どうやら俺は女になったようだ
20時頃に投稿した作品だけど、結構駆け足で仕上げをしちゃったから、25時現在、今改めて書き直しました(*_ _))*゜
途中途中、結構追加された内容もあるので、初見さんも、そうでない方も、バーっと流し読みしてくれると4話が飲み込みやすいかも。(内容が変わったわけではない)
眠くて後半、手ついてないとこあるけど、それはまた後日……おやすみなさい____
私は静かに、ゆっくりとトウガに迫ると、その襟元を強く引き寄せた。
「…ッ!ち、近い…っ」
その顔は文字通り目と鼻の先。さて、ここからどうしてやろうか。
「このままどうして欲しい?」
「は、はひッ…!?」
「キミの好きなようにしてあげるよ」
私は妖艶な笑みを浮かべると、トウガは瞬く間に耳まで赤く染め、私の手を振り解いて離れた。
そうそう。この絵面が見たかったの。
「おぉお、オレはッ____いや、そもそも!今仕事中だよッ!?何して____」
「何って、私はただトウガさんの襟引っ張っただけだよ?デコピンの仕返し」
「なッ____」
トウガは一瞬身体を強張らせて愕然と目を見開くと静かに口を閉じ、脱力した。
「…オレ、この子送ってくる。先戻ってて…」
それだけ言い残すと、私に背を向けて飛び立って行ってしまった。
戻ってって言ったって、一体どこに…。
そして私は、トウガにこの身体と服をもらった場所へ行くことにした。
少し歩いて、私は目的地に到着した。そこは先の見えない薄暗く長い廊下で、階段を降りてすぐ下の場所に位置する。
そんな人気のない廊下の壁に点々と佇む西洋風の扉はどれも趣があり、霊界とは思えない程にとても閑静で落ち着いている。
そうだ。あの人来るまでやる事ないし、少し探索でもしようかな。
自分の足音が暗闇にこだまする中、壁伝いに見て歩くと、一番手前にあったポツンと佇むドアの前で立ち止まった。さっきまでは何も感じなかったのに今になって突然、妙に惹かれる。
「ここなんだろ…。お邪魔しまーす…」
私はなんの気無しにドアノブを握ると、そのドアはガチャリと音を立てて簡単に開いた。胸の高鳴りと何かイケナイことをしている、という感覚の中、部屋に入る。しかし、そこに広がっていた景色は意外なものだった。
部屋の中は茶系統で統一され、落ち着いた雰囲気が漂う。奥の部屋から覗くダブルベッドの上には女性物の下着が置かれており、入ってすぐの所に位置する浴室も上半分がガラス、下半分がすりガラスで造られていて、中が丸見えだ。あたかも、ラグジュアリーホテルの一室か、都心のお高いラブホテルの一室のようだ。
「み、見てはいけない物を見てしまった…!」
私はおずおずと部屋の扉を閉めると、そっと回れ右をして来た道を戻ろうとした。その時だった。
「今、見たよね?」
「……ぇ…っ?」
突如として目の前に影が落ち、誰もいなかったはずの広い廊下に低く声が響く。この声は___
「な、何を…ですか…?」
「ドアの中、見たよね?」
トウガが「いつもの顔」で私に問いただす。
やばい、冷や汗が止まんない。
「見てません……」
「そう、じゃあその部屋の中にキョウ『ちゃん』連れ込むって言っても何も問題ないよね?」
「…へっ__?」
「それじゃ、今日からはオレの部屋で一緒に生活しよっか!そうすれば経費削減にもなるしね!ほら、入った入った!!」
「あああああ____ッ!」
そうして私は必死に抵抗したもののそれも敵わず、トウガに無理やり抱き抱えられた私は彼の部屋へ連れ込まれてしまった。
部屋に入ると、私は彼の腕からようやく解放される。しかし、鍵はオートロック式で出られない。
閉じ込められた____!!
