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玉の輿に乗った派遣施工管理と、眩しすぎる彼女  作者: 伊織


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第九話:既読の文字

「山本さん、お疲れ様です」

「おつかれ」


 なんとか今日一日を乗り切れた。気疲れしてヘトヘトの今日。白井に短く返事をして、そそくさと愛車に乗り込む。


「既読すらついてない」


 朝、七海に送ったままになっているLINEには、既読の文字がなかった。


「もしもし。今忙しい?」


 たぶん、そろそろ集中が切れてコーヒーでも買いに行ってるだろう。そんな気がして電話をかけると、案の定、近くで同僚が雑談している声が聞こえた。


「んや? どしたん?」


 なんでもない、という風の七海にほっとする。


「今日は残業?」


「おん、残業~」


 その声にため息をつきたくなるが我慢して、「そっか。がんばってね」と短く伝え、電話を切った。


「宅配食、ね」


 昼に白井が言っていた言葉を思い出して、ネットで調べる。おいしそうなおかずの数々。管理栄養士が監修してるって書いてあるから、健康もばっちりかもしれない。


「うわ……」


 購入ページに進んだ瞬間、手が止まった。初回は一食五百円程度なのに、二回目以降は七百円近い。定期購入ならもう少しマシだが――二人で一日四食、三十日。八万円を超える計算になる。


 大工時代なら気にせずぽんと買ってしまっていた。でも今は、派遣施工管理で三十にもなるのに年収は三百万にちょっと毛が生えた程度。いろいろ引かれて手元に残るのは十五万。そこから支払い関係が引かれるのに……俺の手取りから出すには厳しい。


 かといって、自分で稼いだわけじゃない七海の金から、こんな高いもの買えない。


 作るのか……疲れて帰って……。


 嫌だなと思いながらも、一応スーパーに寄る。なんも作れないから惣菜にしようかと、惣菜に手を伸ばした。


「餃子、いいな」


 八個入り五百八十円。少し割高な気はするが、一食七百円よりはマシだとかごに入れる。


「はぁ、腰いてぇ……カート使お」


 まだ買うものがあると思い入口までカートを取りに戻ると、置き場そばのチラシに目が止まった。


「うわ、冷凍餃子十二個で三百五十円じゃん。……でも焼くのも洗うのもめんどくさいし……」


 どうするか悩みながら他の商品も見る。するとレタスやハム、卵も安くなっていて、ひらめいた。


「久しぶりに、レタス焼きめし食べたい……」


 七海が昔よく作ってくれた。最初は聞いたとき微妙だと思ったけど、食べてみたらすごくうまかったんだよな。


 そんな思い出に浸りながら、レタスとハムと卵をかごに入れていく。冷蔵コーナーを通りかかったとき、ついでだからと冷凍餃子もかごへ。惣菜コーナーに戻って、惣菜の餃子はそっと棚に返した。


「お、これうまそ」


 餃子の横にあった油淋鶏を見て、明日の昼はこれにしようと弁当用に入れる。


「お会計、1623円になります。3番レジでお願いします」


 金額を聞いたとき、思わず安いと驚いてしまった。四食で一食当たり四百円程度。なんだか嬉しくなる。


 軽い足取りで店を出て帰宅。出迎えてくれたぽんずと一緒に風呂場へ直行し、風呂を洗う。ついでに匂いの気になる自分の足も、ボディソープで軽く洗った。


「ママが帰ってくるまでにご飯作るから、いい子にしてて」


 そう言ってぽんずを抱っこし、リビングへ。クッションの上に乗せてやると、俺は調理を始めた。

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