ギャンブラーは死ぬ末路
人生とはギャンブルである。
この言葉は誰もが一度は聞いたことはあるだろう。
えっ?ない...........?
ならそいつは人として終わっている。
人々は物事を決める際に必ずしも決断をする。
それによってはこの先の人生が大きく変わることになる。
これらはもうギャンブルに等しい行為だ。
しかい、このように人々は普段から自分の人生に対して何かを賭けているのに
ギャンブラーへの心理的に距離を置きたがる。
ここで知ってほしい、彼らは君たちと同じ人間であること。
そして、彼らの可能性を.........
パチンコ、スロット、オートバイ、ボートレース、競馬...
金を賭けては一喜一憂を繰り返す。
そんなあるギャンブラーの毎日...
◇◇◇◇◇
「なんなんだぁぁ!この台はぁ!!」
朝の七時近く、小鳥がようやくさえずり始めたころ、
開店直後からパチンコを打っている男がいた。
「この台もぉ!!!、あの台もぉ!!!、全部が全部ふざけてやがる!」
彼の名前は金条賭博という。
金髪にがっつりピアスを開けているが、陽キャになるのを失敗した感が強い男だ。
どんな無理難題でも後先考えずに行うため、とても損をしている。
そんな彼が打っている台は、新しくこの店に入ってきた新台で、
出玉があり得ないほど出ると話題になっていたものだ。
「期待して損したぁ~!リーチも出ないなんて.......」
そんなことをつぶやく金条だが、もうすでに消費者金融に借りた金を
すべて溶かしてしまった。
借金合計8000万、正攻法では到底払えない額に来ている。
このままでは、いつグラサンをかけた怖いお兄さんたちが
金条の家に突ってきてもおかしくはない。
だからもうパチンコで勝つしかない。
勝って、勝って、勝って、お金を倍にするのだ。
「あんまりだぁぁぁぁ!!」
金条は自分の金借りた金をたんまりとため込んだ台をにらみつける。
「おまえがぁ...お前が吐き出さないからだぁぁぁぁ!」
人はギャンブルに負けると大体は狂人化する。
例えばパチンコ店の前で泣き叫ぶ人を見たことがあるだろう、
.......あんな感じだ。
金条はその場で立ち尽くしてしまう。
すべてを失った....そんな喪失感が精神を蝕む。
あーしとけばよかったなどと思い考えるのはもう遅い。
負けた瞬間、人は敗者に成り下がる。
「.........まぁ、いいか....金ならまた借りればいいし。飯にするか。」
そんなことを言うとムクッっと立ち上がって、
店内の時計をちらっと見ると、自分の頬を叩いて切り替える。
そして、金条は腹と背中がくっつきそうなほど食を求めている体を動かし、
悔しそうな顔をしながら店内を後にした。
◇◇◇◇◇
まだ時間は午後に行っていない、12時手前くらいだ。
金条は先ほどのパチンコ店近くの定食屋で昼食をとっていた。
「あの台は、ぜってぇ詐欺だ。たらふく球をため込んでやがる。」
そう愚痴を吐きながら食べているのは、もやニラ炒め。
文字通りもやしとニラを炒めたちょっと貧乏くさい料理。税込み200円。
「絶対に一回はリーチ来てもいいだろ...クソが!」
勝てないと褒美は来ない。勝てないともやニラが待っている。
それがまた金条をギャンブルに沼らせる要因でもあった。
「......行くか...。」
サクッと食べてしまった金条はトレーや食器を片付けて、定食屋から出た。
外に出るとさっきまでの晴れ空から変わり、雲が空を覆っていた。
全体が黒いような、雨が降りそうな雲だ。
「.......しめた!」
何か気づいたのか、金条は一人で淡々と語りだす。
「こんなじめじめしてれば、台の回転数が上がるんじゃねぇか!?」
....実に個人の感想だ。
確かに感覚的ではそうかもしれないが、日々メンテナンスを重ねている台に
そのようなことが起こるのは少ないといえるだろう。
「そうと分かれば...レッツパチンコ~!!」
かくして、金条は今日の予定にない二度目のパチンコ訪問を決める。
ルンルンでスキップをしながらパチンコ店へ向かう金条。
しかし、この選択が自分の死に直結することをまだ彼は知らない。
◇◇◇◇◇
確かに湿度の影響でパチンコ台に変化があった。
それは.......
