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NEXT GEARS  作者: 結城 祐
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未知の存在



シャーネルが兵を治療し終え、城を後にしたクレイヴ達は、旅の支度をするべく一旦ディラモート王国から出て家に戻ってきていた。

ちなみに先程の騒動の後、クレイヴがシャーネルに旅の事を伝えた結果、あの大きい目をキラキラ輝かせて二つ返事で了承したので、予想通り何の問題も無く旅への同行が決定した。



さて、旅の支度というのも色々あるが、一つは今シャーネルが家に向かってかけている'結界'がそうである。


普段から町で離れて暮らしている者にとってこれは必需とも言える魔法で、魔族から対象となる物体を保護する為に用いるものだ。

世界で最もポピュラーな魔法と言え、魔法学校で初めて習う魔法もこれである。


「これでよしっと、終わったよ〜」


家への結界を張り終えたシャーネルが、手を叩きながら言う。


「ああ、お疲れ。

 それじゃ家で準備しつつ少し休むか。

 日も傾いてきたし、今日休んで明日出発でも遅くは無い」


「え〜〜、だったら今日結界作る必要無かったのに〜」


「どんな旅になるか分からないから、万全の状況で出発した方がいいだろ」


「う〜ん、確かに・・・ネイラはもう部屋に戻って寝ちゃったし、仕方ないかぁ」


と言って残念そうにシャーネルは家へと入っていった。


「はっ・・・・さっきから居ないと思ったら、ネイラ何時の間にっ!」


クレイヴが咄嗟に寝室の窓を見ると、すでにカーテンが閉められていた。


「ったく・・・・行動が早い奴だ・・・」


呆れながらクレイヴはシャーネルに続いて扉を潜った。







その晩。

依然寝ているネイラを無視して、夕食を食べ終えた二人は机に座って今日の出来事について話していた。


「で、一体何があったの?

 詳しいことを聞かせて」


興味深そうにシャーネルは古びた木製の机の向かい側に座るクレイヴに尋ねた。

シャーネルは扉の前で兵士を治療していただけなので、謎の二人の男の姿は知らないのだ。


クレイヴは部屋での出来事、二人の風貌、使っていた魔術など全てを話した。

彼らがネイラの正体を見破った事も。


「・・・その人達は私達と同じか・・・近い存在かもしれない。

 もしかしたら――――――」


何時に無く真剣な表情で話し出したシャーネルだったが、途中で考えるように話すのを止めた。


「もしかしたら・・・何だ?」





「神をも超越した存在かも」





「・・・・まさか・・・・な」


クレイヴは少々戸惑った。

これまでにもシャーネルとネイラの力は十分と言う程見てきた。

どれも人では到達する事すら難しい領域のことを軽々と行ってきたのだ。


それをも超越する。


クレイヴにはそれが想像出来なかったのだ。





「――――――なんてねっ」





「・・・・ん?」


「あははっ、ちょっと真剣に話してみただけっ。

 神を超える存在なんて聞いたこと無いもん、ただの推測っ!」


「ったく・・・人が真剣に話してやってんのに、どうしていつもいつも・・・・」





「そのような、存在が居ないとも限らんぞ」


唐突に話しに割り込んできたのは、階段から目を擦りながら眠そうに降りてくるネイラだ。


「あ・・・ネイラ、おっはよ〜・・・って今は夜か」


「ようやく起きたかよ・・・、で、居ないとも限らないってのはどういう意味だ?」


ネイラは空いている椅子に腰掛けると話し出した。


「そうだな・・・例えば魔族の王とか」


「ネイラ、お前もそんな調子かよ・・・」


思わず深く溜息をつくクレイヴ。

それもそうだ、魔族の王は魔族を統べる者。

その力量は目にした事が無くても想像がつく。


「ちょっとした冗談だ」


「・・・普段からそういうこと言わないお前が言うと、冗談に消えないだろ・・・。

 で、いるのかそんな存在が他にも」


「・・・・何時かは忘れたが遠い昔に天界で聞いた事がある。

 神といえども無敵ではない、この肉体が朽ちればこの世からは消滅し再び天界へ戻ることになる」


「ああ、それは精霊も同じだ。

 常識だろ、そんな事は」


「常識でないのはここからだ。

 私達・・・つまり神だけが知っている『根本的に神、精霊を滅ぼす方法』がある。

 つまり、肉体が滅びてしまえば最後、天界へ戻ることすら出来なくなる神々の禁術がある。

 現に過去に滅んでいった神々は多くいたし、滅びるごとに新しい神が代わりに生まれる。

 私達も存在する以前には別の闇と光の神がいた、私達はその生まれ変わりだ」


「シャーネル、そうなのか?」


クレイヴがシャーネルに問うと黙って小さく頷いた。


「だが、私が存在するよりも遥か昔・・・滅んだと思われた一人の神が蘇った。

 その神は魂が滅び行く中で、魔族の王と契約を結んだ。

 『魔神』としてこの世に君臨し全てを支配すると」


「そんな話、初めて聞いた・・・」


シャーネルは驚きのあまり呆気に取られていた。


「・・・だが、これも私が直接見た訳ではない。

 現に魔神に支配などされていないし、本当に存在すらしていたのか解らない。

 しかし、これだけは言える。

 神を超越しているかどうかは別として、可能性があるとすれば魔族の王か魔神だ」


「なるほどな」






「それより」






ネイラは改まった表情をしてクレイヴの方を向いた。

表情は真剣そのものである。


「・・・何だ?」


それを見てクレイヴは一層気を引き締めて答えた。







 

「お腹が空いたのだが、夕飯はまだか?」


「お前が寝てる間に全部食っちまったよ、ついさっきな。

 寝てたお前が悪い」





「・・・せっかく話を聞かせてやったというのに」


ネイラがわざとらしく呟く。






「っ・・・・!?」





「まったく・・・・こんな恩知らずだとは知らなかった。

 今日、代わりに王子を助けたのは誰だったか・・・・」


わざとらしく溜息をつく。






「あ〜〜!わかったよ!!作ればいいんだろ作ればっ!」


「分かればよろしい」


満足げに頷くネイラ。



「寝起きのネイラ、いっつも機嫌悪いのに変だと思った。。。

 さ、じゃ私は寝るから、お休み〜二人とも〜クレイヴ頑張ってねぇ」


「お休み」


ヒラヒラ手を振りながら階段を上がっていくシャーネルに対し、手を振り返すネイラ。






「ったく・・・シャーネルが飯全部食ったんだから・・・他人事じゃ・・・ブツブツ・・・」


時は満月が美しい夜。

それを見ながら呆れ面で愚痴をこぼすクレイヴの表情は疲れきっていましたとさ。






未知の存在『魔神』

これが今後、物語に大きく影響する・・・予定。


乞うご期待!

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