私はどこか他の場所に出口はないかと辺りを見渡すと、意外なことに気が付く。こうして改めて見ると、今まで私が見てきたラブホテルのイイトコ詰め合わせセットみたいなそんな部屋なのだ。
ふかふかのソファーに、お高めの空気清浄機&高性能空調。お風呂はジャグジー&ライト付きでオマケに防水テレビまで付いている。よくよく奥の部屋を見ると、ベッドの前には小型ながらも壁掛けテレビまで付いているようだ。
「『オレの部屋』って言ってましたけど…。めっちゃイイトコ住んでますね…。羨ましいです…」
「あれ?嫌がってたんじゃなかったの?」
「いや…なんか部屋の設備見たら一気に気持ちが落ちついちゃって。やっぱすげえなぁって」
「ふーん…?」
「なんですか?」
トウガはこちらをマジマジと見ると、今度は俺をお姫様抱っこして無理やりベッドまで運んだ。
リビングでは何も感じなかったけど、寝室に来た途端に甘くて華やかな匂いが鼻に付いた。ジャスミンとも似てるけど、もっと濃いような____
「さっきから全然嫌がらないね。なんで?」
「いや…なんか、匂いが…」
「…へえ」
トウガはどこか悪巧みするかのようにニヤリと笑うと、俺をベッドにゆっくりと降ろした。
「でもさ。オレの呪力相当強いはずなんだけど、『キョウスケ』のもやっぱ相当なんだね?一体どんな特殊ステータスを持ってるんだろう」
「え…?」
俺は何がなんだか分からず混乱していると、トウガは指を鳴らした。すると、俺の眼前に手鏡が現れる。すかさず俺はその手鏡を手に取ると、その中心を眺めた。
「!?」
その中に写っていたのは、俺、つまり、「キョウスケ」だったのだ。
「ど、どういう__!?」
「オレも分かんない。けど一つ分かるのはオレの呪術を君が解いて、元の姿に戻ったってこと。君にはそれだけの呪力があるんだよ。でもね…」
トウガは静かに目を伏せると、俺を押し倒し、イヤらしい顔で俺の肩を強くベッドに押し付けた。
「今はまだ…オレの『相手』になって欲しいんだよ…ッ!」
トウガは力みながら言うと、その肩を押さえる手から一気に燃え上がるようにして黒霧が炎のようにして噴き出す。
「や…ッ、やめてください…ッ!俺…何かしました____ッ!?」
「勝手に部屋入ったからねえッ___!!お仕置きだよッ!!」
「うぁぁぁぁ____ッ!!!」
そして黒霧は俺の全身を一瞬にして覆った。刹那、視界は真っ黒に染まり、俺の意識はゆっくりと遠のいていった。
そしてふと目が覚めると、私は再び女の身体に戻っていた。そして何か肌寒い…って、え…?裸…?
「えッ!?」
「あ、おはよ。可愛かったよ。キョウ、ちゃん」
トウガは早々に目を覚ましていたようで、私の方を向き、布団に肘を付いて、ニカッと笑った。
いくら死神の仮初の肉体とはいえ、その身体はとても忠実に再現されている。しかし、皮肉にも薄暗い部屋の中でリビングから入る一筋の白い光に照らされた彼の首筋は、どこか艶やかに見えてしまうのだった。
トウガさんはだいぶリラックスしてるみたいだけど、私はこんな深夜ドラマ的展開、絶対ムリ…ッ!!
「おお、お、俺…俺ですよ!!男なんですよ!?中身…っ」
「知ってるよ。だって助けたのオレだし。それに、中身どうとか関係ないよ。眠ってたらフツーに可愛い女の子だよ」
もはや物も言えない私に、素っ裸で布団の中から私の頭を優しく撫でるトウガは、狂った笑顔を浮かべていた。
その後、結局その成り行きでトウガと「キョウ」として一緒にその部屋で寝泊まりする事となってしまった私は、霊界のいわゆる「市役所」に二人で足を運んでいた。
私たちの腰掛けるソファの眼前にある間仕切りのカウンターの上には「入居・退去手続き」とデカデカと書かれた看板があり、その下では様々な世代の死神たちが精霊の案内の元、各々の手続きをしていた。
しかし、私が「キョウスケ」だとバレてしまえば最期、セイロクに永久追放&一生霊界と現世を彷徨う羽目になる為、何があってもこの関門だけは一発で潜り抜けなければいけない。
「それでは次の方〜」
「はーい」
トウガは軽やかに返事をすると、間仕切りの間のカウンターへと足取りよく向かって行く。私も少々怖気付きながらも、彼の後に続いた。
「こんにちは。本日はいかがなさいましたか?」
「新規入居者の希望をしたいんですけど、この子をオレの部屋に住まわせたくて。その手続きをお願いします」
「かしこまりました。では、『手帳』を見せて頂いても宜しいでしょうか?」
「手帳…?」
にっこりと受付の精霊は笑顔を作ると、そのシルクのように透き通った手を私に向かって差し出した。
手帳なんて特に持ってないし、突然言われてもどうすればいいかなんて分からない…。
すると、横から助け舟を出すかのようにトウガが言葉を被せた。
「あー…。この子まだ研修生で。今オレが色々面倒見てるんですけど、現世上がりなもんで手帳も未取得でして…。可能であればでいいんですけど、手帳、作ってもらえませんかね…?」
トウガは困ったようにはにかむと、彼は手元に目線を落として、小さく「参ったな」と溢した。その手には、いつの間にか手のひらサイズの皮の表紙の手帳を持っている。中には何やら文字が細々と書いてあるが、この角度からだとよく見えない。
でも何か、違和感を感じる。私に呪力を使った時と同じような空気を感じる気がするのは気のせいだろうか____
