表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/7

6話 もうここからはベタじゃない

学校を終え、はじめてできた友人、佐藤武と一緒に帰ることにした。


 一緒に帰れないというと、同居人たちは少しさみしそうにしたが、一緒に帰る相手が男だと聞き、安心したように帰って行った。


「いや、お前ほんま初日からモテモテやねんなあ。うらやましいわ」


 陽気な関西弁。武は大阪からここ、東京まできたらしい。


「モテてねえよ。なんかいろいろ巻き込まれたんだよ」


「そういうのをもててるっちゅうねん」


 けらけらと笑う。陽気なやつだ。


「それはそうと、お前どこに住んでるんや? 暇やし、いかせてや」


「い、いや、やめとけよ」


 あんなところにこられたら、たまったもんじゃない。


 とにかく、学校で彼女たちと一緒に住んでいることがばれてはいけないのだ。


 奈津美と教室で話しているだけで、なにやら噂されるくらいなのだ。これが、ルリさんたちが言ってた、都会の男女の仲はややこしいというやつなのか。


「ええ、だって、暇やん」


「家に帰らないのか?」


「あ、そうか、うちくる?」


 あんまり断っても、付き合いが悪いといわれそうだ。


 オレは面倒事は避けたかったが、友達ができたこともうれしかったので、首を縦に振った。


「よっしゃ、みんなもよろこぶわ、ついてきてや」


 うれしそうに言う武にオレはついていった。


 学校からすぐ近くの団地。A棟、B棟の隣にあるC棟にオレ達はいる。


 古いコンクリート張りの壁。入口には、そのフロアの縦に住んでいる住民の集合ポストがある。


 集合ポストの金属も錆びていて、それぞれ南京錠をかけてはいるが、ほとんどが閉められていない。


 上から人が降りてきたらすれ違うこともできないほど狭い階段を上る。1段1段が高い。


 3回まで上がったところに、佐藤と標識のある扉を見つけた。


「ここや、狭くてごめんなあ」


「いやいや、誰かいるのか?」


「おとんと、おかんは仕事やから、この時間やと弟たちはみんなおるんちゃうか?」


 ガチャ。扉を開き、中に入る。


「おにいちゃんおかえりーっ」


 タッタッタと、玄関に走り寄ってくる幼児。後ろから男の子と女の子がでてきた。


「おかえり、お兄ちゃん、あれ、お友達?」


「せやねん、今日仲良くなってな」


 オレを珍しいものをみるような目で見る妹に武が説明する。


「おじゃまします、早川風馬です」


 オレは笑顔で挨拶をする。


「こんにちわあ」


 3人の武の兄弟たちが笑顔であいさつを返してくれる。


 みんな本当に暖かい感じがする。これが人情の町、大阪から来た人たちなのか。


「さ、あがってあがって」


 一番上の弟が、中にあんなにしてくれる。


 エリスの家にいたせいもあるのだろうか、とても狭い。


 玄関の前には壁で、右には畳の部屋、左には机のあるリビングであろう部屋。


 小さいテレビが置いてあるが、とても古いように見える。


 木でできている天井は少しカビており、空気は少し淀んでいるような気がする。


