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三途の川のモーゼ


そして着いた先は収容所の向かいの謎の施設。


アンテナ付きの湾曲状の大きな円盤を掲げた電波塔が聳え立っていて、その元には四階建てのビルくらいの建物が建っている。


ここが監視センター…?響きめちゃくちゃ悪いけど、トウガさんは二人のこと心配して様子を見ようって言ってくれてるんだよね…?どうしよう。めちゃくちゃ聞きたいけど、聞きづらい…


「あ、あの…」


「なに?」


「……」


「……」


やっぱまだ怒ってるよーーーーッ!!!なんか態度が素っ気ないもん!階段登ってる足音が凍りついてるもん!凍ってないけどさ!


いやいやいやいやいや、無理無理無理無理無理!!


「着いたよ」


「あっ…ハイ…」


トウガは一面コンクリートの壁の中に突然現れた、ポツンと佇む重々しい雰囲気の鉄の錆びた扉を開けた。しかし、中は意外にも閑静な造りでニュースで見るロケットのコントロールセンターを簡素にしたような景観だった。


正面にデカいモニターと、腰の位置くらいのパネルがあるだけで後はこれといった設備は特になし。強いて言うなら、何かファイリングされたものやフィルムが入り口側の壁にズラッと並んでいるけど…。


「簡素だなって思ったでしょ」


「い、いや…っ!そんなこと…!」


なんでわかったんだ!?


「でも、オレたち死神にはこれで十分なんだ。入り口側のファイルとかフィルムは頻繁に見る可能性があるものや、今現在霊界で重宝されているデータを収納してる。反対にモニター側のデータは今起きていることを映しつつ、常時記録しているんだ。霊界には容量なんて概念は存在しないから、いざ必要になったらエンジェビルたちにお願いすればいつでもそのデータを取ってきてくれる。…なんで容量が存在しないか、わかる?」


「え…フィクションだから…?」


「メタイな!違うよ!ここのデータは霊界に存在する全ての生物の視覚から捉えた『記憶』だからなんだ。もちろん、今のオレのデータやキョウのデータもある。けど、魂たちは音を発していてもそのままでは音を捉えられない。オレたち霊界の住民とは周波が違うんだ。だからその場合は霊界の住民を向かわせて監視させる必要がある」


「なんかあんまり監視って言うとイメージがこう…」


「そうなんだけどね。でも反対にちゃんとそうやって気になる場所や人物に目を配っておくことで、いざって時に助けられることもあるから」


「そっか…。響きは悪くても大事なことなんですね。…あれ?でも今二人がいる場所は神聖な場所だって…。私たちは入れないって…」


「うん。だからジェイの仲良しの精霊さんに行ってもらったよ。アイツは顔も広いからいざって時に本当に頼りになるんだ」


可愛い顔してやるな…。


「なるほど。それじゃあ安心ですね」


「うん。それじゃあ早速二人の様子見てみよっか」


そして私たちは正面の一番大きなモニターに向かうとエミとユウキのデータを探し出し、二人の映像を見始めた。


………


……



白んだ景色。切り立った崖。


一度足を付ければ凍りついてしまいそうなほどに冷たいその川は、川底の砂利や砂がはっきりと見えるほどに透き通って美しく、思わず息を飲んでしまいそうなほどだった。


しかし、向こう岸にたどり着くまでには手漕ぎ舟を使っても一時間はかかりそうなほどで、何よりその白く飛沫を上げる激流は、どんな屈強な大男も押し流してしまいそうなほどだった。


そんな川の前でエミとユウキは二人、座り込んでしまっていた。


「___どうする?」


「…どうって…。さっきも言ったじゃん。泳げるような温度じゃなかったし、船だってない。それに見たでしょ?さっきの人…。ムリして行って、どこかに流されてっちゃって…。あの人がどうなったかわかんない以上、ヘタに動かない方がいいよ…」


