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二人のその後(1)


「ねえ、トウガさん」


「なに?」


「…笑わないで聞いてね」


「うん」


「こっちの世界で好きな人ができたら、その人とくっつくことはできるの?」


「…状況と状態によるかな」


「というと?」


「かなりドライな言い方になっちゃうけど、もしどちらか一人でも幽体がいるのであれば、その恋は実らない。ただし、仮でもいいから肉体を得られるなら話は別。キョウスケみたいな場合だね。そんで一番可能性高いのは死神に正式に就任している人と自分が正式に肉体を授かっている場合かな。ちなみに、肉体を正式に授かるってことは死神、精霊になるってことを意味するから、数百年の間与えられた業務を全うしなくちゃならない。その間、現世で人として蘇れないことを覚悟しなきゃいけない。一定期間業務を全うすれば転生の許可は降りるけど、そう早くは降りないし、降りた後も一般の魂と同じように試練を乗り越えなくちゃならないから、そう考えると今世の最期に見つけた人よりも、来世で良い出会いを探した方が良いと思うな。オレは」


トウガは冷めた声で淡々と告げると、俯いた。


今世の最期より、来世の良い出会い…か。よく言うよ、なにもわかってないくせに。


「本気で言ってる?それ」


「え?」


「…俺の初めて好きになった人はね。初めて俺に生きる意義を与えてくれたんだ。ここにいていいって思わせてくれたんだ。一緒にいるようになってからは毎日が新鮮で、嫌いだって思ってたものも、その人のお陰で本当は好きだったんだって思い出すことができた。…その人がいたから、俺は死んだことを後悔できた。きっと、別の人と会ってたら俺はなにも後悔しないまま無意味に死んで無意味に転生してた。だから今はちゃんとここで未練を果たして、大切なものに精一杯の感謝を尽くして、旅立とうって思う。…そんな風に変えてくれたんだ」


「…ごめん。…ありがとう……」


トウガは僅かに口を開くと、小さく呟いた。途端に、彼の瞳からは一雫の涙が溢れ落ちる。


「…泣いてる?」


「泣いてないよ!コンタクトがズレて…」


「こっちの世界にコンタクトとか存在してんの?」


「…ッ!」


本当にわかりやすいな。この人は。


「でもほんと、改めていつもありがとうございます」


「うん、こちらこそいつもありがとうね」


俺たちは二人で微笑み合うと、久しぶりの二人きりの休息の時をゆっくりと過ごした。



それからしばらくして、トウガは「見せたいものがある」と言って俺を部屋から連れ出し、二階のプライベートゾーンに連れ込んだ。


「見せたいものって?」


「うん、もうちょっと待ってね」


「うん」


二階のソファに横並びで腰掛け、静かにお茶を啜る。


なんだかこんなひと時が愛おしい。現世ではこんな気持ちになること、なかったな。それとも俺が見落としてただけなのかな。


「お待たせしましたでちゅー!」


「おう、ありがと」


「ハイでちゅ!」


途端にジェイが現れると、一枚のDVDディスクをトウガに手渡した。それをトウガは壁際のテレビの下のDVDレコーダーへと挿入する。


「それは…?」


「フィルムの進化版」


「いや、そんなの見ればわかるよ」


「いや、そうじゃなくて。これはフィルムの記憶を見聞きする機能に加えて、匂いや触覚はもちろん、そのフィルムの持ち主の現在の様子も監視することができるんだ」


「えっ!?ウルトラ優れものじゃん!じゃあなんでこの間それ使わなかったの?!」


「激レアすぎるから、かな?これはね、製造がメチャクチャ難しくて作れる人もメチャクチャ少ないんだ。だから、非常時以外絶対使っちゃだめって言われてるんだけど____」


「まあウチのトウガさんなんで持ってきちゃいました、と」


「えへへ」


「笑っていいとこなの?」


「まあバレなきゃ大丈夫でしょ」


トウガはどこか慎重なようで、楽観的なところがある。まあ、彼なら仮にどうにかなったとしても上手く取り繕ってくれそうだから心配しなくても大丈夫そうだけど。


「それじゃ、早速見てみよっか」


「え?はい」


そしてトウガは再生ボタンを押した。


………


……



大きくくっきりと丸い瞳に、ライトブラウンのサラサラのミディアムショートの髪。ベッドの上を飛び跳ねながらはち切れんばかり笑みを浮かべる幼い少女と、その隣を同じ容姿の少女が小さく笑みを浮かべ、座っている。


