indulgence
ワタシとアナタは二人でひとつ
ワタシがあなたの耳で
アナタが私の目
ワタシが聞いた音はあなたの音
アナタが見たものはワタシの見たもの
心地良く流れるクラシカルな音楽
ワタシはアナタに全てを伝える
ワタシはアナタの体にそっと触れ
指先でリズムを刻む
軽快なクラリネットの音
重くかさなるチェロの音
時にはアナタの体を導いて
振動を感じさせる
ワタシの耳がアナタの耳であることの証
心温まる美しい風景
アナタの優しい声が
ワタシの目に全てを写す
一本一本年月を経て育った木々
スポットライトのようにまぶしい太陽
アナタはワタシの目に息を吹きかけ
時には風すらも見せてくれる
アナタがワタシの目である証
暗い夜
ワタシとアナタは横たわる
不愉快な騒音
ワタシの耳に届く若者の怒り
ワタシはアナタに痛みを与えて伝える
時には身体を揺らし
時には爪でひっかく
不愉快そうなアナタの声
ワタシの耳はアナタの耳
暗い歴史
アナタとワタシは立ち止まる
テレビに映る不愉快な光景
アナタの目の前で繰り広げられる暴力
アナタはワタシに痛みを与える
時には強く
時には優しく
ワタシのかわりに涙を流す
アナタの目はワタシの目
アナタとワタシ
二人きり
アナタが耐えられないほどの無残な光景を目にしたのならば、
ワタシにも耐えることは出来ない
ワタシが耐えられないほどの悲痛な声を聞いたのならば、
アナタにも耐えることはできない
アナタがワタシの心臓を
ワタシがアナタの心臓を
痛みから解放するのもされるのも
アナタとワタシはふたりでひとつ
アナタの荒い息遣いはワタシの命の音
ワタシが途切れながら叩く指の感覚はアナタの命のリズム
アナタの息は聞こえない
ワタシの指ももう動かない