「エミらしくないよ」


「……」


「ぼく、何かないか探してくる」


「ちょっと、ユウキ…!」


ユウキは一人立ち上がると、河川敷をキョロキョロとしながら歩いて行った。エミはその遠ざかっていく背中に手を伸ばすものの、呆然と項垂れることしかできなかった。


「…はぁ…。せっかく会えたのに…。アタシ、何やってんだろ…」


エミは河川敷の砂利の上に雑に寝転がると両手を宙にかざし、開いては閉じ、開いては閉じを繰り返した。その横をカラリ、カラリと砂利を転がしながらサワガニが通る。


「…オマエは気楽でいいね…。水の中も、陸でも自由に移動できて…。制約は横歩きだけかい…」


ゆっくりとうつ伏せになると、エミは静かにサワガニを眺める。彼女から遠ざかっていくサワガニ。エミは深いため息をついた。


「はぁーーー…。マジでアタシ、何してんだろなぁー…」


すると、今度は目の前ににゅっとユウキの顔が現れる。


「わぁぁぁッッ!?」


「何独り言言ってんの。マジでエミらしくない」


「どっ、どうでもいいでしょ!!そんで、なんかあったの?」


「…んー…あったことにはあったけど…」


「微妙な反応だね…」


「うん…でも一応見てもらうだけ」


ユウキは自信なさげに言うと、後ろ手に隠し持っていた一枚の黒い布を広げて見せた。それは、まだなんとか羽織れそうな雰囲気の死神のジャケット___だと思われるものだった。


「えっ、コレって…」


「うん、死神の人たちが着てたジャケット。…だと思うモノ。なんでこんなとこにあるのかわかんないけど、もしあのトウガさんみたいに転移魔術が使えたり、何か一つでも魔法が使えればなって」


「おぉぉぉぉぉぉッッ!!!ユウキ!超天才!神!マジ天使だよーーーッ!!ありがとう、コレでやっと川渡れるかもーーーッ!」


「喜ぶの早すぎだよ、あの人神聖な場所だからどうとか言ってたってことは何かしらの副作用があるかもってことも考慮した方がいいかもしれないし、それにただのゴミの可能性だってあるでしょ」


「考えすぎだって。細かいことは後で色々考えてきゃーいーんですぅ〜!」


「…エミらしいね」


「お褒めに預かり光栄です〜」


「褒めてねぇよ」


二人は笑い合うと話し合いの末、一度死神(・・)を経験したエミがジャケットを羽織る流れになった。そして、エミは改めて川に向き直ると、肩幅に足を開き、手をかざす。過去交流のあった死神から聞き出した、呪力の使い方をじっくりとイメージしていく。


「…モーゼ…モーゼ…モーゼ…ッ!…っあとちょっとでできそうなのに…ぅごかない…ッ!」


「頑張れ…!エミ…ッ!!」


「う、ぅ…」


ゴ、ゴ、と地響きが起き、川は僅かにその激流の中揺れ動くものの、大した変化は訪れない。


「頑張れ…頑張れ…!!」


ユウキは必死の想いで後ろから覆い被さるようにして、エミを抱きしめた。途端にユウキの心臓が大きく跳ね、その視界がエミの視界とリンクする。


「…ッ!?」


突然のことに二人は息を飲むものの、二人は刹那の間に頷き合うと息を合わせて全身の()をエミの手のひらに集中させる。


「「ウゥゥ_オオオオアァァァァァァァァッッ!」」


すると、今までただゴウゴウと音を立てて流れていた川は動きを緩めた。そこに微かにゼリーをナイフで切ったかのような線が入っていることに気づく。


しかし余りにもエミには負担が大きすぎたのか、彼女は間もない内にへなへなと地べたに座り込む。それでも尚、エミは力を使い続けることをやめなかった。


「ぇっ…」


「あと…ちょっ____と__」


川はエミに合わせるようにして、緩んでは勢いを増し、緩んでは増しを繰り返した。しかし、そろそろ彼女は限界に達しようとしていた。


「ぅ…ッもう__」


「うぉぉぉぉぉッッ!!エミィィィィッ!!!!」


ユウキは無我夢中で倒れ込みそうになるエミを支えると、エミと同じようにして両腕を突き出した。エミも半分意識があるか無いかの状態で、ユウキと共に手を伸ばす。


「いッけェェェェェェェェェ!!!!!!」


刹那。ユウキとエミの前を流れる激流はキューブ状に分解され、川から切り離された。すると、その切り出された川は弾けるようにして蒸発する。


「い、イケた…!やった、やったよ!エミ…!」


ユウキは興奮気味に抱き抱えるエミに対して言うが、反応が無い。


「…エミ?」


ユウキはエミの顔を覗き込むが、その顔は安心しきった様子で眠りについていた。


「…ほんと、マイペースなんだよな。エミって…。まぁそこが好きなんだけどね。ほら、行くよ。しっかり捕まって」


ユウキはエミの前に跪くとエミをおぶり、二人の眼前に開いた大きな道をゆっくりと歩き出した。


………


……



「んーー…。ねぇ、お腹すいたぁ…。マック…行こー…」


川を歩き始めてしばらくの時が経った。変わらずエミはユウキの背中で眠り続けている。しかし、ユウキはそんなエミに文句一つ言うこともなく、ただひたすらに歩みを進めていた。


