第二十四話:想像と現実
「……はえ?」
「はにゃ?」とか「はえ?」なんて使っていいのはYouTuberかアニメのキャラだけだと思ってたのに、いざその場になると、驚くほど立派な「はえ?」が出た。
「……ゴホッ。よろしくお願いします」
白井から「準備できました」と連絡が来て、送られてきた住所を頼りにナビの案内についていく。
信号待ちで「もうすぐ着く」と送った。
見えてきたアパートの前には、白井と――大きな荷物を持った白井の娘が立っていた。
……思ってたより、ずっと大人だった。
「わ、わかった」
え、何歳?
どう見ても高校生くらいだろ。というか、白井、お前いくつだよ。
頭が真っ白になる。俺の顔色をうかがうみたいに、白井が慌てて口を開いた。
「色々、最低限はできると思うので……」
「手がかかることは、ないと思います」
いや、そういう意味じゃ――と喉まで出かけたツッコミを飲み込む。
「……よろしくお願いします」
娘はそれだけ言って、後部座席に乗り込んだ。荷物も多いけど、なんとか入りきった。
「もし大変でしたら、その時は迎えに行くので……」
白井が何度も頭を下げる。
「分かったから。早く入って寝とけよ」
娘の前で何度も頭を下げさせるのも悪いと思って止めると、白井は「ありがとうございます」と小さく言った。
車を発進させても、白井はしばらく見えなくなるまで、こっちを見ていた。
白井が見えなくなって、最初の信号待ち。ルームミラーを見る。
後部座席の娘の顔は強張っていた。
……そりゃそうだ。
幼い子なら手はかかるけど、慣れるのは早いと思ってた。
でも今回は逆だ。高校生くらいの女の子が、父親の同僚の男の車に乗ってる。警戒するし、気まずいに決まってる。
昼飯も夕飯も、弁当も作るつもりだったけど、これじゃスーパーに寄るのも気まずい。
一度家に降ろしてからが無難だろうと、まっすぐ家へ向かった。
「着いたよ」
駐車場に停めて声をかけると、娘はびくっと肩を揺らした。考えごとをしてたのかと思ったけど、家そのものを見て固まっていた。
「あー……俺の彼女さ、いいとこに勤めてて」
「副業もいくつか、軌道に乗ってるんだよね」
賃貸だけどね、と続けかけてやめた。
俺が一円も払ってないのに、変に自虐を挟むのは最低だと思ったから。
「……すごい人、なんですね」
若い男に見える俺が、それなりに大きい家に連れてきたから驚いたんだろう。
「俺にはもったいないくらい、すごくて……愛おしい人だよ」
年甲斐もなく照れながら言うと、娘に微笑ましそうに見られた。




