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新たな仲間…?


そして俺は婆ちゃんの睡眠薬入りホットケーキとホットミルクを全て口内で燃やし尽くし、見事婆ちゃんにバレずに臨戦体制を整えることができた。


「___ごちそうさまでした。美味しかったです」


「お粗末さま。さて。早速で悪いけど、お客さんに聞きたいことがあるんだ。いいかね?」


「はい。俺も聞きたいことがあるんです」


「おお、なんだい?婆ちゃんにわかることなら、なんでも答えるよ」


「実は俺、収容所に居た時に幽体になったら身体で感じることは全て今後体験できなくなるって聞いたんです。でも、川と言いさっきのホットケーキとミルクといい、俺触覚も味覚もあるなって思って。これってどういうことなんですか?」


「…ほう。それに気がついたお客さんは初めてだよ。本当はこんなこと教えちゃダメなんだけどね。コレに気づけたご褒美だ、教えてあげる。実はこの空間はね、霊界の中でもちょっと特殊な場所なの。ここは幽体と精霊しか立ち入ることが許されていなくて、もし仮に死神様やエンジェビルたちが入ってしまった場合、呪力の消耗の激しさの余り倒れてしまう。最悪の場合、消滅の可能性だってあり得る、死神様やエンジェビルたちにとって危険な場所なんだ。そして幽体はここでのみ五感が復活する。その間、川やその他の試練で各々の霊力や知能が試される。それがあまりに弱い場合はふるいにかけられて転生する前に消滅させられてしまうし、反対に全ての試練を突破すれば転生の許可がくだされるってことさ。わしから言えるのはここまでだよ」


「…へえ、なるほど。ありがとうございます。えっと、それで質問って?」


俺は婆ちゃんに質問を促すと、婆ちゃんはあの時と同じようににっこりと笑って俺に返した。


やっぱり。俺のことも嵌める気なんだ。


「ああ、川の渡り方が聞きたかったんだ。実はこの質問は渡って来れた者全員にしていてねえ。渡り方一つで、その幽体の個性が視えるんだよ」


「個性…ですか」


「ああ。例えば、オマエさんの一組前のお客さんたちは川を切って蒸発させて割ったとかなんとか言ってたねえ。それにあの子たち、死神の布切れまで羽織っておったし。きっと、訳アリだねえ」


「…へえ」


「そんで、オマエさんは?」


「ああ、はい。俺は泳いだり跳ねたり引っ掛けたりして来ました」


「…なんだって?」


途端に婆ちゃんの顔色が変わる。予想外の答えだったのか、それとも答え方が雑すぎだったのか。…いや、コイツは会話から記憶を透視できるんだったし、前者の方かな。


「えっと、泳いだり跳ねたり___」


「聞こえとる。なんだって?泳いだ?跳ねた?あの冷え切った激流の中を…?跳ねるって一体あんな…どうやって…!?」


「さあ?」


婆ちゃんの間抜け顔に、俺は薄ら笑いを浮かべながらとぼけた。俺も中々に悪くなったもんだ。


「そろそろ薬が効いてくる頃、ですよね?」


「ああそうだ、急がねば___ッ!貴様、なぜそれを!?」


「黙れババア。さっきの二人のところに俺を連れてきな」


「ひぃ…ハイ……」


俺は呪力で婆ちゃんの身体を締め上げると、その先端を尖らせ、首元に突き付けた。すると、今まで威勢の良かった婆ちゃんは瞬く間に大人しくなり、白い煙に包まれた。


「なっ…!?」


婆ちゃんを取り巻くようにして白い煙が蔓延(まんえん)したと思えば、その晴れた煙の中から中性的な見た目の華奢で若い精霊(・・)が座っていた。しかし精霊の割には全身が黒で統一されていて、オーバーサイズのパーカーまで着ている。しまいには悪魔のような尻尾や羽根、八重歯、おまけに可愛らしい角まで生えていて、この際「悪魔」と言った方が分かりやすそうなほどだ。