「……懐かしいね。昔はよく二人で行ってたね。その後に二人でまねきねこ行って、その後はネカフェとか…。マン喫とか…。定番の流れだったね。ぼくがグレちゃってからは全然エミと遊ばなくなっちゃったけど…。でもやっぱ、ぼくはどんな時よりもエミが隣でバカみたいに笑ってくれてる時が一番楽しかったなあ…。っても、エミは笑い上戸だから一緒にいる時はほとんど笑ってたけどさ…」


ユウキは静かに寝息を立てて眠り続けるエミに穏やかに話しかけながら、二人で作った道をゆっくりと一歩ずつ進んでいく。


激流も無くなり凍るような冷たさも無くなったものの、それでもやはり道のりが長いことに変わりはなく。ユウキは口を一文字に結んだ。


「…今度はぼくが頑張るよ、エミ」



ユウキは水の壁に挟まれた砂利の道を黙々と歩く。時に壁は揺らめき、その壁の一部が音を立てて前後左右に降ってくる。触れられないことはないが、触れるとその冷たさゆえ霜焼けにだってなりうる。それゆえ、ユウキは少したりとも気が抜けないのだった。


「…それにしてもよく寝るね、こんな寒いのにさ。懐かしいな、真冬の公園でマック食べた後、ベンチで一休みしようって言ったらそのままエミ寝ちゃって…。一時間経っても起きないから結局ぼくがエミん家まで送ったんだっけ。その後、丁度エミの親居なかったから泊まって…。あの日は楽しかったなあ…」


ユウキは遠くを見つめるようにして言うと、彼の肩に首をもたげるエミに「ねえ?」と小さく問いた。


すると。


ヅヅ___ヅ…


「なんだ…?」


地響きのような、波の音のような、なんとも言えない不穏な音が辺りに響き渡る。


思わずユウキは足を止め辺りを見回すと、今まで壁の形を保っていた川が遥か遠い背後から津波のように迫ってきていた。


「「ハァァァァァァァァッッッ!?!?!?」」


まだ岸は見えない。けれど、背を向けた沿岸も見えない。無我夢中で走る。


「エミッ、エミッ、起きてよ、エミィィィィッ!!!」


「…んん…」


「起きろォォォォ!!!!」


「ハッ!何!?なにがあった!?」


「川が!崩れた!!波が!!」


「えッ!?」


当然のごとくエミも振り返る。すると、そこにはあと数キロ先まで迫ってきた川があった。


「ま…マジッ!?」


「マジだよ!!なんかできない!?」


「なんかって!」


「ぼくはエミ背負って逃げることしかできないよ!」


「えッ!?」


「時間ないよ、なんか…なんか…助けて、エミ…!」

あっ……、……その…

おつ、かれ……

ユウキ……です。


えと……明日も、お楽しみに……


ちょっと!!なにもう終わらそうとしてんの!!

えっ…だ、だって何話していいか分かんないし、なんか怖いし……

怖くない!せっかくここまで読んでくれたんだから、もっと『ありがとー!』の気持ち伝えなきゃダメでしょ!!

でっ、でもぼくなんか(・・・)よりエミのほうが……

はい出た!『なんか』星人〜!!なんかなんかなんかなんか〜〜ƪ((ƪ ˙๏˙ )ʃ ƪ((ƪ ˙๏˙ )ʃ

……ッ!!分かったよ、頑張るよ…だからやめて、それ…みんな見てるじゃん、恥ずかしいよ…

はいはい笑 じゃー、頑張れ!

…うん、……っふーーっ。


えと、改めて今日はおつかれです。あと、ぼくたちのお話し読んでくれてありがと。

明日もまだまだ続くから、これからも読んでくれると嬉しいな。

それじゃ、また明日もお楽しみに!またね。



  これで良かったの……? カンペキだよーッ!よぉーっし、またこれから二人でパーリィナイトじゃぜええッ!! ウォォォ!!! Fooooooooo!!!!!!

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