第二章 リース地獄で農家大混乱
コンバインリースマンの「リース革命」発言から一ヶ月後。蓬莱国の農村地帯は大混乱に陥っていた。
「田中さん、また苦情の電話です」
事務所の電話が鳴り止まない。田中農業秘書は朝から晩まで農家からの苦情対応に追われていた。
「もしもし、借田事務所です・・・はい・・・え?リース料金が3倍に?」
話を聞いている田中秘書の顔が青ざめていく。
「先生、大変なことになりました」
「どうしたんだい?」
「コンバインのリース料金が、なんと3倍に跳ね上がった地域があります」
「3倍?それはちょっと高すぎるね」
コンバインリースマンは他人事のように答えた。まだ事態の深刻さを理解していない。
「それだけじゃありません。トラクターも田植え機も、すべての農機具のリース料金が上がってます」
「え?僕はコンバインのことしか言ってないよ?」
「リース会社が『借田議員推奨のリース革命』と宣伝して、すべての農機具に適用してるんです」
コンバインリースマンの発言は、予想外の拡大解釈をされていた。
その時、事務所のドアが勢いよく開いた。
「借田議員!」
入ってきたのは、地元の農家、山田稲作氏だった。彼の顔は怒りで真っ赤になっている。
「山田さん、どうしたんですか?」
「どうしたもこうしたもない!あんたのせいで、うちの農業経営が成り立たなくなったんだ!」
「え?僕が何か…?」
「リース料金だよ!あんたが『リース革命』なんて言うから、リース会社が値上げしまくってるじゃないか!」
山田農家は怒りをぶちまけた。
「コンバインのリース代が年間300万円だった。それが先月から500万円になって、今月はなんと700万円だぞ!」
「700万円?」
コンバインリースマンは驚いた。その金額の高さに初めて気づいたのだ。
「これじゃあ、新品のコンバインが買えるよ!リースの意味がないじゃないか!」
「そ、そうですね...でも僕は良いことをしようと思って...」
「良いことだって?農家の現実も知らないで、よく言うよ!」
山田農家の怒りは収まらない。
「あんた、コンバインが何する機械か知ってるのか?」
「え?それは...コンバイン(結合)する機械で...」
「稲刈り機だ!稲を刈る機械だ!」
「あ、そうなんですか...」
「年に一度しか使わないから、リースは合理的だと思ってたんだ。でも、この値段じゃ買った方がマシだよ!」
山田農家の説明で、コンバインリースマンは初めて農機具の実情を知った。
「それに、リース会社は『政治家推奨』って宣伝してるから、文句も言えないんだ」
「政治家推奨?」
「あんたの発言を使って、『借田議員も認めるリース革命』って宣伝してるんだよ」
コンバインリースマンは愕然とした。自分の発言が、こんな風に利用されているなんて。
山田農家が帰った後、コンバインリースマンは深く反省した。
「田中君、僕は取り返しのつかないことをしてしまったのか?」
「まだ間に合います。正しい情報を発信すれば」
「正しい情報?でも僕、農業のことを全然知らないんだ」
「だったら、今から学びましょう」
田中秘書の提案で、コンバインリースマンは緊急の農家視察を行うことにした。
翌日、人生で初めて田んぼに足を踏み入れたコンバインリースマン。
「うわあ、泥だらけになる...」
長靴も履いたことがない都市育ちの議員にとって、田んぼは未知の世界だった。
「先生、これが稲です」
「へー、お米になる前の姿なんですね」
「そして、これがコンバインです」
巨大な機械を見て、コンバインリースマンは驚いた。
「こんなに大きいんですか!」
「はい。これ一台で、稲刈りから脱穀まで一度にできるんです」
「すごいな...でも、年に一度しか使わないんですよね?」
「そうです。だからリース料金が高いと、本当に困るんです」
農家の山田さんが実演してくれた。コンバインが稲をどんどん刈り取っていく様子を見て、コンバインリースマンは感動した。
「これは芸術ですね...」
「芸術って言うより、生活のためです。これがないと、手作業で何日もかかってしまいます」
「そうか...僕の軽率な発言で、この大切な作業に支障が出てしまったんですね」
コンバインリースマンは、初めて農家の大変さを理解した。
「山田さん、本当に申し訳ありませんでした」
「分かってくれればいいんです。でも、リース料金をなんとかしてもらわないと...」
「はい。必ず対策を考えます」
その夜、コンバインリースマンは事務所で徹夜で勉強した。農業の基礎知識、農機具の種類と価格、リース制度の仕組み...今まで避けてきた勉強を、必死に取り組んだ。
「田中君、リース料金を下げる方法はないかな?」
「政治的な圧力をかけるのは難しいですが、正しい情報を発信して、適正な競争環境を作ることはできると思います」
「そうですね。明日、記者会見を開きます」
コンバインリースマンは決意を固めた。自分の間違いを認め、農家のために戦う時が来たのだ。




