第二十一話:止まらない不安
風呂に浸かり、晩飯を作って食べ、弁当まで準備して。忙しかったけど、充実した一日だった。
俺はリビングでスマホを開く。
――仕事関係の連絡、何もないですよね?
白井とのメッセージにため息が漏れた。明日も、明後日も、明明後日も。いつ仕事が再開するのか分からない不安。
派遣の“再教育”ってなんなんだろう。もう若くないし、物覚えもよくない。俺でも覚えられるのか。そんなことばかりが頭をよぎる。
ぽんずは七海が連れて二階の寝室へ行った。
いつもなら聞こえるはずの、ぽんずのいびきが聞こえない。それだけで、余計に落ち着かない。
「小論文……練習しよ」
不安を忘れるみたいに、例文と練習問題を開く。
でも丸つけをする時になって、自分の答えが合ってるのかすら分からない。これで練習になってるのか? そんな不安がまた湧いてくる。
知恵袋で聞いてみよう、なんて考えが浮かぶ。
けど、袋叩きにされる光景が目に浮かんで、スマホを置いた。
結局、小論文は書きっぱなしのまま。
時計を見ると、もう0時を指している。白井とのメッセージの最終が八時。――たった四百字を一枚書くだけで、四時間かかっていた。
試験時間は一時間くらいだろうに、本当に俺にできるんだろうか。
小論文には時事がつきものって書いてあった。ニュースも見ないといけない。……時間が、足りない。
圧倒的に時間が足りないのは、俺の覚悟が足りてないからだ。そう突きつけられた気がした。
「いっちゃん、まだがんばってるの?」
ため息が出そうになった瞬間、七海の声がして、飲み込む。
振り返ると、目をこすりながら、ぽんずを抱えて立っていた。
「パパがいないから夜鳴きしちゃって。珍しいことしたからかな?」
寝室で七海とぽんずが二人で寝ることは、滅多にない。
俺とぽんずが寝るか、ぽんずがリビングで転がってるか。だいたいそのどちらかだ。
夜鳴きなんてする子じゃないと思いつつ、俺がいないとだめなんだなって、愛おしさが増す。
「俺も寝ようかな」
そう言って七海からぽんずを受け取る。
「一日にどれだけやるかじゃなくて、三十分でもどれだけ毎日できるかが大事」
「無理はしないんだよ」
そう言って頬にキスをしてくれた七海に、少しだけ恥ずかしくなった。
何をするにも唐突で驚かされるから、こういうタイミングのキスにも、まだ照れる。