「おいおい!なんでこんなに球が入らねぇんだよ!!」
湿度の影響なのか、それともただの思い込みなのか、
ボールが釘に当たってもスルスルと下に落ちてゆく。
「だ....ダメだ.....おしまいだ。」
........なんとみじめなことだろうか。
金条の姿はまるで飛んで火にいる夏の虫。
来なければこんなことにはならなかったはずだ。
対して頭の中では金の音が聞こえて、金条の頭をおかしくしていく。
そのため、金条はその調子で金をどんどん溶かし…
「な、ない。......か、金が.........」
見事に使い切った。
財布を見てもレシート以外何もない。
漫画だったらとても悲しい音が聞こえてきそうだ。
「くっ......これもすべてお前のせいだ!!」
金条はそう言ってさっきまで売っていたパチンコ台に目を向ける。
とても分かりやすい他責の例である。
「クソがっ!....もういいわ。」
台を蹴りそうな気持ちを抑えて店を出るため歩き出したが、その足は止まる。
見てしまった。さっきまで自分が打っていた台に誰かが新しく来たのを...
しかも、その男はボタンを押して、パチンコを打ち始めてしまった。
(かわいそうに....あいつは爆死する…俺同様に....)
まるで金条はドキュメンタル番組でライオンに追われている子供のシマウマを
憐れんで見るような目で見ていた...........その時だった。
まるで錆びた機械が修理によって百年ぶりに動き出した、
そのような達成感あふれる音が聞こえた。
ギュルルルン!!
「あ、来た。当たったわ。」
その声の主は今まさに打ち始めた男のものだ。
そう、それはすなわち当たった台は金条がもともと打っていた台を指す。
それを聞いた金条は.....
「ふ、ふ、ふざけんじゃねぇぞぉぉぉぉぉ!!!!!!」
ついにどこの誰に向けて咆哮しているかも分からなくなった。
金条自身は知らなかっただろうが、あの台は潜伏状態だった。
つまり大当たりは確定していた状態だったのに、金条自ら手放したのだ。
「あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あぁぁぁぁぁぁ!!!!」
崩れ落ちる金条の目には涙がたまっている。
それが、零れ落ちるのも時間の問題だった。
止まらぬ後悔。あと少し耐えていれば.....
「ふざけんなっ!このくそ台がっ!!
.........あともう少し.....あともう少しだったのにぃぃ!!!」
これで決まった。
あの男が勝ち組で自分は負け組なのだ。
すべてはあの台にゆだねられていたも同然。
金条はあの台の手の上で踊らされていたのだ.....台に手は無いけど....
「があ゙あ゙あ゙あ゙ぁぁぁぁ-----あっ。」
そろそろ店員さんに怒られるかの瀬戸際になった際。
金条の頭で何かがプツンっと切れた。
金条はその正体を知らない、てか知れない。
なぜかって?
それは彼がもうパチンコ店の床という安価なベットで永眠についたからである。
◇◇◇◇◇
「......ん?....ここはどこだ?」
金条は目を覚ます。
つい反射的に周りを見渡すと、あたりは何もない真っ白な空間だった。
「.......へ?」
さっきまでパチンコ店にいたはずだ。
金条は考えを巡らせる........今まで生きてきた以上に。
そしてたまには察しの良い彼は一つの結論にたどり着く。
「おれ........死んだ?......」
その通りである。いままさn....