「…お前…。さっきの婆ちゃんか?ずいぶん若返って見えるけど…」


「ああ、間違いないよ」


「…。なんであんな格好を?そしてお前はなんなんだ?」


「わしはこの小屋に務める精霊さ。元は役所勤めだったけど、わしは能力も経験もないからこんな辺ぴなところに飛ばされちまってね。初めはあんな婆さんの姿も、こんな所作や暮らしも全部が嫌だったけど、今ではここでの生活に慣れて快適に暮らしとるよ。あの姿は、ここに来た幽体たちから話しを聞く際に安心させるためのカモフラージュなんだ。面接の時なんかも強面よりも柔らかい雰囲気のおっちゃんの方が安心するだろ?」


「…なるほどね。まあお前の話しは後でたっぷり聞いてやる。まずはエミとユウキだ。さっきの二人組のところに連れていってもらおうか」


俺は改めて眼前の精霊に迫った。が、彼は笑いもせず、怖がりもせず、ただぽつりと言葉を溢した。


「それは無理だ」


「は?」


「場所がわからねえ」


「どういうことだ?」


「わしがあの子たちを置いて来た場所は最後の試練の『十王の禁足の森』。あそこはいつも砂嵐が巻き上がってて、一回中に入るとあの森に認められるまで、一生出ることはできないんだ」


「認められるってなんだよ」


「心だ」


「心?」


「ああ。諦めない心。自分を信じる心。自分を愛する心。それを持っていれば、必ず森はその人を認めてくれる。反対に、どれか一つでも欠けていれば、森は絶対に出口には通さない」


「…っ…」


あの二人を信じていないわけじゃない。でももし仮に砂嵐に巻き込まれて、あの過酷な環境で心が折れてしまっていたら。自分を信じられなくなってしまっていたら。もう二度と、あの二人は笑顔を見せられなくなってしまうのではないだろうか。そう考えた途端、一つの思いが頭の中で一等星のように光り出した。


「行こう」


「なんだって?」


「二人を助けに行こう」


「何を言っているんだ、言っただろ?あの二人の居場所はわからない上に、認められなければ出ることもできなくなってしまうんだぞ!?」


「構わないよ。俺に考えがあるんだ」


「…?」


「そういや、お前、なんて名前なんだ?」


「名など無い。出来損ないの精霊にはそんなものはつけてもらえないのだ」


「ふーん…。じゃあ…キョエで」


「えっ…それって江戸川の黒い鳥…」


「関係ねえよ。俺のキョウスケからキョウ。あと、エミからエ。語呂的になんか良いだろ?そんでなんか口が達者だし」


「関係してるのでは…」


俺はキョエの言葉を無視すると、砂煙の巻き上がる崖上へと向かって歩き出した。




獣道を登り切り、崖上に到着するとそこには鬱蒼とした森が広がっていた。


登ってくるまでの道中はまばらに木が生えている程度で比較的見晴らしも良かったし、きっとここが目的地なのだろう。しかし、話とは別に森は濃霧に包まれていて入り口でさえ数メートル先も見えなくなっている。


「本当にここで合ってるのか?」


「ああ。今目の前に見えてる森は別のものだが、この濃霧の先に進めばオマエさんの目指す場所に辿り着ける」


「そうか…。行くぞ」


俺は小さく息を吐くと、ひんやりと冷たい霧に包まれた背の低い松の森に足を踏み入れた。


………


……



森の中を進んで、少し経った。初めは一寸先も霞んで目を凝らしても全く見えなかったものの、進むほどに霧が少しずつ晴れてきて視界が良くなってきている。少し行った所は僅かに開けた場所もありそうだ。


