かわいそうだという心
いつか見た夢の話。
ふわっとしています。
初めてなのでお手柔らかにお願いします。
──ずっと待っていてね。
白い髪の男の子と黒い髪の男の子、そして私。
白い男の子と私は、親同士が決めた許嫁でした。
それでも私は白い男の子が好きでした。
少し年上の白い男の子は、いつも優しくて笑顔で一緒にいると落ち着きました。
それはきっと憧れからはじまった、淡い淡い気持ち。
黒い男の子は白い男の子の弟で、私と同じ歳。
素っ気ないし、たまに意地悪だけど、なんだかんだいっていつも遊んでくれてました。
黒い男の子とたまにけんかして、白い男の子に慰めてもらいながら、みんなで大きくなるんだと思っていました。
でも私はもうすぐ死ぬとわかりました。
そういう運命で。
そういう力で。
そういう家系だったので仕方ありません。
そういうものだって、小さい小さいときから教えてもらっていました。
その時が来るかもしれないし、来ないかもしれないって……
もしかしたら私は違うと思っていました。
でも、想像していたよりもずっと早くて、自分は大丈夫だってどこかで安心していたのに……
白い男の子に待っていて欲しいと伝えました。
今の私は眠っちゃうけど、別の私がまた会いに来るから、絶対会いに来るからと。
いつもの笑顔で待っていてくれると言ってくれました。
私は私がわかるように、白い男の子に魔法をかけました。
魔法は人生で一度だけ使えます。
白い男の子は他のことに使うべきだって言ったけど、私はわがままを言いました。
──そして私は死にました。
わたしが私だったことを思い出したのは、わたしがあの時と同じ時を刻んだときでした。
会いに行かなきゃっていう焦燥感であふれた時、黒い男の子が現れたのです。
「迎えに来たよ」と。
わたしは黒い男の子に連れられて、白い男の子の元へと行きました。
白い男の子は白いおじさんになっていました。
思ったより時が過ぎていたようです。
それでも私は白い男の子が好きでした。
だから、わたしは約束通り結婚しましょうと言いました。
でも、白い男の子は笑うのです。
「もう別の人と結婚もして、子供もいるんだ。待てるはずがないだろ?」
私の知っているあの頃のように、優しく笑うのです。
わたしは泣きました。
「ああ、やっぱり……」
気づかないように、知らなければそれは事実ではないと見て見ぬふりをしていたそれが、重く重くのしかかるのです。
地面に染みこむ水をただ見ていたわたしの背をそっと撫でる感覚がしました。
黒い男の子が、泣くのを我慢しているような痛みをこらえてるような難しい顔をして、わたしの背や頭を撫でてくれます。
それは私が、よく知っている黒い男の子でした。
──どうして黒い男の子はわたしと同じなの?
黒い男の子はあの時と同じ子供のままなのです。
彼は答えてくれません。
それでもわたしは白い男の子が好きなのです。
何度か足を運ぶのですが、門前払いです。
そして白い男の子の奥さんと子供に会いました。
そこにはわたしにはない幸せがありました。
わたしはなぜまたここにきたのか。
わたしはなぜまた産まれてきたのか。
わたしはなぜあの時死ななければならなかったのか。
わたしはなぜなぜなぜ……
黒い男の子と白い男の子が言い争っているのを見ました。
わたしは二人の間に入って、白い男の子の顔を見上げて落ち着いてほしいとお願いしました。
一瞬すごく驚いた顔をした後、目を伏せ悲しそうに笑います。
「やっぱり君なんて……大嫌いだよ」
どうして、どうして。
わたしはこんなにもあなたを想って……
どうしようもなく、あなたがかわいそうだから──
あれ、わたしいま……
「お前は相変わらず残酷だな。死んでもそれがわからないのか」
黒い男の子はいつもわたしにいじわるです。
見たくないこと気づきたくないことも教えてくるのです。
「弟は君が戻るまで眠っていたんだよ。僕にはそれができなかった」
黒い男の子は私が死んだ後、魔法を使っていました。
わたしが起きるまでそのままの姿で眠ったのです。
「僕よりよほど君にふさわしいと思わないかい?」
白い男の子は私のことを愛してくれていました。
でも、わたしが白い男の子にむける想いは憐憫なのです。
だってかわいそうでしょ?
いつかは死んでしまう私を愛してしまうあなたが。
いつか戻ってくるわたしを待ってしまうあなたが。
この気持ちに白い男の子は気づいていました。
そして、なにより……
背にかばう黒い男の子がわたしのことを愛していること。
わたしが黒い男の子を愛していることも……
「だってかわいそうでしょ……」