「その通りである!!!!」
.............はぁ。
ナレーションの声をつぶすように発せられた空気の読めない声は
金条の真後ろから聞こえた。
恐る恐る振り返るとそこには.....
「おっほっほ!災難じゃったのお主。」
仙人のような長いひげに、仙人のような杖を持っている老人が立っていた。
そう、仙人である。
「.........誰だあんた?」
「あぁ、わし?....わしはお主が生きている世界の神様じゃ。」
まぁ確かに。そう言うしかない格好で納得はできる。
「お主まさか.........ギャンブルでのストレスで、
血管が切れて死んでしまうなんて.....本当に災難じゃ。」
いきなり災難だと言われて少しピキッとする金条だったが、
大人の余裕というものでギリギリ耐えしのいで、その仙人にお願いする。
「あの~。災難、災難言ってもらって同感してくれるのはうれしいんですけど...
まだちょっと親のすねかじっていたいんで、生き返らせてくれたりしますか?」
金条は今自分が思った正直なことを神様に言った。
多分神様なんだから生き返りとかもお茶の子さいさいでやってくれるだろう。
「....え?....当然無理じゃよ?....」
即答で断られた。
「マジでお願いします!現世に返してぇぇぇ!!!」
駄目だとわかると強硬手段。
大の大人だが、足にしがみつき懇願する。
はっきり言ってダサい。
そこまでやられると思わなかった仙人は顔を曇らせ、金条を見下ろす。
「え?そこまで?...う~ん......そうじゃな....あっ!あれをしてもらうか。」
『あれ』?
なんかお使いかな?
「...........お主、今からわしが言ったことを行えば生き返らせてやろう。」
「本当ですか!!!.....で、その内容は?」
「ふっふっふ....それはの……
それは......?
お主には異世界に行き魔王を討伐してもらう!!」
「.......へ?」
思わず「へ?」の第二号が飛び出した。
「待って待って!」
「生き返りたいんじゃろ⁉...もう待たぬぞ!
スキルはお主にぴったりのを用意しておいたから頑張るのじゃ!」
急な話のテンポアップにビビり散らかす金条が、ふと自分の足を見たとき......
「うわっ!......お、俺の足がっ⁉」
金条の足からだんだん上に向けて透明になっていっている。
飛ばされかけているのだ。
「......!..分かった!分かったからスキルだけ教えてくれ!」
「いいだろう.......お主のスキルは『ギャンブラー』じゃ!」
ギャンブラー.....その言葉は異世界でもギャンブルをすることを意味する。
「お、おい!まてっ!」
「では行ってまいれ!」
「この、クソペテン師がぁぁぁぁぁぁ‼‼‼‼」
金条は最後に聞きたかったスキルの説明ことを聞けずに異世界に旅立たされることになった。
いろいろなことがあったが彼はこれから想像を超える人生二週目を歩むことになる。
そんな金条だがこの旅がとても長くなることも彼はまだ知らない。
◇◇◇◇◇
あの仙人のような人に飛ばされてから体感5秒後。
金条は今回2度目の目覚めとなる。
「.....ん?....はっ!」
金条はさっきまでいたあの場所では絶対に感じることはない太陽の光で起きた。
「チッ!あのクソ仙人がっ!」
怒るがもう遅い。
そんなに行きたくなければ、もっと抵抗すればよいものを.....
「.....あのへんなとこじゃない.....やっぱ異世界に来ちまったのか?.....」
やはり察することだけは早い金条は、そう思い周りを見渡すと......
「.........!!!!!」
金条の目に入ったのは、生い茂る森林、洋風な街並み、雲から流れ落ちる滝、
宙に浮く大地、空を飛ぶドラゴン、そびえたつ王城....
見ただけでわかる。
もう自分がいたギャンブルにありふれた世界とは違う。
異世界。
その雄大な景色に息をのみながら彼は決心する。
「.......消費者金融に金返さねぇと..........」




