愛用クッションと、別れと、初喧嘩
じっとりとした汗が俺の背を伝う。俺の知らぬ間に、何かあったのだろうか。それとも俺が何か要らぬことでも言ってしまったのだろうか…。
「どうしよ___」
「「わぁぁッッッ!!!!!」」
「「ギャァァァァァァッッッッ!?!?!?」」
刹那。眼前にトウガが現れる。俺は絶叫すると共にぶっ飛び、思いきり尻もちをついた。
「な…な…何すんだよッ!!!」
「だってキョウじゃなくなってるから。キョウスケがキョウじゃなくなるのは、決まって気分が高まった時。何かあったの?」
「別になんもねーよ!ユウキを女の子にしただけで…。てか、関係ねえだろ!なんで逐一オマエにそんなこと言わなきゃいけねえんだよ!」
「えっ…ご、ごめん…。そういうつもりじゃなかったんだけど…。ごめん…」
ヤバい、言い過ぎた。…で、でもここですぐ謝るもんなのか…?そしたら逆にまだ怒ってるって思われないか?そんなすぐに謝るなら最初からキレるなって思われないか?どうすればいいんだ…。
「別にいいけどさ」
俺、すげえダサい…。謝んなきゃ…謝んなきゃ……。
「どうせ、俺がキョウじゃなくなったから不満なんでしょ?」
「えっ…?」
何言ってんだ!?俺…!
「俺知ってるよ。あんなこと言ってても、やっぱ俺なんかよりキョウのがトウガさんは好きなんだって」
言うなよ、それ以上……。
「どうせ俺なんか、存在価値ねえん___」
途端にトウガは強く俺を抱きしめる。
「言わないで、何も」
「…え」
「キョウスケがオレに対してどう思ってるかなんて、わからない。でも、オレはキョウスケの偽りの姿なんかより、『キョウスケ』が大好きなんだ。オレの大切な存在なんだ。だからそんなこと、言わないで…」
「…ごめん。ありがとう。でも俺、好きなんて言われてもわかんないよ。今までろくに彼女だってできたことないのに、ましてや同性から言われても…。どう答えていいのか、どんな気持ちになればいいのか、わかんないよ……」
「そうだよね…。ごめん。でも、オレもこんな気持ちになるのは初めてなんだ。だからといってキョウスケにオレの気持ちを強要したりはしない。返事もいらない。ただ、今まで通りのオレたちの関係が続けられるなら、オレは嬉しいです」
…もしかして、昨日言ってた好きって気持ちってそういうことだったのか?でもなんでなんだ?俺なんかしたか?この感じからしてただ若いからとか、顔がタイプだからとかそんな浅い理由じゃなさそうだし…。
「俺は…」
「うん」
「…ごめん、ちょっと考えさせて。…エミとユウキだけど、もう少しファッションショー楽しんだら支度するって。…っても、支度も何もないと思うから、終わったらすぐ出てくるよ、多分」
「わかった」
「じゃ、とりあえず頭冷やしたいから先外出て待ってるね」
「うん」
俺は自身の身体をキョウの姿に変えると、トウガの自宅を出た。
ふと改めて始まりの場所を見てみると、そこには彼の羽根が一枚落ちていた。その羽根はどこか私の心を見透かしているようで、なんだか心がむず痒くなった。
………
……
…
あれからしばらく経った。エミとユウキは愚か、トウガさえも出てこない。さすがに言い過ぎたか、それとももう見限られたか…。
私は階段に浅く腰掛けると、深くため息をついた。
「ホント、なにしてんだろ…俺____ぁ…」
身体から少し、黒い霧が漏れる。これは、キョウからキョウスケに戻る時の症状の一端だ。私は慌てて立ち上がると、気を引き締め、グッと全身に力を込めた。
「…っ、よし」
全身を触ってキョウに戻ったのを確認すると、私は再びゆっくりと腰掛ける。そしてまた、深くため息をついた。
「はぁーーーーぁ…」
すると、ボフン、と音を立ててジェイが私の肩の横に現れる。
「お疲れ気味でちゅか?キョウさん」
「わ…ジェイか。うん、まぁ…ちょっとね」
「お話し、聞くでちゅよ?」
「…いいよ。別に。大したことじゃないし」
それにこんなこと、コイツに話しても迷惑だしね…。
すると、ジェイはするりと私の膝と腕の隙間に入ってくると下から私を見上げた。
「吐き出せば楽になるでちゅよ。ボクはトウガ様専属カウンセラーで、愛用のクッションでもあるんでちゅ」
そう言うジェイは私の膝上でコロンと転がり、聞きの体勢に入った。
…ホント、コイツには敵わないな…。
「…私、酷いこと言ったんだ。トウガさんに。でもそれ、トウガさんは許してくれて…。それにあの人はあの人自身の気持ちまで言ってくれてさ。けどそれは私には理解できないもので…。私、どうすればいいんだろう…」
ジェイは私の膝の上で「なるほど…」と小さく呟くと、少し間を置いた。少しの間、静寂の時が流れる。
…やっぱこんなこと、相談するべきじゃなかったのかな___。
