第三章 真の農水族への転身
翌日の記者会見。コンバインリースマンは、報道陣を前に深々と頭を下げた。
「この度は、私の軽率な発言により、農家の皆様に多大なご迷惑をおかけし、心よりお詫び申し上げます」
記者たちは驚いた。いつもの自信満々な借田議員とは別人のようだった。
「私は『リース革命』などと軽々しく発言しましたが、農業の実情を全く理解していませんでした」
「具体的には、どのような問題が?」
記者の質問に、コンバインリースマンは正直に答えた。
「農機具リース料金の異常な高騰です。私の発言をきっかけに、一部のリース会社が料金を2倍、3倍に値上げしてしまいました」
「それは深刻ですね」
「はい。年間500万円だったコンバインのリース料金が、1000万円を超えるケースもあります。これでは新品を購入した方が安くなってしまいます」
記者たちは驚きの声を上げた。
「今後はどのような対策を?」
「まず、リース料金の適正化を求める法案を提出します。政治家の発言を悪用した不当な値上げは許されません」
この記者会見は大きな反響を呼んだ。翌日の新聞は「借田議員、リース問題で謝罪」「農機具リース料金適正化法案を提出へ」という見出しで報じた。
しかし、コンバインリースマンの戦いはこれからだった。
「田中君、リース会社との交渉はどうなった?」
「なかなか難しいです。『需要と供給の原理』だと言って、値下げに応じてくれません」
「それなら、別の方法を考えよう」
コンバインリースマンは、農協と連携して「農機具共同利用組合」を設立することを提案した。
「共同利用組合?」
「はい。同じ地域の農家が共同でコンバインを購入して、順番に使うんです。共同購入費の半額を国費で補助します。また、組合の調整役と農機具整備士には管理成績に応じて、補助金で報酬を支払います。」
「それは良いアイデアですね」
実際に農家を回って提案すると、多くの農家が賛同した。
「それなら、リース料金の心配もないし、メンテナンスも共同でやれば安く済む」
「借田議員、良い案を考えてくれたね」
山田農家も感心していた。
半年後、第一号の「蓬莱農機具共同利用組合」が設立された。
「皆さん、本日はありがとうございます」
設立記念式典で、コンバインリースマンは挨拶した。
「私の軽率な発言でご迷惑をおかけしましたが、おかげで農業の大切さを学ぶことができました」
「この組合により、コンバインの使用コストが従来の半分以下になります」
農家たちは拍手を送った。
「借田議員、すっかり農業通になりましたね」
山田農家が笑顔で言った。
「まだまだ勉強中です。でも、今度は本当に農家のために働きたいと思います」
共同利用組合の成功は、全国に広まった。
「蓬莱方式」と呼ばれるこのシステムは、農機具の高騰に悩む全国の農家に希望を与えた。
「借田議員の提案で、うちの地域も組合を作りました」
「リース料金を気にしなくて済むようになりました」
全国から感謝の手紙が届いた。
一年後、コンバインリースマンは農林水産大臣に就任した。
「皆様、私はかつて農業について無知でした。そのため、農家の皆様にご迷惑をおかけしました」
就任演説で、コンバインリースマンは過去の過ちに触れた。
「しかし、その経験があったからこそ、農家の立場で考えることができるようになりました」
「今後は、『リース革命』ではなく『共助革命』を推進します」
聴衆は大きな拍手を送った。
田中農業秘書は感慨深げに見ていた。
「先生、本当に変わりましたね」
「田中君のおかげだよ。君が諦めずに教えてくれたから」
「でも、先生の努力の結果です」
大臣就任から半年後、農機具共同利用組合は全国1000か所に達した。
「先生、素晴らしい成果ですね」
「これで、高額なリース料金に悩む農家はいなくなるね」
コンバインリースマンは満足そうに微笑んだ。
「ところで田中君、僕はもう『リース』って言わなくなったね」
「そうですね。今は『共助』ばかりおっしゃってます」
「そうか。『リース、リース』だった僕が、『共助、共助』になったんだね」
「先生らしい変化です」
その時、農家の山田さんから電話がかかってきた。
「借田大臣、ありがとうございます。うちの組合のコンバイン、大活躍してますよ」
「それは良かった。今年の稲の出来はいかがですか?」
「おかげさまで豊作です。大臣のおかげで、安心して農業に専念できます」
電話を切った後、コンバインリースマンは感慨深げに言った。
「田中君、僕は本当に変わったんだね」
「はい。今では真の農水族議員です」
今日も全国のどこかで、共同利用組合のコンバインが稲を刈り取っている。かつて「リース、リース」と連発していた男は、今では農家の最も頼りになる味方になった。
蓬莱国の怪人・痛快・迷物議員の物語は、無責任な発言から責任ある政策への転換の物語でもあったのである。
「共助の力で、日本の農業を守ろう!」
コンバインリースマンの新しいスローガンが、今日も農村に響いている。
※この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件等とは一切関係ありません。
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