 畳の部屋に入ると、子供たちが遊んでいたのであろう、おもちゃが散乱している。


 その中のミニカーを一つつまむ。古い車だ。


 これは、オレが子供の時にも持っていたものだ。これをさっきいた小さな男の子が使っているのか。きっと、武のお下がりなのだろう。


 部屋をみるだけで、裕福な暮らしをしているとはいえず、家族6人で過ごすには十分な広さともいえない。


 それでも、彼らの心は淀んではいなかった。


「ごめんなあ、汚くて。お菓子用意するから、子供たちと遊んでてくれや」


「あ、ああ。わかった」


 オレが畳の上にどさっと座ると、ちびっこがオレの上に腰を下ろした。


「おっと、どうした?」


「おにいちゃん、あそぼ!」


「いいぞお? 名前は?」


「しゅん!」


「俊君か、よし、何して遊ぼうか」


「しゅんくんね、ごさい!」


「ほお、5歳なのか。しっかり言えて偉いな」


 頭をわしわし撫でてやると、とてもうれしそうにした。


「こら、甘えん坊なんやから」


 腰に手をあてて、お姉さんしている。見た感じだと、小学校高学年といったところだろうか。


「君の名前は?」


「うちは、ひな!」


「ひなちゃんか。君は?」


 一番大きい男の子に言う。


「龍です」


 中学生だろう、少し人見知りがちのようだ。


「じゃあ、3人で遊ぼうか」


「ほら、お菓子もってきたで」


 武が言うと、3人とも武のもとにかけて行った。


「仲がいいんだな」


「両親はずっと仕事しとるからな。オレが親代わりみたいなもんやねん」


「そうなのか」


 ずっと明るかった武の表情に、少しさみしげなものがうかがえた気がした。


 しかし、すぐに笑顔に戻ると、弟たちにお菓子を与えていた。


「風馬君と仲良くなれたか?」


「うん! しゅんね、ふうまおにいちゃんだいすき!」


 笑顔でそう答える俊君に、オレはすごく暖かい感情を覚えた。


 子供は本当にかわいい。わがままで、少し困ってしまうこともある。だが、彼らは本当に純粋なだけなのだ。


「この子たちも気に入ったみたいやし、いつでも遊びに来てや」


「ああ、ありがとう。親はいつ帰ってくるんだ?」


「どうやろなあ……結構遅くなると思うで?」


「晩御飯は?」


「あとでスーパーに買いに行こうとおもっとったんやけど」


「そうなのか」


 ふと、エリスに頼んでみんなを食事に招待してもらえないか頼んでみようと思った。


 しかし、十分迷惑をかけているのに、そこまでずうずうしい頼みをオレがすることはできない。


 しかも、今はバタバタしている時期だし、もう少し落ち着いてから頼んでみよう。


 そうして、子供たちと楽しく遊んでいると、時間はあっという間に過ぎて行った。





「ただいまあ」


 玄関を開けると、ほのかが飛んできた。


「おそいよ! なにしてたの?」


「遅いってったって、まだ7時じゃないか!」


「門限何時だっていいましたか!」


 門限ってなんだよ、おかんか。


「はいはい、親父親父」


 軽くあしらい、オレは靴を脱いで家に入る。


「おもしろくないよ!」


「うるせえよ!」


 少しくらい気を遣えよ!