この日双子の誕生日を迎えていた一家は、都市部にて双子の好きな映画を鑑賞し、ビジネスホテルの室内で寛いでいるところだった。


「それにしても、ホントこの子たちって不思議よね。____まあ、アナタとアタシに似たってことなんでしょうけど」


「ね。でも、二人はまだ小さいしこれからどんどん変わってくよ。子育てはその時その時が一回きりだから、ちゃんと目に焼き付けておかないとね。…でもまさか、ボクの好きなアニメを二人も好きになってくれるなんて…。ボク感動だよ〜ッ!」


父、ひかるが天を仰いでいると、ベッドで飛び跳ねていた桃花とうかはベッドから飛び降り、両親の顔を見上げる。


「パパ!ママ!!」


「どうしたの?桃花」


「映画、面白かったね!」


「うん、でも桃花には難しくなかった?」


「ううん、全然!なんかわかんないんだけどね、わかっちゃうの。ね!かなで!!」


「うん。なんかわかんないけどね、心がぽかぽかするの。桃花のことも、パパのことも、いっぱい好きって思うの。あと、誰かのことも少し…」


すると、母、香澄かすみは頬を膨らませて奏の方を向いた。


「えーっ?それ、ママじゃないのーっ!?」


「あはは、もしやもっとアニメの知識を身につけねば認めん!ってか?なーんてな!」


「そうじゃなくて、ママはママで大好きだよ。でも、なんか違うの。桃花とパパはちょっとトクベツなの。特に桃花は、世界で、宇宙で一番トクベツ」


「アタシも!!ママのこと、すっごくすっごく、す____っごく大好きだけど、パパと奏はトクベツ!でもでも、奏はアタシの中の一番星なの!!」


桃花と奏は口を揃えて両親に迫ると、香澄はどこか懐かしむようにして息を吐いた。


「…やっぱり、アナタに似たんだわ。煌」


「ええ?」


「前言ってたよね。パパ。家族のこともすっごい大切だけど、それ以上にママのことが大切なんだって」


「「え」」


途端に煌と香澄の視線は奏に集まる。これは以前煌が香澄の両親に対して言った言葉で、この言葉があったからこそ二人が結婚できたと言っても過言ではない。


「…多分この子たちは思考がどうっていうよりは、遺伝子レベルで煌と繋がってるんじゃない?」


「…それ言うなら、魂レベルじゃない?」


「へっ!?」


「『いでんし』って、血のことだもんね!アタシたち、パパとママのはんぶんこだもんね!!」


「さすがボクの娘!頭いいなーッ!」


「ぼくはー?」


「もちろん奏のことも誇りに思ってるぞー!」


煌は桃花の頭を撫でると、心配そうに顔を上げた奏の頭をわしゃわしゃと撫でた。すると、二人の顔には笑顔が広がる。


「さ!そろそろお風呂行こうか!ここのホテルの温泉は種類は少ないみたいだけど、源泉かけ流しのところもあるらしいぞ!」


「「げんせんかけながし?」」


「簡単に言えばお肌がきれいになって、疲れもよく取れる温泉って感じかな?」


「へえ!じゃあアタシママと入る!」


「ぼくもー」


「ええ、なんで?」


「だってパパはお肌のケアとかしてないし、アタシとか奏のドライヤーとかヘタクソじゃん!!」


「えっ…」


「あはは!!煌は二人の専属美容師失格ね!」


「そんなー…」


「じゃ、アタシたちは先行ってくるわね!」


「え」


「またね!パパ!」


「またねー」


そして、三人は賑やかに部屋を出た。

こんばんはぁ!!♡(*´꒳`*)(*´˘`*)♡

とーかだよ!かなでだよ〜


んとねー、お風呂行こうとしたら なんかおはなししてって急にいわれたんだけど…なにおはなしすればいいんだろう…?

とーか、じゃああのこといったら?

あ、そーだね!さすが かなで!!んとねんとねー!アタシたち、生まれる前のきおくがあるの!

パパがトクベツなのも、生まれる前から おともだちだったからなんだよね。ぼくは、おとこのこだったみたいなの。

そーなの!でもねー、あんまりちゃんとは おぼえてなくて…。どこからきた、とか、どんな人だった、とか。ただ、かなでのことが だいすきだったのは おぼえてるの!!

ぼくも。いつからかいっしょにいて、こうして家族になって…。思いだすと、なんだかこころが ぽかぽかするんだよね…。

ね。…え?そろそろ終わり??

…これ読むの?じゃあ…

「「また明日も、お楽しみにーー!!」」


すごいねー、また揃った〜!! ね!

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