そんなこと、知らなかった
今日ちょっと、スランプ気味かも?(・ω・`)
私はボーッと考えながらふらふらと歩く。すると、突如として目の前に光の粒子が現れた。
「おわぁぁッ!?」
「可愛らしい女の子がそんな口調で話しては、せっかくの可愛らしさが台無しですよ」
「へッ!?」
光の中から聞こえた聞き馴染みのある声に私は思わず後ずさった。
「ジェイから全て聞きました。私のこの身体を取り戻す為に命をかけてくださった死神様がいらっしゃると。貴女様ですね、キョウ様」
「は、はい…!?」
私は思わず身構えると、光が一纏りになり人型になった。すると、そこにはリンドウの姿が現れる。
「キョウ様。申し遅れましたが、改めまして私、名をリンドウと申します。ジェイとは旧友で、仕事仲間でもあります。そこでキョウ様。誠に図々しい事は承知の上で私から一つお願いがあるのですが……」
「なんでしょう…」
「私を、キョウ様の従魔にしていただきたいのです…!」
リンドウはそう告げると、突然私にひれ伏した。髪が艶やかに揺れ、シースルーのボレロがふわりと風に靡く。
「ま、待って。私が従魔なんて…」
「『なんて』じゃないですよ。反対に、死神様なのに従魔が使えていないのはおかしな事なのです。死神様は業務量が多い為、通常二、三体ほどの従魔を従えております。しかし、貴方様はまだ誰も従えていないでしょう?それならまずはこの私が…っ!助けていただいた命に変えてでも、キョウ様をお助けさせていただきます」
「は、はぁ…。まあそれで色々便利になるならそれでいいけど…。あ、でもトウガさんは?あの人はジェイしか連れてないよね。確かジェイが、『ボクは選ばれたんでちゅ!』みたいなこと言ってた気がするんだけど…。あれってどういうことなの?」
「きっと、トウガ様はあまり心の内を多くの者に覗かれたくないんでしょうね。だから従魔はあの子しかいないんじゃないかしら。でも、あの方は本当にジェイのことを気に入っているから…。私では遠く及びませんの。ふふ。かと言って、私もジェイに負けているわけではありませんよ?私は精霊の中で唯一、呪力を操ることができる精霊なのです」
リンドウは得意げに胸を張るが、私には何のことかさっぱりだ。
そういえばこの前も、キョエが呪源がどうとか言ってたっけ。それと何か関係あるのかな。
「わからないようでしたら、精霊と呪力の関係性について改めてご説明いたしますよ?」
「…うん、じゃあ」
「はい」
リンドウはにっこりと笑うと、口を開いた。
「まず____」
彼女の説明によると、こうだ。
精霊は基本的に呪力に弱く、霊力に強い。大半の精霊は霊力を糧にして活動、生命保持をしていて、その霊力が無くなってしまった場合、死神の呪力が尽きた時と同様に、休息が必要となる。
しかし、リンドウの場合は呪力が使える為、いつでも呪力と霊力を切り替えて活動をすることができる。だが、あくまで肉体は精霊であり、適応しやすいのは霊力である為、呪力を使用した場合は力の消耗が激しく、通常の倍の速度で消費してしまう上、リンドウの呪力は彼女の持つ霊力の半分ほどしか持っていないという。要は緊急処置程度、ということのようだ。
「____以上です。何かご質問はありますか?」
「んー…。もう、疲れたからいいよ。けどさ。一つ気になってたことがあるんだ」
「なんでしょう?」
「ジェイに頼まれてエミとユウキのモニタリングをしてくれてたでしょ?でも途中で急に接続切れちゃって…。何があったの?私その辺り行ってみたんだけど、リンドウの宝珠が落ちてる以外は何も気づけなくて…」
「…実は私もわからないのです。ただ一つ確信を持って言えるのは、胸を抉り取られたような感覚があった、とだけ…」
胸を抉り取られた…?
「それってどういう…?」
「…私にもわかりません。…ただ、こんなことができる人物は本当にごく一部の者です。それに、こんな公然の場で話してしまうのは、それこそキョウ様の命にも危険が及びます。一度帰りましょう。トウガ様の元に」
「うっ…。でも私、今度はめちゃくちゃ面倒くさいヤツって思われてないかな…」
「大丈夫ですよ、きっと。少なくとも私の知るトウガ様はほんの少しのことで怒ったり、情緒が乱れたりような、そんなお方ではございません」
「…そっか。そうだよね。考えすぎだよね…。よし、帰るか…」
そして私は新しく仲間に加わったリンドウと共に、トウガの元へと帰っていった。
リンドウの転移魔術を使いトウガの自宅の前まで来ると、やけに物静かな空気が漂っていた。
「…もしかしてトウガさん、出掛けちゃった?」
「入ってみましょうか」
「え」
なに、ピッキングでもするつもり!?