「あら、ふーくん、帰ってきましたのね。ご友人できてよかったですわ」


「まあな。すごいいい奴だったよ」


 笑顔で言うオレをみて、少しほっとした表情を見せた。


 二人に連れられてリビングへ向かうと陽子さんとお手伝いさんがせっせと料理をしていた。


「あれ、ルリさんは?」


「実は……」


 言いづらそうにするエリス。その様子を見たほのかが、代わりにオレに説明をしてくれた。






「あーあ、風馬君男に取られちゃったわね」


 いたずらな目をして、エリスちゃんを見やるルリさん。


 私は風馬に友達ができたことを、うれしさ反面、やきもち反面な気持ちで考えていた。


 もちろん、今まで男友達のいなかった風馬に友達ができたことはうれしいが、私だけのものだった風馬が離れていくようでやはりさみしい。


「なんで帰ってきたんだよ、お前」


 後ろからそんな声が聞こえる。振り向くと、3人のいかにもギャルといった感じの女子生徒が立っていた。


 すごくいじわるな表情を浮かべていて、嫌な感じ。


「だれ、あの人たち」


 私は尋ねるが、エリスも首をかしげている。


「ね、はやく帰りましょ」


 足を速めるルリさんに、さらにあの3人は追い打ちをかける。


「おい! お金持ちの御嬢さん! 私たち庶民にめぐってくれませんのぉー? きゃははは」


 いじめなのだろうか。エリスちゃんか、ルリさんを対象にしていることは明らかだ。だが、ゆるせない。


「ちょっと……」


「いいの!」


 私が文句を言おうとすると、ルリさんが大きな声で遮った。


「いいから、ありがとうね、ほのちゃん」


 笑顔で言うルリさん。


 表情は笑顔だが、目がとても悲しそうだった。


「あ、あの、あたしちょっと寄るとこあるから、先に帰っててくれる?」


「あ、あの……」


 私が何か言う前に、ルリさんは速足で去ってしまった。


 私とエリスちゃんは、不安な感情を抱えたまま、帰宅するのだった。







「それで、まだ帰ってきてないのか?」


 うなずくエリスとほのか。


「心配だな……」


「探してはみたのですが、どこにもいなくて……ふーくんが帰ってきたら、探すのを手伝ってもらおうと思っていたんです」


「それで、待っていてくれたのか。よし、行こう」


 オレは靴を履きなおす。


「どこか心当たりのある場所はないのか?」


「あたってはみたのですが……あ!」


「ん?」


 思い出したように言うエリスに、オレとほのかは顔を見合わせる。


「もしかしたら……いえ、でもあそこなわけがありません……」


「心当たりがあるなら、行ってみよう?」


 首を振るエリス。


「あそこには、私は近づけません。というより、私たちは近づいてはいけないのです」


「近づいてはいけない?」


「お母様にきつく言われてまして……」


 お母さんに近づいてはいけないといわれている場所?


 その時だった。


 ガチャ。扉が開き、人が入ってきた。


「お母様!」


 エリスにお母様と呼ばれたその女性は、ふわふわの白いジャケットに、ひらひらの白いスカートを履いている。いわゆる、お金持ち夫人だ。


「あら、エリスちゃん、ただいま」


 ご機嫌に言う。しかし、オレを見て少し怪訝な表情になった。


「あら、お客様かしら?」


 男の客というのが気に食わなかったのだろう。歓迎はされていないようだ。


「いえ、お母様。先日お電話でお話しした……」


「居候はお断りしろと言ったはずです!」


「ふーくんが自分で言ったのではありません! わたくしが無理やり!」


 エリスも負けじと強気で応じる。ここまで強気なエリスを見たのは初めてだ。


 すると、母親は急にすごい形相になった。


 バシィッ!


 倒れこむエリス。


 このババア、ビンタしやがった……。


「ちょっと!」


 ほのかが声をあげる。


「あら、あなたがほのかちゃん? いらっしゃい」


 笑顔で言うエリスの母親に戸惑うほのか。


「私はね、男と一緒に暮らそうとしているのが理解できないのよ。結婚してるわけでもない、付き合っているわけでもない、しかも出会って間もないどこの馬の骨かもわからないような男と一緒に暮らして、何があるかわからないじゃない。私たち両親は、ずっと家を空けていてね、監視もできないのよ。大切な娘を汚されたらたまったもんじゃないわ」


「なにが大切な娘よ……」


 エリスがすごい形相で母親をにらむ。


「なんですか、その態度は」


「ルリお姉ちゃんは!! ママのルリお姉ちゃんに対する態度は、娘を大切にしているとは思えない!!」


 バシィッ!再びビンタ。


「何を言っているの! あの女は私の娘じゃない! あの汚らわしい雌の娘じゃない!」


「結婚するとき、パパの連れ後も分け隔てなく愛するって言ったんでしょ! パパ言ってたよ!」


 興奮しているからなのか、エリスはいつもと口調が違う買った。


「あの」


「男は黙っていて」


 なんなんだよ。


「黙れません」


「はい? 人の家に勝手に上り込んで、ずうずうしいのね」


「確かにオレは図々しいです。ですが、ルリさんは違うくないですか?」


 オレはエリスの母親の目をまっすぐに見据える。


「違う? 何がよ、あの子はずうずうしいのよ」


「ずうずうしいのはあなたの方だ!」


「ふーくん……」


 オレは思わず叫んでしまった。


 やばい、このままじゃ追い出される。


「あなたはルリさんの何を知っている!? オレも何も知らない! 彼女は心を閉ざしていたんだ! いつも笑っていて、気楽そうで……でも、学校でいじめられて、今もこうしてどこかに姿をくらませてしまった! 何があったのかはオレにはわかりませんが、ルリさんは汚らわしい雌の娘なんかではない!」


