かまくら
おっ、かまくらだ。
久々に地元に戻ってきて、バス停から実家への道を、一面の雪景色に懐かしさを覚えながら、一人でとぼとぼ歩いていた。段々と吹雪がひどくなってきて、視界が真っ白になり、これはまずいなと思っていると、かまくらがあった。
固めた雪をくりぬいた立派な造りのきれいなかまくらだ。
中をのぞいてみると、火鉢の前に和服姿の美しい女性が座っていた。
火鉢の上では、日本酒が暖められている。
「入っていきませんか」
女性の声に誘われて、吸い込まれるようにかまくらに入った。
女性がお酌をしてくれた。身体が暖まる。
「しばらくここで休んでおいきなさい」
私はその言葉に甘え、かまくらでのひと時を楽しんだ。
女性は何かの肉を焼いてくれる。猪か何かだろうか、味わったことのない病みつきになりそうな旨さだ。酔いがまわってきたようで、頭がぼうっとする。
外を見ると、雪は少しおさまったように見えた。
「あまり長居しすぎてはいけませんね」
私が言うと、女性がしなだれかかってくる。
「まだやみそうにはありません。もう少しゆっくりしていってくださいな」
私は女性を抱きしめた。
しばらく時間がたって、私は眠っていたらしい。
がさっと音がして、目が覚めた。
かまくらの入り口に鉈を持った男がいた。藁の蓑を着込んだずんぐりとした男。髪はぼさぼさに伸ばし、顔には赤い鬼の面。
「今日の獲物はうまそうじゃ」
男の口元が笑っていた。口の動きを見て、ああ、これは鬼の面ではない、本当の鬼なのだなと思った。
私の腕の中で女性は微笑んでいた。
「肉が柔らかそうな男を選んだのです」
鬼が鉈を振りかぶった。
雪と鬼で続けてみた。かまくらトラップ。どこかで聞いたような話だな。オリジナリティをどこで出したらよいのか難しい。




