、最近ようやっと成人したばかりだ。しかしその雰囲気はすでに女性の健康的な魅力にあふれている。



しばらく剣を振り続け、数が五百に到達してやっと剣を振るのをやめる。

ごわついた布で汗をぬぐい、剣を置いて自分の手のひらを見つめた。


剣ダコのある硬い掌。戦うために剣を振るう。ただ、勇者だからという理由で。

けれど覚悟を決めなければ、私は勇者だから。



彼女は勇者、アルマ・ローグスナン

教会の巫女の告げた神託により、彼女は生まれ落ちた瞬間からすべてが決められていた。それに不満はない。

厳しい訓練でも励ましてくれる両親がいた、師匠も厳しい人だったけれど、同時にとても優しい人だった。王様だって幼い彼女が責任を感じないように、彼女にも、周りの国々にも勇者の存在を隠し続けた。


そして先日の成人の儀。王様は彼女に真実を告げた。

やわらかい空気に包まれて清く育った乙女は、穏やかにほほ笑んでその使命を受け入れた。

兄を魔族に殺された彼女は、それでも純粋に育ち、魔王に復讐するのではなく、人々を守りたいと。



彼女が魔王を倒すために旅に出るのは、成人の儀から数日が経った今日。

彼女を育てた両親と、大切な街、そこに住む人々、愛すべき世界を守るために彼女は街に背を向けた。



彼女が持つのは次の街にたどり着く数日分の食料と野営をするための用意、連れ添うのは幼いころから一緒に育った姉のような存在の教会の巫女。


情報が洩れて狙われないように、大々的な見送りはしないと決めた。

彼女を知る人々は、大切な存在が天に逝ってしまわぬように、世界を必ず救ってくれると信じて、神に願った。


大きな期待を背負って旅立つ小さな乙女。彼女は穏やかなほほえみと、強い覚悟を目に浮かべ、地を踏みしめて歩いてゆく




*


総てを護る為に、血に染まる覚悟を

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