「偉そうになにを……!」


「ルリさんを探さなければならないので、失礼します」


 母親を横目に、玄関を抜け、扉を開ける。


「来て!」


 玄関を出た瞬間、ガシッと腕をつかまれ、引っ張られる。そのまま走って門を抜けた。


「ルリさん?」


 オレの腕をつかんでいたのは、真っ赤な目に涙を浮かべたルリさんだった。


「ごめんね、帰ってこようと思ったらお母さんがいて……話聞いちゃった。私、風馬君と合って間もないのにあんなに風馬君は私のこと……うれしかった」


 オレは少し照れ臭かったが、それを顔には表さないようにした。


「いえ。それより、今までどこに?」


「お母様に行ったらダメって言われているところに」


 そうさみしげに言うと、オレの目をまっすぐに見据えて、


「くる?」


 そう言い、先に歩いていく。


 オレは彼女の後についていくことにした。


 30分ほど歩くと、廃墟についた。


 団地だったのだろう。壁は剥がれ落ち、中の鉄筋コンクリートがむき出しになっている。


 ガラスは割れ、あらゆるところに蜘蛛の巣が張っている。


「ここは……?」


 一面埃に覆われてそうで、思わす口を押えてしまう。


「私がお母さんとお父さんと一緒に過ごした場所」


 懐かしそうに言うルリさんに、いつもの陽気な表情はなかった。


「私ね、とても貧乏だったの」


 オレはルリさんのその姿に、言いようもない悲しさと、仄めかしさを感じた。


「お父さんと、お母さんと、私。三人はとっても仲が良くて、毎日が楽しかった。土曜日は必ずお鍋をしていたわ。貧しいけど、心は豊だった。でも、ある日すべてが変わってしまったの。お父さんが務めていた会社が倒産して、職を失った」


 オレはエリスさんの話を聞きながら、砂利の地面を見つめていた。オレは今石ころを数個踏んでいる。


「そして、お父さんは多額の借金をしてしまったの。その時に救いの手を差し伸べてくれたのがミラクルコーポレーションだった」


 ルリさんは、ザッザッザと足を擦りながら廃墟と化した団地の入り口の1つに向かう。


「ミラクルコーポレーションは、私の家に多額の資金提供をしてくれて、私たちは破産を免れた。でも、それは幸せを取り戻す機会を失ったことに等しかった」


 彼女は目に涙を浮かべ、黙って聞き入るオレの瞳に焦点を合わせた。


「お父さんと、ミラクルコーポレーションの社長令嬢は学生時代付き合っていたの。ミラクルコーポレーションの当時の社長は、娘しか生まれなかったから跡継ぎを探していた。私のお父さんと、ミラクルコーポレーションの社長令嬢は恋に落ちた。そして、お父さんはお母さんを捨てて、社長令嬢と結婚したの。お金持ちの家庭だったら、私が幸せになれると思ったのか、お母さんは私に何も言わずにいなくなってしまった」


 彼女のギュッと握られた拳は震えている。それは、怒りからくるものなのか、悲しみからくるものなのか、悔しさからくるものなのか。オレにはわからない。


「そして、お父さんはミラクルコーポレーションの社長になった。後を継いだの。そのあと、お父さんとあの女の間に子供ができた。それがエリスよ」


 なるほど、エリスとルリさんは、異母姉妹ということだったのか。


 オレは、ルリさんが今のお母さんのことをあの女ということに違和感は感じなかった。なぜなら、あの母親もルリさんのことをまた、そのように呼んでいたからだ。


「私はエリスのことは大好きよ。でも、たまに妬ましく思ってしまうときがあるの。あの女は、私を娘としては扱わなかった。それどころか、人間としてさえ見てくれない。昔、お父さんとあの女が付き合っていた時に、お父さんがお母さんと浮気したの。そして、お母さんは私を身ごもり、お父さんとお母さんが結婚した」