「うーん…。分かりました。今回だけ特別ですよ?その代わり、アナタが雇用主としてしっかり彼女を管理してくださいね。本日、手帳はお持ちですか?」
「はい」
トウガはにこやかに頷くと、先ほど手にしていた皮の手帳を精霊に差し出した。
手帳ってマジ手帳なんだ…。もっとこう…コンパクトじゃないんだ…。
「ありがとうございます。拝見致します。ええと__まず基本登記は…トウガ様を元にして作らせていただきます。お連れ様の詳細の登記につきましては、おおよそ半年ほどかかると思います」
「えっ、そんなに!?」
「ごめんなさい。現世の登記とは違って、死神としての評価や能力、知能、呪力、経験値などが記載されるので、それを割り出すまでにそれなりに時間を要するのです」
「なるほど…」
「割り出すって言っても、結局見られるのはどれだけ真面目に仕事してるかってとこ見られてるだけで身体測定みたいなのは一切無いから、その辺よろしくねー」
「えっ…」
「じゃ、ありがとうございました!手帳よろしくお願いしまーす!」
私は思わず固まるも、既に話終わって一仕事終えた様子のトウガは知らぬ間に席を立っていた。私は担当者の精霊に一礼するとそんな彼の後を慌てて追った。ふと彼の手を見ると、その手には薄らと黒い霧が纏われていた。
再び部屋に戻ってきた私とトウガは、一休みにと彼が淹れてくれたお茶を啜っていた。
なんやかんやで色々あった。もう深夜くらいの時間らしいけど、思ったより長いことこの人と過ごしてるな…。最初はあんなに嫌だったのに、今ではちょっとした友達みたいな…。
「…それで、実際の所どう?嫌?」
「え?」
「オレと一緒に住むってこと。結構強制する形になっちゃったし、今だって、半ば強制的に死神になってる感じでしょ?…嫌なら、すぐにでも転生までの間の家の手配と転生の準備を始めるよ。本来であれば、亡者…あ、現世からこっちに来た人のことね。専用の宿泊施設に泊まってもらうんだ。けど、キョウは色々と振り回しちゃったから、さすがにそんな所に連れて行くことはできない。それに、今更連れて行ったらセイロク様から怪しまれそうだしね」
トウガは温かなオレンジ色の光に顔を染めながら、どこか寂しげな笑みを浮かべた。
この人は読めない。本心で言ってるのか、嘘を並べているのか。笑顔の裏の腹の底が知れない。けど、私は既に現世では実在していない。どこで何をしていようが、私の勝手。一応この人には存在を助けてもらった恩があるし、せめてその恩くらいはちゃんと返さないとな。
「嫌じゃないよ。トウガさんと住むの。死神の仕事も、やるって言ったの私だし。それに今更転生しろって言われたって、またボッチになるのがオチだし…。だったら。もうちょっと付き合ってよ、『トウガさん』」
私はアニメで見たようにマグカップを両手で包み込むと、トウガの名を呼ぶと同時に上目遣いで首を傾げる。途端に、彼の瞳孔が微かに開く。
「へ…っ!?い、いいけど…?」
「ありがと」
私はカップの中のお茶を全部飲み干すと、大あくびを漏らす。霊界には昼夜という概念は無く、時間の捉え方も人それぞれのようだが、トウガいわく私が死んでから霊界に来ておよそ十数時間ほど経っているらしい。
私はふらふらと席を立つと、突如として始まった「死神としての生活」の一日目を終えるようにして、すぐ側のソファに倒れ込むようにして深い眠りに就いた。
翌日。顔の違和感で目が覚める。
「あ」
まだ短い期間ではあるが、未だかつてないほどに人間らしい表情をしたトウガの顔が眼前に飛び込んでくる。
「何してるんですか」
「な、なにもしてな___」
トウガは慌てて私のほっぺたを突いている指を引っ込めようと肘を引くものの、私はそれを逃すまいとがっしりとその手首を掴んだ。
やったぜ、捕まえた。
「何してたの?『トウガさん』」
私は改めて、女の子らしい笑顔で問い詰める。一応、イタズラのつもり。
「ひぇ…っ。ご、ごめんなさい…っ、その…可愛くて…ぷにぷにしてたから…つい……」
「ふーん」
あれ。予想以上にビビってる…?私の寝起き、そんなに怖い?じゃあついでに…
「じゃあ、この間私もトウガさんも裸で寝てた時、何してたの?」
「あっ…あの時は…っ」
「うん」
…私の今世の初めても最後もこの人…。中身も女、もしくはゲイだったら問題ないんだけど、私は異性しか好きになれないからな…。…今の所は。…え、もしかして、この人目覚めさせようとしてる??
「その…キョウが困ってる姿想像するとなんか可愛く思えてきちゃって…。確かに脱がせたりはしたけど、キョウが想像するようなことは何もしてないよ。いくら肉体的に死んでるとは言ったって、『そういうこと』は本当に大切な人として欲しいから___」
「えっ…」
トウガは静かに言葉を紡ぐと、最後に、「ごめん」と付け足した。その顔は、どこか憂いを帯びている。
私は一瞬困惑した後、そのトウガの言葉に思わず心が揺らいだ。
そんなこと、言うのか。…でも、これから先、本当に大切な人なんて現れるのかな…。私なんかを大切にしてくれる人なんて、いるのかな____
最後まで読んでいただき、ありがとうございました
⸜(*ˊᗜˋ*)⸝
今日はちょっとグダってたかも??
なんかこれ読んでたら、というか色々考えてたら入浴シーン挿入したくなってきた⸜(*˙꒳˙*)⸝
ということで、こうご期待!
ではではまた明日もお楽しみに〜!!