初めてのオトモダチ
そして、ジェイに案内された先は十王の入り口の前だった。
「ここから、リンドウの気配が絶たれたんでちゅ!!」
「え?もしかしてリンドウってあの監視に付けてくれた精霊ちゃんのこと?」
「そうでちゅ…!ボクのせいで…あの子が…!」
「…実はモニターで不自然な点があったんだ。エミとユウキの会話で二人が最後の試練に挑む時、エミが道がわかると言った。その直後に異音が発生してあっちとの接続が切れたんだ。もしかしてコレ、リンドウちゃんと何か関係してたりするかな?」
「監視がバレたって可能性も否定できないでちゅけど…バレたとしても接触はできないはずでちゅし、接続が切れるのも謎でちゅ…」
「…いや、簡単でしょ。エミは呪力を使うことができて、ユウキはその呪力を増幅させることができる。精霊ってそういう黒い力に弱いイメージあるし、それで負けちゃって道を吐かされた、みたいな。そんな感じじゃないの?」
「いや待って、小屋の人は霊力がどうって…」
「うん、でもね。エミが今使ってる圧倒的な力を私は知らない。もしそんなんがあるなら、あのトウガさんの箱だって一人で開けられたはずだしね。それにエミが着てるあのボロ切れ。アレだって、もしかしたら二人の読み通り本当に呪力の増強になってる可能性だってありえるよ」
「そっか……」
トウガは深いため息をつくと、顔を見合わせた。死神とエンジェビルである以上、ここから先動けない事にもどかしさを感じているのだろう。
「俺、行くよ」
私は身体をキョウスケに戻そうと、身体に触れる。____しかし、中々元に戻らない。すると、トウガは慌てたように口を開く。
「いやいやいやいや、ちょっと待って。マジで言ってる?だってこっから先転生する人が行く道なんだよ、本当に転生できちゃうんだよ?キョウスケが行ったら転生できちゃうんだよ…?」
「うん、わかってる。…未練がないって言ったら嘘になるけどさ」
「だったら尚更ダメだよ!!」
「どうして?」
「未練のある人間が無理やり転生しようとすると、魂が消滅しやすくなるんだ。未練体の話もしたでしょ?あれだって、永遠と生きられるわけじゃない。精々持って百年ってとこ。それに未練体になったらそこで自我は失う。ただ彷徨い続けるだけの亡霊になるんだ…。だから、今行っちゃダメだ…」
「…ありがとう。でも、行かなきゃ。俺は二人を幸せにするって約束した。それに___」
私は改めて自分の気持ちを心に問いた。
…わかった。もう、私の気持ちは一つだ。
「俺は絶対、戻ってくるよ」
「…確証なんて、持てないんだよ?」
「それでも戻ってくる。約束する」
私はトウガに小指を差し出すと、彼はは静かに俺の小指と自身の小指を絡めた。
「「ゆーびきりげんまん、ウソついたら針千本のーます!ゆびきった!!」」
「…絶対、約束だよ」
「うん。必ず戻ってくる」
心苦しそうにトウガは笑うと、そっと俺の身体に触れた。すると身体から淡く霧が溢れ、俺の身体は幽体へと戻る。
俺は心配そうなトウガに精一杯の笑顔で手を振ると、エミとユウキの背を追って十王の入り口へと足を踏み入れた。
まずは最初の難関。三途の川。
二人は川を切って蒸発させてたんだっけ。
俺は足を少し、漬けてみる。
あれ…?温度なんて感じない。そういえば幽体の場合、肉体がないから身体で感じ取る事は全てできなくなるんだっけ。…なんだ、こんなの余裕じゃん。ちょっと流れはキツイけど、泳いで渡っちゃえ。
俺は元都大会一位の腕を生かし、クロールで波を掻き分けて進んだ。
ヤバい。思ったより流れがキツい。蹴りが全然足りない。流されて全然進めない。…そうだ。あの時の、カーリャさんの時のあの力…。思い出せ。思い出せ____
俺は下流の崖が迫る中、足も腕も止め、全身を熱く滾る呪力に集中した。
身体の芯から湧き出る力を右の肩から拳にかけて滾らせると拳には黒い霧が滲み始める。そして、全神経からさらにそこに集中____
崖が眼前にせまる中、俺の身体は「完全体」となる。
「…いける…!!」
既に俺の身体は半身崖下へと向かい始めている。しかし今の俺には確信があった。俺は水の流れに身を任せ、遥か先に薄らと見える滝壺を眺めた。
途端に身体は崖から落ち、ふわりと宙を舞ったかと思えば、バンッ、と背を水が叩きつけるようにして滝に飲まれ、ゆっくりと落ちていく。
出ないと。ここでミスったら、一生上がれない!!