「なる……ほど」


 今のお母さんは、ルリさんの前のお母さんから、お父さんを取り戻した形になったわけなのか。


「私は貧乏な家庭で育ったから、周りとは違う。周りと同じにもなりたくない。あの女に反抗した私は、あえて学校でも家庭でも問題児を演じた。その結果、いじめられちゃったんだけどね」


 とうとうルリさんは泣き出してしまった。


「私のことを誰もわかってくれない……誰も本当の私を見てくれない。誰も私を愛してくれない」


 悲しそうに言うルリさんに、オレは言いようもない悲しさを感じた。


「ルリさん……」


「風馬君が来たとき、私変われるかもって思ったの。風馬君は私の何も知らない。だから今から素直になればきっと、本当の私をわかってくれるんじゃないかって……だから、海外に逃げるのをやめたの」


「そうだったんですか」


 オレは自然とルリさんの頭を優しくなでていた。


 柔らかいその髪は、彼女の心を象徴しているかのようだった。


 固い容器に豆腐のような心を入れてしまった彼女は、そのまま振り続けてしまい、容器の中でぐちゃぐちゃになってしまったのだった。


 左手で頭をなでながら、空いた右手で彼女の涙をふき取ってあげる。


「なんて言ったらいいかわかりませんが、大丈夫です。オレは本当のルリさんを見ます」


 うるんだその瞳に、強気な様子は一切見られなかった。


 ただ、おびえている捨て猫のような瞳には、オレだけが写っていた。


「風馬君……」


 彼女はオレの頬に両手をあてた。


 手が冷たい。彼女の心は冷え切っていた。


「ありがとう」


 そういうと、彼女はそっと瞳を閉じ、オレの顔に近づけてきた。




チュッ




 オレの唇に伝わる柔らかい感触。顔全体に吐息がかかり、少しくすぐったい。


 どんなお菓子より甘い口づけが、全身を脱力させた。


「風馬君……」


 両手をオレに回そうとしてくる彼女。


 そこでオレは我に返る。


 いったい何をしているんだ、オレはこんなことをしに来たんじゃないだろう。


 そっと彼女の顔に手を当てると、優しく押し返した。


「オレは本当のルリさんを見ます。大丈夫ですよ」


 その言葉を聞き、彼女はまた涙を流した。


 彼女の口づけは、オレを彼女から離れないようにするための鍵だったのだろう。


 それほどに、彼女は人を信用できないでいる。


 だが、オレはそんな鍵なんかに頼らない。


 キスは好きな人同士がするものだ。オレはまだ好きな人はいない。


 だから、キスなんてしてはいけないのだ。


 オレの心遣いを察したのか、彼女は涙を流したまま、笑顔で、ありがとう、と言った。


「帰りましょうか」


「うん」



 エリスと並んで来た道を戻った。


 行と同じ30分が経過したころ、家の門が見えてきた。


「よし、風馬君覚悟はいい?」


「もちろんです!」


 門を開く。ききーっという金属音が、オレ達の心の重さを象徴しているようだ。


 庭を抜け、玄関の扉に手をかけると、オレとルリさんは、目をあわせ、お互いに勇気を分け合った。


「いきますよ」


 ガチャ!


 勢いよく扉を開くと、オレとルリさんは同時に、


「あの!」


 と叫んだ。


 そこには、きょとんとした顔のエリスとほのかしかいなかった。


「あ、あれ、お母様は?」


 間の抜けた表情でルリさんがいう。


「仕事が入ったとかで、お出かけになられましたよ」


「ふう、戦は延期のようね」


 ため息をつき、オレにウインクをする彼女。


「ですね」


 オレも彼女に満面の笑みを向ける。


 オレ達二人の様子をエリスとほのかは困惑したように見つめていた。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