「そろそろだ…!」


「待て___ッ!」


やっとのことに胸が高鳴った俺は、足早に陽の光が入る方へと向かった。



いよいよ目的地に到着すると、そこはあの時俺たちがモニターで見たものと同じ景色だった。


…いや、厳密には似たものと言った方がいいかもしれない。


風は吹き荒び、砂と砂利が大地を覆う。風に乗って飛んできた小枝や小石は俺たちの身体の至る所を狙い、少しずつ、少しずつ体力と精神力を奪っていく。____のだろう。


「…なるほど。こんな感じ、ね」


「__イタッ、イタッ…!ねェちょっと…ッ!何を思ってるのか知らんけど、早くどうにかせんかい__ッ!」


「それが人にモノを頼む態度か?それと、俺はお前のその口調が慣れん。そしていい加減俺の名を呼べ。それをしないなら、俺がお前を助けることはまずないと思え」


「仕方ないね__な。まぁ話し方はクセなんだ、気をつけはするがまともな口調になるまではちょいと時間がかかる。堪忍しておくれよ?」


「…わかった」


大切なのは互いの信頼関係だ。この先、コイツには色々と役に立ってもらわないといけないからな。


「さて…と」


「?」


俺はキョエの風上に立つと、自身の身体に触れた。刹那、俺の身体は黒い霧に包まれキョウの姿へと変わる。


「なっ…!?死神__様…!?」


「悪いね。こっちが本当の姿ってわけじゃないんだけど、俺が死んでからはある人に死神として生きる意味を見出してもらってさ。騙すつもりはなかったんだけどな。まあ、お互い様ってやつだ。…それと。俺のことはキョウと呼べ」


ヘナヘナと座り込んだキョエに手を差し出すと、私は振り向き様にゆっくりと手を進行方向にかざす。すると、透明な障壁が私たちを覆うように現れた。すると、砂煙や小石、枝が壁沿いに飛んでいく。


「一体__どういう____」


キョエはすっかり怯えてしまったようで、腰を抜かして私の手も取れずに地面にべったりと座り込んでしまっている。


「正直俺自身もわかってないんだ。ただ断言できるのは____」


私はキョエの腕を掴むと強引に引き上げ、彼の身体を起こした。未だ身体を縮こめているものの、なんとか歩くことくらいはできそうだ。


「幽体だと呪力を思うように制御できないってことと、この身体はやっぱりここの空間には向いてないってことだな。思ったより呪力の消耗が激しい」


「呪力って…じゃあもしかして川を渡った時も力を使って…?」


「ああ。最初は泳いで渡れそうだと思ったんだが、意外と流れがキツかったからな。本来であれば周りに気が付かれないように素で渡るか、せめて霊力の範囲に収めて渡るかにしたかったが俺には無理だったみたいだ」


「…そ、そうだったのか…。…しかし、死神様はたまに巡回でここに精霊を送っていたはず…。なんでわざわざ単身でこんなところに…?アナタも言っていた通り、死神様はここの領域には弱い。精霊と幽体が生活しやすいよう、霊源を上げて呪源を下げてるからだ。呪力の消費量が多すぎればさっきも言った通り、肉体、魂の消滅の危険だってある…。現にこの障壁だって相当な呪力を使っているんじゃないのかい…?」


なるほどね。要は死神完全お断り空間ってことか。じゃあとっとと用を済ませて帰った方が良さそうだ。


「俺は細かいことはよくわからん。ただ、昔っから体力には自信があるんだ。さっき言った、世話になってる人から聞いたんだが、呪力って現世でいう体力みたいなもんなんだろ?それなら問題ねえ。さっさと終わらせて、帰るぞ!」


私は意気揚々とキョエに告げると、グッと足を踏ん張り羽根を広げた。


「えっ、ちょっと待ってくれ。まさか__ここを飛ぶつもりじゃ____」


「そのまさかだ」


「「イヤァァァァァァァァ__ッ__!!!」」


私は絶叫するキョエの口を呪力で塞ぐと、彼をひょいとおぶった。そして、一寸先も霞む砂嵐の中へと飛び立っていった。

おつかれー!( *・ω・)ノ

キョウスケだy____


ふふふ……初めまして。

ん?久しぶりのキョウスケ回なのに邪魔するなと?

知らんな、少なくともアイツは一度は死ぬことを選んだ愚か者。俺が邪魔をしようが何をしようが、関係ない事なんだよ……ンハハハハハハ!!!!!

おや、自己紹介を忘れていたようだな。

…しかしまだ俺は未登場の身の上であるがゆえ、紹介は控えさせて頂くよ。

それではまたいずれ会おう。

そうそう、礼昴からの口伝てだ。


また明日も、お楽しみに。



   律儀なやつだ。ふふふふふ____


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