俺は太い滝の中を泳ぎ、滝の外へ出た。言うまでもなく、身一つで紐なしバンジージャンプをすることに。
地面はあと数百メートルは先。正直、怖い。
「うぉぉぉわぁぁぉぁぁぁッッッ!!!!」
絶叫して怖さを紛らわす。地上が徐々に近づいてきて、くっきりと見えてくる。
いよいよだ。もう一回は無い。失敗なんてできない。俺は全神経を集中させると、脇を閉め、拳を軽く握る。
いくぞ___三、二、一____
俺は呪力を最大限に纏わせた拳を地面に突き出すと共に、その拳は地上に着地する。すると大地は大きく窪み、俺が瞬時に作りだしたエアクッションで自身の身体は高く飛び跳ねた。
「き……ッタァァァァァァァァァッ!!!!って、あ、あ、あれ…っ…!?」
しかし予想を遥かに超えて、俺の身体は川の数百メートル上空まで昇っていく。
…強く叩きすぎたのかな。まぁいいや。
俺はその隙につい先日取得した技、脳内にイメージできるものを物体化する呪力を使って、グラップルガンを手元に創り出した。これで万事OK。あとは向こう岸の木に引っ掛けて、渡るだけ!
ようやく地面に近づくと、グラップルガンを発射し、俺は無事、川を渡り切ることができた。
「到着!!」
グラップルガンを回収すると、辺りを見渡す。すると、数百メートル先にエミとユウキが訪れたであろう小屋が見つかった。
「あった!」
俺は二人の手掛かりを探すため、早速足早に小屋に向かっていった。
中に入ると、例の老婆が一人で暖炉の前のソファに掛けていた。二人を嵌めた時と同じように、何かを編んでいる。
…きっとこうして、他の幽体の時も温かな雰囲気を作り出して嵌めまくっているんだろう。姑息なヤツめ。
「いらっしゃい。お一人様かい?」
「…はい」
「川を渡った方限定でホットケーキとホットミルクをサービスしているんじゃが、いかがかね?」
これだ。きっとこれに、睡眠薬が入ってるんだ。どうにか呪力で睡眠薬を抜いて、タヌキ寝入りしながら二人の居場所とこいつの正体を探り出せればいいんだけど…。
「お願いします」
「あいよ。じゃあそこに座って待ってなね」
婆ちゃんはエミたちの時と同じように俺を二人掛けのソファに案内すると、部屋の奥のキッチンへと向かった。
そういえば。さっきのなんか変だな。水の冷たさは感じなかったのに、なんで水流は感じたんだ?流れが強すぎたから?いや、そんなことないよな…。よくよく考えればエミたちだってそうだ。冷たさも、流れもしっかりと感じ取っていた。一体どうして…?もしかしたら、この婆ちゃんならなにか知ってるかも…。後で聞いてみよう。
………
……
…
それから少し待つと、ホットミルク、ホットケーキの順で婆ちゃんが持ってくる。無論、あの時と同じようにホカホカと湯気を立てた見るからに美味しそうなホットケーキだ。
…ちくしょう、めちゃんこ美味そうじゃねーか。フツーに食いたいんだけど___
「ありがとう。じゃ、いただきます」
俺は神経を凝らして、ホットケーキを観察する。表面からじゃ、毒物らしいものは特に見えない。試しに一口大に切ってみる。すると。もわりと黒い霧がたちのぼり、イカ墨でも混ざっているのかというほどの黒い生地の断面が見えた。
やはり、入れたのはここだったか。モニターに映らなかったのは謎だが。さて、問題はどうやって抜くか、だ。…てか、エミたちはこのドス黒いホットケーキに気が付かなかったのか…?
俺は何もかかっていないホットケーキに、切ったところにだけシロップをかけた。そして、頬張る。
「うん、美味い」
「おお、良かった良かった。甘いモン苦手な子も居るからねえ。最近はダイエットって言って食べてくれない子も増えて来てて悲しくてねえ…。中々口にしないもんだから、お客さんもそれかと思ってちいと怖かったよ」
「そうなんですね、すみません。あまりに美味しそうだったのでつい、見惚れてしまって」
「やだねえ、お上手」
「そんな」
もちろん、そんなの口から出まかせだ。さっきのホットケーキだって本当は食べてない。口に含んだものをその中で燃やすイメージをして、呪力で消化している。まさか上手くいくなんて思ってもなかったけど、やってみるもんだ。
「じゃ、残りもいただいちゃいます」
「あいよ。たんとお食べ」
そして俺は婆ちゃんの睡眠薬入りホットケーキとホットミルクを全て口内で燃やし尽くし、見事婆ちゃんにバレずに臨戦体制を整えることができた。
「___ごちそうさまでした。美味しかったです」
「お粗末さま。さて。早速で悪いけど、お客さんに聞きたいことがあるんだ。いいかね?」
「はい。俺も聞きたいことがあるんです」
お疲れ様っ!⸜(* ॑꒳ˆ * )⋆*♡
久しぶりだね!マイスイートハニィー!!(*´³`*) ㄘゅ♡
カーリャだよ!
え、ウザい……?もー、ツンデレだなあ。でも、そんな所もカワイイよ( *˘ ³˘)♥
今日は久しぶりに「2人きり」になれたし、なにしよっか!
この前の続き、しちゃう?(。-∀-)
____なーんてね!(ノ≧ڡ≦)☆
えっ、なーにー!?その顔!じゃー俺がキミのタメに……
天の声『はーいそれでは、また明日もお楽しみに〜!!』
ちょっと礼昴何してくれてんの!俺が折角可愛コちゃんと遊ぼうとしてんのに… ナンパはダメですよ、カーリャくん。私の大事な読者様に手出さないでください。 うるせぇ!お前の読者は俺の女だっ大体なッ____