「ドア、空いてるみたいです」
「…ほんとだ…」
私がドアノブを捻ると、ドアはガチャリと音を立てて簡単に開いた。
曲がりなりにも、ここは他人の部屋。赤の他人の私が勝手に入っていいんだろうか…。
「お、お邪魔しまーす…。トウガさーん…?戻りましたー…」
私の声が静かに響く。どうやらトウガどころかジェイすらも、この部屋には居ないようだ。
「…ちょっと待ってよっか」
「はい」
それから、かなりの時が経った。
正確に時を刻むものがないからわからないものの、リンドウの体感では一週間ほど経っているらしい。彼女の体内時計はかなり正確らしく、周囲の精霊たちからもその時間感覚を重宝されているらしい。
「…ねえ」
「はい」
「普通主人がこんなに帰って来ないことってあるの?」
「ないですね」
「じゃあさ」
「はい」
「なにしてるのかな?」
「……」
「……」
俺たちは再び静寂に包まれる。気づいた頃には俺の身体も幽体に戻り、ソファの上にだらりとだらしなく寝転んでいる。
しかし、それも仕方のないことなのだろう。一週間なんの娯楽もなく、ただ呆然とトウガを待ち続けているだけなのだから。あまりに暇すぎて、万が一に備えた霊力のトレーニングをリンドウき付き合ってもらったくらいだ。
「ねえ、一つ聞いていい?」
「なんでしょう?」
「この前俺さ、トウガさんに『好き』って言ったんだ。そしたら、『えーっと…』って返されて…。それって、どういう意味だと思う?」
「そうですね…その前後のお話を聞かないことにはどうとも答えられません。普段トウガ様はキョウスケ様に対してどのような態度なのですか?」
「どうって…。まあ…仲良いかな?」
「なるほど…。では、キョウスケ様と話す時、トウガ様はどんな顔、どんな態度が多いですか?」
「難しいな…。少なくとも、喜怒哀楽がハッキリしてるよ。でも、比較的笑ってることが多いかな」
「なるほど…。それなら答えは簡単です」
「え?」
「きっとその時、トウガ様は驚いただけでしょう。あの方もキョウスケ様と同じ気持ちでいた。それなのに突然自分の気持ちが相手の口から飛び出してきたら、驚いて言葉に詰まってしまうのも無理はないでしょう?もしかしたらジェイからも聞いているかもしれませんが、トウガ様は普段、喜怒哀楽を表に出さない方なんです。なのできっとキョウ様は特別な方なのですよ。ふふっ」
「マジで…」
俺はとんだ勘違いをしていたことに今更気がつき、右手で両目を覆い隠すようにして押さえつけた。
「やっちまった……」
深く息を吐くと、そんな俺の肩に柔らかく温かな手が添えられる。
「大丈夫」
ふと見上げると、しとやかにリンドウが微笑んでいた。そしてその笑顔の横には、受話器の形に固定された右手が固定されていた。
「…ん?」
「ジェイに連絡しました。トウガさん、ずっと貴方を探していたみたいですよ。毎日寝ずに、この辺りから収容所、裁判所、転生の特殊空間…。ありとあらゆるところを回ったみたいです」
「え、トウガさんが…?」
「はい」
俺…なんてことしたんだ…。今まで散々振り回したのに、また………。
「ただいま!」
お疲れ様でちゅ!!
久しぶりのジェイでちゅ!
ボクがここに出てくるの、いつぶりでちゅ?
ずっと忘れられてたでちゅ?…あれ、なんか今、やべっ、バレたて聞こえたような…。
…なんかボクの扱い、雑な気がするでちゅ…。
あ、それと、言う機会なさそうだから一応言っとくでちゅけど、実はボク、戦いも得意なんでちゅよ!!
いざとなったらトウガ様やキョウさんのお供に__
ブォォォ…
ヒィィィッ!?!?
か、風の音でちたか…。( ゜д゜)ハッ!
べべべ別に!!怖がりなんかじゃないでちゅよッ!?
ちょっと今のは驚いただけ…そう、驚いただけなのでちゅ…ッ!!
あっ、ホラ、もうこんな時間!!それじゃあそろそろお別れでちゅ。
じゃあまた明日も、お楽しみにでちゅーーッ!!!