「どうするもないと思うでちゅよ。トウガ様の想いはトウガ様の想いでちゅし、キョウさんの想いはキョウさんの想いでちゅ。その話を聞いてこれ以上そばに居られないと思うのであれば離れればいいでちゅし、今まで通りそばに居たいと思うのであればそばにいるだけでちゅ。何も難しいことなんてないでちゅよ」
「…でも…あんなこと聞いたらなんも考えずにそばに立ってるなんて…」
「じゃあ、キョウさんはどう思ってるんでちゅ?」
「え?」
「キョウさん…うーん、違いまちゅね。キョウスケさんのトウガ様に対する想いを教えてほしいでちゅ」
「俺の…トウガさんへの…想い…」
ちゃんと考えたこと、無かった。単に考えれば、仕事仲間とか同居人とか、ある種の命の恩人とかだけど…ここで言ってるのはそういうのじゃないもんな。
「俺は___」
「お待たせ!キョウ___って、またキョウスケに戻ってる!?って、ジェイも居るし!!マジ何してたのッ__!?」
「いや…なにも___」
エミとユウキを連れたトウガは足早にこちらに向かってくると、瞬く間に俺をキョウの姿に変えた。でも今回はいつもと違って身体が締め付けられるような、息苦しいような、変な感覚がある。
「トウガさん…苦し___」
「言ったでしょ、外ではキョウスケの格好はダメだって。見つかったらどうなるか分かってるよね。その呪力量だったら相当な事がない限り解けることはない。…怒ってるんだよ、オレは」
「…ごめん、なさい…」
トウガは静かに頷いたきり、何も言わなかった。しかしそれが反対に、いつも通りの様子のエミとユウキを際立たせ、私の心を窮屈にさせた。
転移魔術で移動した先は未だかつて見たことのない景色だった。
位置としては裁判所に一番近く、収容所の入り口のアーケードからは一番遠い。魂の気配も無く、死神も、エンジェビルたちですらも居ない、石造りのタイルが敷き詰められた、どこか神秘的な雰囲気が漂う広大な広場だった。
まだこんな場所があったとは…。
「ここは…?」
「通称『十王の入り口』。そこの鳥居を潜った先で川を渡って樹海を抜けた後、裁きをもう一回受けて転生するんだ。最後の裁きは他の魂との相性チェックも兼ねてるから、ユウキと一緒に受けるなら、お互いにアピールポイントみたいなのを考えておくといいかもね」
「なるほど…。どのくらい仲良いか見せつけなきゃいけないんだね。エミ、自信は?」
「もっちろん!バッチこいだよっ!!」
「さすがだね。じゃあ、オレたちが送れるのはここまでだから…。後は二人で頑張ってね」
「えっ、もうお別れなの…?」
エミは突然の別れに全身を硬直させる。私も同じくして、唐突なトウガの言葉に思わず言葉を失った。
「うん。オレたち死神はその門の向こう側には行けない。神聖な場所だからね」
「…じゃあ、もう二人に会うことはできないの…?」
「…ごめんね」
トウガの言葉にエミは大粒の涙をポロポロと溢した。その肩をユウキが優しく抱き寄せる。
「アタシ…もっと二人と話したかった…。キョウちゃんと…ファッションショーしたかった…。トウガさんも、羽根もしゃもしゃしたかった…。なのに…もう、お別れなんて…早すぎるよ……」
エミは嗚咽しながら、次々と溢れる涙を手の甲で拭う。
…私も、もっと話したかったよ。エミ。
「エミ。大丈夫。これから先なにがあっても私はエミのこと見守ってるよ。来世に転生したらきっとエミの目には見えなくなっちゃうけど、私はこっちからエミとユウキのことを見守ってる。だから、安心して逝っておいで」
「キョウちゃん…。うん、ありがとう…。アタシ、来世こそは幸せになるからね!絶対、ユウキと一緒にたくさんたくさん、幸せを掴み取るから!!」
「うん、ずっと見守ってるよ」
エミはユウキの手を取ると、満面の笑みで私たちの方を何度も振り返りながら手を振って去っていった。
…きっとこれが、彼女たちを見る最後の機会になってしまうのだろう。本当に見守る事ができれば、二人が本当の家族になれれば、とても素敵な事なんだろうけど……。
「…。行っちゃったね」
「はい」
「それじゃあ、早速監視センターに行こうか」
「…はい?」
トウガは慣れた様子で言うと踵を返し、広場を後にした。
やぁやぁ、おつかれーーっ!\(*ˊᗜˋ*)/ヤッホー.・❤︎
エミだよ〜(*>ω<*)♡
ねえねえ、ちょっとキミに聞いてみたいんだけどさ、キミって……
タケノコ派!?キノコ派!?(´◉ω◉` )
アタシとユウキってめっちゃ仲良しなんだけど、唯一そこだけ気合わないんだよね〜(´・ω・`)
因みにアタシはタケノコ派。
あのタケノコのサクサク崩れる甘いクッキー生地がマジでやみつきになる!!!(*ᵒ̴̶̷͈᷄ᗨᵒ̴̶̷͈᷅)♡
甘いもの好き同士だからかな〜、甘いものでアレいいコレいいはメッチャ多いんだよねꉂ(ˊᗜˋ*)
なんか良いのあったら教えてね!またコッソリ抜け出して食堂にないかユウキと行ってくるから(*´罒`*)♥ニヒヒ
あっ、長くなっちゃった:( ;´꒳`;)
それじゃ、また明日もお楽しみに〜!!( *¯ ꒳¯*)ノシ




