第二十五話:部屋の選択
家の中に入れて、ひとまずリビングでくつろいでもらってる間に、俺は二階へ上がった。
四SLDK。普通に考えたら二人暮らしには広すぎるのに、一部屋も空いてない。
二階の寝室は論外。七海の仕事部屋兼寝室も論外。Sにあたる釣り具部屋なんて、人が住めたもんじゃない。
となると、候補は二つ。
俺と七海のゲーム部屋か、趣味部屋。
「……いやぁ、これはまずい」
ゲーム部屋は土日くらいしか使わないけど、精密機器の宝庫だ。変に触られて壊れたら、俺と七海が膝から崩れ落ちる金額が飛ぶ。
避けたい。……でも、若い子ってこういうの好きそうだし、俺も七海も昔から好きだった。
「こっちもなぁ……落ち着かねぇよな」
趣味部屋は壁一面、漫画とフィギュアのケース。滅多に入らないから実質コレクション部屋で、部屋の真ん中に布団を敷くしかない。視線もすごい。落ち着かないだろ。
「……本人に決めてもらうか」
俺が悩んだところで仕方ない。
「ごめんね。部屋、空きがあるにはあるんだけど……」
濁しながら、二つの部屋を案内した。
「……すごい」
隣り合うゲーム部屋と趣味部屋を交互に見て、楽しそうに目を輝かせている。
……よかった。こういうの、好きなタイプか。
「こっちの部屋、いいですか……?」
相当悩んだ末に選んだのは、趣味部屋だった。
まさか、あのフィギュアの視線が気になって寝れなさそうな部屋を選ぶとは思わなくて、ちょっと驚く。
「いいよ。漫画も好きに見て」
「……ちょっと内容が刺激強いのあるけど、それは七海の趣味だからね」
念押ししておく。
七海は基本ジャンプ派だけど、気まぐれで少女漫画も読むし、たまに俺にはよく分からないジャンルも置いてある。夢とかBLとか、ああいうやつ。
「分かりました」
俺の趣味だと思われて、キモい男認定でもされたら地獄だ。
七海、ごめん。俺は逃げる。
一人の時間も欲しいだろうし、俺はそのまま買い物に出かけようとして――ふと思い出してチャッピーを開いた。
『高校生/同僚の娘/預かる/どうすればいい?』
返事はすぐ来た。
「え、二人っきりにならないように?生活ルールを明確にして……」
二人っきりにならないって、どうすんだよ。無理だろ。
俺、今休みで家にいるし。
しかも白井からさっき来たメッセージには、「高校、今調子が悪くて行けてない」って書いてあった。
必然的に、家に二人になる時間は増える。
俺は頭を抱えた。
やっぱり、気軽に引き受けるもんじゃなかった。心底そう思う。
……とりあえず、現実逃避で買い物に行こう。




